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野菜にこだわりありますか?
あなたは普段野菜をどこで購入していますか?近所のスーパーですか、それとも地元の八百屋さんでしょうか?野菜を購入する時は何を気にしていますか。
産地の他に、農薬の使用の有無が気になる方もいると思います。店頭で生産者の写真がついている無農薬野菜は、丁寧に作られた安全な美味しい野菜という印象をうけるかもしれませんが、必ずしもそれが正しいとはいえません。
年間50品目の有機野菜を生産し、消費者や飲食店に直接販売をしている久松農園の久松さんの著書『キレイゴトぬきの農業論』を読んで、普段よく耳にする有機野菜の常識は、勘違いだらけだったのでその一部をご紹介します。
勘違いその1 有機だから安全

有機だから安全というのはというのは、事実ではありません。もちろん有機農産物が危険ということではなく安全なのですが、その安全性がどの程度かといえば、適正に農薬を使った普通の農作物と同程度だそうです。1960年代から1970年代にかけて残留農薬が社会問題になった時期もありましたが、現在はこれ以上ないぐらい厳しい基準を農薬に設けて、安全に配慮しているそうです。
どれくらい厳しい基準が設定されているかというと、まず該当する農薬について動物実験を行い、動物が一生涯毎日摂取しても健康に影響がでないと確認された量を、100で割った数値をヒトの一日許容摂取量(ADI)として設定します。
次に実際に世の中で、何がどれくらい食べられているかを調べて、それらの調査に基づき、1日の総量を計算して、仮に食べるものすべてに基準までの農薬が残留していても、その合計値がADIを超えないように各農産物に割り振って、基準値が決められています。
つまり、すべての食材に基準値MAXまで農薬が残っていたとして、その100倍の量を毎日食べ続けたとしても、動物実験で影響がない数値に設定されているのです。そこまで厳しい基準を設けているので、農薬の使用の有無で、安全性に大きな違いがでることはないのです。
勘違いその2 有機農法だから美味しいとはかぎらない

これも事実ではないそうです。有機栽培だから美味しいとは限らないそうです。野菜の美味しさを決めるのは栽培方法以外の要素が圧倒的に大きいのです。久松さんいわく野菜の美味しさを決める大きな要素は3つあり、「栽培時期(旬)」、「品種」、「鮮度」です。
これが「野菜の美味しさの3要素」で、栽培者の感覚としてはこの3要素で8割方決まるといいます。
この要素を満たしていれば、どんな栽培方法でもある程度美味しくなり、これを満たしていなければ、どんな栽培方法でも美味しくならないのです。有機野菜が美味しいと言われるのは、結果的にこの3要素を満たしていることが多いからで、これを満たしてない美味しくない有機野菜も世の中にはたくさん流通しています。
勘違いその3 有機だから環境によい

これも有機農業だから環境にいいとは一概には言えず、ケースバイケースのようです。環境問題というのはいろんろな要素が複雑に絡み合っているので、有機農業という1つの方法論があらゆる面において、環境負荷が少ないとはいえないようです。
本書で紹介されている具体的な例としては、米作りで除草剤を減らすために実用化されている「紙マルチ栽培」がとりあげられています。これは最初に田んぼを紙で覆ってしまい、そこに苗を植えていくというものです。
光が通らず雑草が生えないので、除草剤を使用する必要がなく環境にも良さそうなのですが、茨木大学の調査によれば「紙マルチ栽培」は突出して二酸化炭素の排出量が高かったそうです。それは、紙の製造過程で大量の二酸化炭素が発生するからです。
だからこの方法が悪いということではなく、除草剤を使わないのがいいのか、二酸化炭素が少ないという部分を評価するのかによって評価がかわるので「環境に良い」というのは簡単ではないのです。
では、有機野菜とはなんなのか?
安全性は農薬を使った普通の農作物と変わらないなら、有機野菜っていったい何なの?って思いますよね。それに対して久松さんはこう答えます。
有機野菜は安全な野菜ではなく、「健康な野菜」であるべきだ。と僕は考えています。「健康な野菜」をもう少し丁寧に説明すれば「その個体が生まれ持っている能力を最も発揮できている野菜」ということです。そして健康に育った野菜は栄養価も高く美味しい。もちろん栽培の前提として、栽培時期、品種、鮮度、の三要素が満たされているのは当然です。健康に育てることは、その先の話になります。
そして、「健康な野菜」は有機農業でなくても再現できるともいいます。高品質な野菜をつくっている人は、慣行農業をしている人にもたくさんいるし、逆に有機農業をやっている人の中でも、健康ではない低品質の野菜をつくっている人もいるといいます。
ただ久松さん自身は、作物を健康に育てるためには畑の生き物を多用に保つのが近道と考えており、栽培者として実利的に考え、農薬を使わないという選択をしているそうです。
美味しい野菜を食べるには?
「野菜の美味しさの3要素」は「栽培時期(旬)」、「品種」、「鮮度」です。私たちが手軽にできることとしては、旬のものを選んで、なるべくすぐに食べるということです。
8月が旬の野菜は、きゅうり、トマト、なす、さといも、えだまめ、いんげん、おくら、かぼちゃ、あしたば、青唐辛子、ししとう、しそ、とうもろこし、ゴーヤ、パプリカ、ピーマン、みょうが、などがあります。
こういった野菜の旬を知り、少量ずつ購入して、すぐに食べるのが望ましいです。そう考えるとやはり、生産者から直接購入できるのが一番理想的ですね。久松農園ではオンラインで野菜の購入ができるので、気になる方は自分の舌で「健康な野菜」を試してみてください。