努力家は「努力」してない?努力できない自分を変えるための「頑張らない努力」のすすめ

なぜ努力家は「努力なんてしてない」と言うのか?

まわりから努力家と言われている人ほど、本人は「別に努力なんかしてるつもりはないけど」と言います。どうして周囲と本人とで、こんなギャップが生まれるのでしょうか。

それは努力家の人たちの「努力スキル」が高いからです。周囲からすればものすごい努力に見えても、本人たちは「努力と呼ぶほどのものではない」と思っているんです。

では努力に対して苦手意識をもっている人が、努力ができるようになるためにはどうすればいいのでしょうか。

ここでは努力スキルを磨いて、いままでの自分を変えるための「頑張らない努力」について紹介します。

努力家になるために必要なのは「頑張らないこと」

脳が体重全体に占める割合は約2.5%なのに、脳が消費するエネルギーは基礎代謝量の約20%にもなります。とかく脳は燃費が悪い。

そのため人間の体は、できるだけ脳がムダな仕事をしないように進化しました。だから私たちの脳は隙さえあればサボろうとします。

・必要性を感じないこと
・なかなか結果が出ないこと
・自分にストレスがかかること

こうしたことに対して私たちがやる気を失うのは、脳が「そんなことやっても意味ないんだし、やめとこうぜ」と言ってくるからです。

努力は一般的に「頑張ること」だと思われがちです。実際、辞典を引いてみても

「力をこめて事をすること。あることを成し遂げるために、休んだり怠けたりすることなく、つとめ励むこと。また、それに用いる力。」(日本国語大辞典)とあります。

ですが、結果も出ないのに頑張り続ければ、脳のサボりぐせが出てきてしまいます。脳がサボりたがれば、その声に抵抗するのは至難の技。たいていの人が努力できないのは、このせいです。

したがって努力できるようになるためには、まず頑張るのをやめるところから始める必要があるのです。

努力スキルは「ちょっとした努力」の積み重ねで鍛える

とはいえ脳は怠け者です。頑張ることを一切やめてしまえばあっという間に退化してしまいます。ではどうすればいいのか。それは頑張るほどでもない「ちょっとした努力」を積み重ねていくことです。

●「タクシー運転手の海馬は異常に発達している」という事実

「でも、自分には努力をする才能がないんだ。だからそんなことをしてもムダだ」と思うかもしれません。現に、2012年にヴァンダービルト大学のマイケル・トレッドウェイが率いる研究チームが発表した論文は、努力できる脳と努力できない脳の存在をにおわせています。

トレッドウェイたちの研究で、脳の「島(とう)皮質」という部位が活発な人ほど努力が続かない傾向にあるかもしれないということがわかったからです。そのため現時点で努力が続かない人は、島皮質の影響で努力ができなくなっているという可能性があるのです。

しかし現時点でそうだからといって、落ち込む必要なんてありません。なぜなら、私たちの脳は絶えず進化と退化を繰り返し、自分にとってのベストを模索する器官だからです。事実、イギリスの認知神経科学者のエレノア・マグワイアの研究が、人間の脳が長年のトレーニングによって発達することを指摘しています。

マグワイアが2000年にロンドンのタクシー運転手16人の脳をfMRIという当時の最新機器を使って調査したところ、記憶を司る部位「海馬」が一般の人よりも発達していることがわかりました。

しかも職歴の長いドライバーほど発達の度合いも大きく、ドライバー歴30年のベテランになると、一般の人よりも海馬の体積が3%(神経細胞数換算だと20%)も大きいということもわかりました。

したがって、たとえ今は努力できない脳の持ち主だとしても、工夫して努力できるようになっていけば、努力できる脳を手に入れられる可能性は十分あるのです。

●「ちょっとした努力」で努力スキルを鍛える

努力できるようになるための工夫、それが頑張るほどでもない「ちょっとした努力」です。

読書ができるようになりたいのなら、本サイトの記事『読書が苦手な人でも大丈夫!今度こそ読書習慣が身につく方法』で紹介した15分1セットの読書から始めてみる。

食生活をなかなか改善できない人は、まず週末だけでも健康的な食事を実践してみる。

ビジネススキルを磨きたいのであれば、月に1回のセミナー参加から始めてみる。

そうしているうちに読書するなかで理解できる内容が増えてきたり、体調や体型に変化が感じられたり、仕事のパフォーマンスが上がったりと、結果が出てきます。

もちろんちょっとした努力なので、結果もちょっとしたもの。でも頑張るほどでもないことで結果が出たら、なんだかお得な気分になるはずです。

すると「来週からは20分1セットにしてみよう」「平日も18時までに退社できた日は自炊してみよう」「セミナーへの参加を月2回に増やそう」と努力の強度を上げてみたくなってきます。努力することに脳が慣れてきた証拠です。

こうして「ちょっとした努力」の強度を少しずつ上げていけば、1年後、2年後、3年後……と時間が経つにつれて、以前は「大変な努力」だったものも「努力と呼ぶほどではないもの」に変わっていきます。

脳が努力を「しんどいもの」と思わなくなるので、息をするように努力ができるようになるわけです。

大切なのは、とにかく頑張らないこと。特に最初のうちは無理をするための努力スキルが備わっていないので、あっという間に努力が続けられなくなります。

努力が苦手だという自覚がある人ほど、「こんなにちょっとだけでいいの?」と思うくらい些細なことから始めるようにしましょう。

頑張らずに、楽しもう!

「頑張る」というのはあくまで最後の手段。継続するためには「楽しむ」が大切。さもなければ脳が「もう嫌だ」と言い始めてしまい、努力が続けられなくなってしまいます。

努力を楽しめる範囲にとどめておけば、脳も「努力したい!努力しよう!」というモードになり、無理なく努力を続けられるのです。

その結果が、努力家の人たちの「別に努力なんかしてるつもりはないけど」の境地というわけです。この境地を目指して、ちょっとした努力を積み重ねていきましょう!

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[文]鈴木 直人 [編集]サムライト編集部