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いまでもエンタメ界では語り草に
「セカチュー」ブームを巻き起こした「世界の中心で、愛をさけぶ」。03年刊行の小説は100万部を突破。その後、映画・舞台化され社会現象になりました。
柴咲コウの「私もこんな恋愛をしてみたい」の書評は話題になり、メディアミックスとしても成功しました。
いまでもエンタメ界では語り草になっています。直線的なタイトルと言葉の熱量。送り手の発信力が評価されました。
そもそも発信力って何?

SNSの様々なツールの進化で「発信力」と言っても、単にタレントやアーティストが身辺雑記をツイートするだけでなく、コンテンツと密接に絡み合っています。
最近は劇団四季がレッスン風景や新作の舞台裏などを動画配信、ネットを利用したコンテンツ発信は演劇界でも始まっています。
また芸能人が政治・社会問題などにネットで積極的に持論をつぶやくことも増えています。メルマガとツイッターを連動させて、戦略PRとして活用しようとの動きもあります。
ただ、ここで考えなければいけないのは、発信力の強化は、ただ大声を張り上げて言葉を掛ければ良いーということではないのです。
コンテンツや発信者の属性(キャラクター)とは〝二人三脚〟の関係で、発信力の伝達法やカテゴリーも広義なものになっています。
発信力とオウンドメディアの切れない関係
ネット時代では情報の「受信」よりは「発信人間」の能力が高く評価されます。
経営トップでさえ「誰にも負けないと自負できるこだわりや思いをソーシャルメディアによってアピールしていく方が、新しい二―ズが生まれる」とツイートしているほどです。
会社に所属するビジネスパーソンが個人としての発信を活発化させ、新規開拓に直結させるパーソナル・ブランディング。つまり「個人」としての発信力。そして企業が持っている情報媒体をフル稼働して効率的なマーケッティングを行うオウンドメディア。
もちろん個人の発信力も企業全体のフォーメーションに包含されます。とくにエンタメ界では大手プロの自社のサイトが〝本線〟。タレントが発信しているブログやツイッター、メルマガを〝枝線〟にして
1. ファン(顧客)との接点の拡大
2. 企業やタレントイメージの強化や醸成
などに積極的に取り組んでいます。情報を発信しながら対象者の選別やモニタリング、発信内容の精度の確認を行い効果的な発信力のUPに努めています。
前述した戦略PRとしてのオウンドメディアの有効性は多角的に論じられています。ここでは発信力との関係で論を進めていますが、発信基盤としてビジネスパーソンとしての「個人」と全体を統括する「企業」の存在を述べました。
もちろん「企業」のコンセプト=情報が優先されることは、言うまでもありません。この取り決めが守られないと、マーケットに伝達しなければならない情報の露出タイミングや、発信内容が混乱する危険性があります。無作為に言いたいことを勝手に発信すれば、情報の漏えいにも繋がります。
情報を発信することはブランディングや販促効果だけでなく、発信母体の生命線に関わります。そのため全体のフォーメション(担務)を決めて稼働することが求められます。
大手プロの宣伝担当は「広報スタッフと営業担当の話し合いや調整は情報を発信する前の基本動作。この作業を継続して行い、発信内容の取捨や主題の絞込みをしています」とコメント。その上で「実は発信力に不可欠な書く力、ライティング技術こそが発信力の鍵になります」と力説しています。
発信力で最も重要なものは文字情報―「書く力」です!

冒頭紹介した「世界の中心で、愛をさけぶ」。メディアミックスの象徴的な出来事として、いまでも話題になります。携帯電話のなかった時代の切なくもストレートな純愛が、世代を超えて共感を呼びました。
ブームの先駆けは女優の柴咲コウが書評誌に、「泣きながら一気に読みました。私もこれからこんな恋愛をしてみたいなって思いました」との投稿コメント。書籍の帯に採用され話題になりましたが、これは彼女の素直な感想で、その言葉を新刊販促に使った出版社との合わせ技の「発信力」。これが結果として「セカチュー」ブームの引き金になりました。
魅力的なコンセプトに導かれた情報の発信。とくにメディアや広告関係者、メーカーの広報スタッフが日々ネットサーフィンをしながら、ネタさがしに躍起になっています。
「如何に魅力的にタレントやイベント情報を伝えることが出来るか」「如何にユーザーをはじめ多くの人に感動を与えることが出来るか」。
書く力に担保された文字情報が、「発信力」の核になっていると言っても過言ではありません
発信力には意外にも鍵を握る文字情報
私は何人かのタレントやアイドルのメルマガやブログのアドバイスをしています。彼ら(彼女ら)の個性や独特の文体を生かすようにしていますが、敬語の使い方が滅茶苦茶、話があっち飛びこっち飛び、おまけに何を言いたいのか・・・何回か書き直しの共同作業を繰り返し仕上げています。
短文でなるツイッターと違ってメルマガの場合は、
1. ファンや会員が知りたい情報は何か、
2. いまどんな活動をして、そのことは将来の自分にとってどうなのか、
3. ファンが知りたい番組の舞台裏などのエピソードをいかに興味深く伝えるか、
4. さらに双方向の強みでちゃっかりモニタリングもする
などがレシピです。「いま」の現況を伝え、「今後の夢や計画」をしっかりプレゼンする絶好の機会ですが、スケッチ原稿で終わってしまうことが多く手直しは大変です。
これはなにもメルマガに限ったことではありません。喋りは面白いのに書く力は?
あなたの周囲にも似たような事がありませんか・・・
情報発信で最も重要な書く力が発信力UPの鍵を握っているのです。
発信力の評価はシビアという現実
エンタメ界では既存のメディアに寄り添いながらも、独自に情報を発信するためのツールの充実やコンセプトの構築に舵を切りつつあります。タレント売りこみのための新しい「流通経路」の開拓を、自社の発信力で実践しようという動きです。
となると発信するマーケットも拡大し、そのための魅力ある情報が求められます。ここにオウンドメディアが注目される理由があるのですが、当然、効果的な文字情報に裏付けされた「発信力」が問われることになります。
発信力の強化で旗色を鮮明にするだけに企業の熱量と、広義な意味でのコンセプトの質もシビアに評価されることになります。
[文]メディアコンテンツ神戸企画室 神戸陽三 [編集]サムライト編集部