人に伝わる文章の書き方
日常生活の中で文章を書く場面は、意外に多いものです。ビジネスメールや企画書をしたためたり、就職や転職の際のエントリーシートや履歴書を記入したりする時ばかりでなく、SNSに投稿したり、誰かへの寄せ書きを書いたりする時なども、文章を書く機会と言えるでしょう。
そのような時に、誰しも一度は「相手に伝わる文章が書けたらいいのにな」と思ったことがあるのではないでしょうか。
今日は、まったく世の中から注目を集めていなかった零細ブログから、5万以上のアクセス数を稼ぐ大ヒット記事を飛ばした筆者が、「人に伝わる文章の書き方」について語ろうと思います。
読まれる文章に必要なもの
人が読んでくれる文章とはどんなものでしょうか。起承転結がしっかりしている文章?それとも、論理がきちんと通っている文章?いずれも重要な要素ではありますが、決定的なものではありません。
人が読んでくれる文章、それは「読み手との共通の体験が書いてある文章」です。
なぜなら、人は「自分自身のこと」に最も関心があるからです。筆者は、文章には3つの要素が存在し、そのそれぞれに紐付いた形で、3種類の文章が存在すると考えています。
この3種類の文章について、「読み手との共通の体験を書くこと」を念頭に置きながら、どう文章を作成すればよいか考えていきます。
文章の3要素

文章には、3つの要素が存在します。それは、「文体」「構造」「メッセージ」です。このそれぞれに対して、特にその要素が重要になるような文章が存在します。
「文体」が重要になる文章は純文学やエッセイ、「構造」が重要になる文章はビジネス文書や推理小説、「メッセージ」が重要になる文章は自己啓発書やラブレター、と括ることができます。
これら3種類で、世の中に存在するすべての文章を網羅できます。それでは、それぞれの文章のタイプによって、どんな風に「読み手との共通の体験」を入れ込んでいけばよいか、以下で詳しく語っていきましょう。
「文体」が大切になる文章
「文体」とは、その人の言葉の選択のしかたやリズム感を指します。書き手の癖や傾向が出るという意味で、活字表現における「その人らしさ」と言ってもよいでしょう。これが重視される文章は、文学作品やエッセイですね。
私たちの身の回りにあるもので言えば、かつてmixiで書かれていた日記は、エッセイ的だったという意味で「文体」が注目される文章でしたし、今でもFacebookやTwitterに投稿されるある程度の長さを持った文章は、それに近いのではないかと思います。
「文体」が大切になる文章で、人に読まれる文章を書こうと思ったら、「読み手との共通の体験」を全編に渡って具体的に入れ込むことが重要です。
なぜなら、「文体」の面白さや美しさだけで無名の人間が書いた文章を読むほど、人は暇ではないからです。
私は趣味として、友人と行った旅行をエッセイ化して参加者に共有するということをやっていますが、いつも気をつけているのは、「一緒に遊んだ人とのやり取りや会話をなるべく詳しく書くこと」です。
日常生活のことを書いて人に読んでもらいたいのなら、読み手との共通の出来事を細かく書いてみましょう。きっと、リアクションをもらえるはずです。
「構造」が大切になる文章
「構造」とは、文章の構成を指します。わかりやすいのは、ビジネスの企画書やメールにおける「状況説明→問題提起→解決策の提示」といった流れですね。
「構造」が大切になる文章では、冒頭(上の流れで言う「状況説明」)に「読み手との共通の体験」を入れ込むことが重要です。
なぜなら、「構造」を意識して書く文章では、基本的に読み手に時間が無く、最初から読み手の関心を引きつけなければ、最後まで読んでもらえないためです。
どれだけ退屈な始末書でも、まずは「読み手(例えば上司)と自分が共通して認識しているはずの、問題が生じた時の状況説明」から入った方が、読み手は読みやすいはずです。
ビジネス文書以外で、「構造」に力点の置かれた文章の例を挙げてみましょう。例えば、このキャリアサプリの記事はそれにあたります。
勘の良い方は既にお気付きのように、この記事は、あなたと私の「文章を書く行為」という共通体験をもとにして、書き始められています。
マッキンゼーのコンサルタントであるバーバラ・ミントさんが書いた『考える技術・書く技術』は、文書作成術のカテゴリーにおける不滅の名著ですが、そこには文章の冒頭部(下記の引用部分で「状況」という言葉で示されている箇所)の書き方としてこうあります。
“「状況」は、まず主題に関する記述から始めます。これは読み手が合意するだろうとわかっていることでなければなりません。すなわち読み手がすでに知っていること、または知っていると考えてさしつかえないことです。”(『考える技術・書く技術』 P.50)
「読み手がすでに知っていること」とは、すなわち「読み手との共通の体験」に他なりません。
一流のコンサルタントも、まずは「読み手との共通の体験」から書き始めることの重要性を説いているのです。
「メッセージ」が大切になる文章
「メッセージ」とは、伝えたい内容のことです。これが重要になるのは、この記事の最初に挙げた例で言えば寄せ書きですね。また、ラブレターなどもこれにあたるのではないでしょうか。
「メッセージ」が重要になる文章において、「読み手との共通の体験」は、「この文章が誰に宛てた文章なのか」を明確化する機能を持ちます。読み手目線で言い換えると、「これは自分に宛てた文章なのだ」ということをより強く感じさせる効果を持つ、とも言えるでしょう。
ラブレターを書く時に、いきなり「好きです、付き合ってください!」と書いても、「みんなに同じことを言ってるんじゃないの?」と思われてしまうでしょう。
しかし、相手と一緒に何を経験して、その結果どんなところが好きだと感じたのかを書けば、少なくとも「誰にでも同じことを言っているわけではない」「あなた宛てへのメッセージだ」ということは伝わるはずです。「相手との共通の体験」を書くことで、メッセージの強度が高まるのです。
ラブレターの他に、もう一つ「メッセージ」が大切になる文章の例を挙げてみます。それは、私のブログの記事の話です。
私がバズを経験したのは、自らが従事するテレビ広告業界の仕事について「こう働いていこうじゃないか」と訴えかける、メッセージ性の強い記事でした。
その仕事をやっている人にだけは伝わる業務の難しさやジレンマを赤裸々に書き綴った結果、同業の方々の「わかる」というコメントともにSNSでシェアされ続けて、普段からは想像もできないアクセス数に到達できたのです。
これも、単に自分の伝えたいことを書くだけでなく、「読み手との共通の体験」を書いたことでメッセージ性が強化され、バズに繋がったのだと考えられます。
おわりに
人に読んでもらえる文章を書くにあたって大切なのは「読み手との共通の体験」を書くことだ、という記事でした。
読んでくれた方にとって、この記事が、少しでも文章を書く参考になれば嬉しいです。
