コミュニケーション能力の原液「EQ」
あなたは「優れたリーダーの条件」について考えたことはあるでしょうか?現在、ビジネスの現場でそのひとつの基準とされているのが「EQ(Emotional Intelligence Quotient)」と呼ばれるものです。
EQを日本語で言うと、「心の知能指数」と訳すことができます。この理論はイェール大学学長のピーター・サロベイ博士と、ニューハンプシャー大学教授のジョン・メイヤー博士によって提唱されたものです。
仕事をする上で重要視される能力は多種多様に存在しますが、近年のアンケート調査を見ると、「コミュニケーション能力」が1位となっているケースをよく目にします。この広く一般的に定義付けされる「コミュニケーション能力」の原液となるのが、今回紹介する「EQ」なのです。
IQとEQの違いとは?

みなさんが一般的に耳にするのは「IQ(知能指数)」の方でしょう。IQとEQは一見すると対立しているようにも感じられますが、両者は密接に結びついていて、互いに補完する関係性にあります。
例えば、ブレインストーミングをする際は、暗い気持ちで取り組むよりも、楽しい気持ちで取り組む方が良いアウトプットが生まれやすくなることがわかっています。
アサヒビール株式会社では、社員が楽しい気持ちで話せるように「AB(アルコールブレスト)会議」と呼ばれる手法を実践しており、実際にアイデアが無限に出てくるとのことです。(しかし収束させる方に頭が回らず、まとめきれないという結果になっています)
逆に、データの打ち込みや分析などの際には、テンションを抑え、落ち着いた気持ちで取り組むことで、効率的に作業を進めることができます。
このように、日常の各シーンにおける感情の状態をコントロールすることで、IQの発揮度は大きく変わってきます。つまり、心の知能指数であるEQを活用することで、自らのIQを十分に生かすことが可能となるのです。
EQを構成する4つの能力

感情の識別
まず1つ目が、自分自身の感情や周りの人間がどのように感じているかを知覚し、識別する能力です。
自分の感情の状態を把握するというのは簡単そうに思えますが、具体化し、言語化しようとすると、細かに表現することは難しいものです。
それを今度は他者に置き換えて考えてみると、自分が「面白い」と感じるものであっても、相手にとっては「つまらない」ものであるかもしれません。その「つまらない」という感情を深堀して具体化し、もっと適切な言葉に変換することで、相手の感情をより正確に識別することが可能になります。
つまり、感情を識別する能力を高めるためには、自分の中の表現手段を増やすことが必要となってくるのです。
感情の利用
2つ目が、理解した感情に対して、自らの思考や行動を助けるための感情を生み出す能力です。
何かしらのアクションを起こし、目標達成を目指すとき、その結果を左右するのが自身のモチベーションではないでしょうか。
つまり、このモチベーションをミッション達成のためのふさわしい状態にある程度操作することができれば、より質の高い結果を得やすくなります。
また、コミュニケーションにおいては「相手に共感する能力」とも言い表すことができます。相手の立場で物事を把握し、相手の感情に共感できれば、自分の感情をその状況に応じたふさわしいものに最適化させていくことができるのです。
感情の理解
3つ目が、感情が生み出された原因や特性を理解し、次に生まれる感情を予測する能力です。
例えば、仕事でミスをしたとき、多くの人は悔しさや悲しさ、心配や不安といった感情を抱くかと思います。この感情は時間が進むにつれ、不安が恐怖になるといった具合に、より強い感情へと推移する傾向があります。
このような感情の基本形を理解し、その変化や推移を予測することで、より大きな成功に人を導いたり、失敗をより大きな失敗にしないための対策を講じる助けとすることができます。
感情の調整
最後の4つ目が、自分と相手が求める結果が得られるように、感情を思慮深く調整し行動へと繋げる能力です。
これは、前述の「感情の利用」によってつくりだした自分の感情を、「感情の理解」で導き出した対応行動に最適化し、調整・操作する能力と言うこともできます。
会社や取引先での対人関係を円滑にするためには、それぞれが持つ異なる感情を正しく理解し、その状況に応じて自らの行動や言動を調整しなければなりません。
この感情の調整力こそが、相手に共感や共鳴を促すひとつのファクターであり、高いコミュニケーション能力が求められる現代における「優秀なリーダー」の必須条件となっているのです。
