「上司の小言」を成長の糧にする方法
毎日のように繰り返される上司の小言や、恋人からの不満などを聞き流しているだけという人も多いのではないでしょうか。しかしこれらは自分自身の成長の糧になる重要な「フィードバック」なのかもしれません。それを聞き流していては、せっかくの成長の機会をドブに捨てているのと同じなのです。
とはいえこうした一見すると「どうでもいい」フィードバックは、まともに取り合っていたら時間の無駄になる場合もあります。ここではハーバードロースクールの講師ダグラス・ストーンとシーラ・ヒーンの著書『ハーバード あなたを成長させるフィードバックの授業』を参考に、自分についての意見=フィードバックをフル活用する方法を紹介します。
フィードバックを3つに分類せよ
はじめに知っておくべきはフィードバックの分類法です。
1つ目は「感謝」のフィードバック。これは上司が部下に対して「君がチームにいてよかった」と言うことや、夫が妻に対して「君と結婚して本当に幸せだよ」と言うことなどが挙げられます。
感謝はフィードバックを与える側からすれば相手が「感謝してほしい」というタイミングで行わなければ意味がありません。対してフィードバックを受ける側からすれば「感謝」の欠如はその他の2種類のフィードバックを素直に受け取れなくさせてしまう性質があります。
2つ目の分類は「指導」です。「君はもっとわかりやすい書類を作れないのかね」「あなたはもっと家族を優先すべきだわ」と言った小言や不満もこのフィードバックに分類されます。
指導のフィードバックは主に相手の言動に対して向上や改善を求めるものです。そのためそこにはフィードバックを与える側の怒りや不安、孤独感といった感情が挟まれていることが多くなります。
3つ目は「評価」のフィードバック。これは指導のフィードバックとよく混同される傾向があります。「もっとうまくやれ」という指導の中には「現状ではダメだ」という評価を読み取ることもできるからです。
他者からのフィードバックを活用するためには、この3つのフィードバックのうち、今与えられているフィードバックはどれなのかをまず知る必要があります。人は「感謝」が欲しいのに「指導」や「評価」をされるとがっかりしてしまいます。
これは「指導」が欲しいのに「評価」をされたり、「評価」が欲しいのに「感謝」をされた時も同じです。このズレに気づいた場合には、「自分はこういうフィードバックが欲しい」と明言することも重要なことです。
「感情論」の匂いをかぎとれ

3種類のフィードバックを理解したら、次の行うのは「感情論」の嗅ぎ分けです。フィードバックには多かれ少なかれ「感情」が紛れています。
特に指導や評価のフィードバックには、前述したような怒りや不安などの暗い感情が隠れていることも少なくありません。フィードバックを与えられる側は相手のフィードバックにどんな「感情論」が紛れているかを冷静に判断する必要があります。
また自分の中の感情の変化にも敏感にならなくてはなりません。「あなたはもっと家族を省みるべきだ」とパートナーから言われた時、反射的に「なんだと!俺だって頑張って働いているんだ!」」と怒りの感情を抱いてしまう人は多いはずです。しかしそれでは相手との建設的なフィードバックのやり取りにはなりません。
相手と自分の中にある「感情論」を認識したら、次は問題を含めた人間関係を1つのシステムとして俯瞰するようにしましょう。
人間関係をシステム化せよ

人間関係の問題は1つや2つの要因で発生するわけではありません。例えば上司からすれば「いつもあいつは書類の体裁を間違える」と部下に対して思っていたとします。すると彼は部下に対して「きちんと書類の体裁を確認してから作成しろ」と指導のフィードバックを与えます。
しかし実は部下からすれば「あの上司はいつも間違った体裁で書類を作るよう指示をする」と思っているのです。この2人の問題は指示する書類の体裁を確認しない上司にもありますが、それを指摘しない部下にもあります。
これが3人・4人と人数が増えれば問題はもっと複雑化します。そこに感情を挟んでいては、いつまでたっても自分の主張をフィードバックとして表明するだけで事態は改善されないでしょう。
そこでより客観的な目で、「人間関係」というシステムを俯瞰するのです。すると入れ子式のように問題が転嫁されていくのが見えるはず。
これが把握できれば自分が相手に対してどんなフィードバックをするべきなのか、あるいは相手のフィードバックをどのように受け取るべきなのかが理解できます。
「思考の歪み」を直せ

「感情を排斥して人間関係をシステム化せよ」と言われても、すぐにできる人とできない人がいるはずです。これには「思考の歪み」が大きく関わっています。キャリアサプリでは「いくら本を読んでもあなたの人生が変わらない4つの理由」の中で「思い込みに見られる7つの思考パターン」として紹介しています。
2.過度な一般化
3.拡大視・過小評価
4.感情的決めつけ
5.ステレオタイプ化
6.自己関連付け
7.結論の飛躍
これらは思考のクセとして頭に染み付いているものなので、自覚的に取り除かなければなくならないものです。そしてこの思考パターンを放置している限り、上司の小言は小言以外のなにものでもなく、恋人の不満は単なるわがままにしか聞こえません。
しかし自分の思考の歪みについて自覚できれば、人間関係のシステム化やフィードバックの分類はより円滑になります。
フィードバックをフル活用して成長を加速させよう!
成長の速度を上げたいのであれば、単なる小言や不満も成長の糧にするくらいの貪欲さが必要です。そのためにはフィードバックの分類を行うとともに感情や思考の歪みに自覚的になり、問題とフィードバックの内容を客観的に理解する力を身につけなくてはなりません。
まずは身近なフィードバックから練習し、徐々に仕事やプライベートの重要な場面に対してもハーバード流のフィードバック術を応用していきましょう。
参考文献『ハーバード あなたを成長させるフィードバックの授業』
