マニアックな本から話題の本まで!いま読みたい本16選

余裕のある時だからこそ読みたい本がある

普段はビジネス書や実用書ばかり読んでいる人も、せっかく年末年始にまとまった時間ができたのなら、いつもと違う本を読んでみませんか?ここでは本屋大賞を受賞したあの名作や、今年ノーベル賞を受賞したあの人の自伝、あるいは普段なら手に取りにくい学術系の本や一風変わった恋愛小説を、全部で16冊紹介します。

面白くてあっという間に読んでしまうものから、読むのに体力・精神力が必要な読み応えのあるものまでを豊富に選びました。今年の年末年始をともに過ごしたい一冊が見つかること間違いなしです。

年末年始に読みたい本16選

1.『羊と鋼の森』

著者:宮下奈都
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2016年本屋大賞受賞作。「ピアノの調律」という仕事に魅了された17歳の主人公・外村は、自分自身も伝えられない言葉をピアノの音で表現できるようになりたいとピアノの調律師を目指します。本作の最大の魅力はそんな外村が調律師として、人として成長していく姿を描いた、丁寧で静かな筆致。エンタメ小説のような盛り上がりや劇的なドラマはありませんが、にもかかわらずどんどん読み進めたくなる心地よさがあります。年末の忙しさに疲れた心をホッと癒してくれる、優しさに満ち満ちた作品です。

2.『鹿の王』

著者:上橋菜穂子
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2015年本屋大賞受賞作、第4回日本医療小説大賞受賞作。著者の上橋さんはアニメ化もしている『精霊の守り人』をはじめとする「守り人シリーズ」の作者でもあります。本作の舞台は架空の異世界。突如発生した感染症をめぐって、登場人物たちが治療と病因解明に乗り出していく、という物語です。執筆にあたっては医師である上橋さんの従兄が監修を担当しているほか、東洋医学と西洋医学の対立構造も組みこむなど、本格的な医療小説として読み応えのある作品です。

3.『海と毒薬』

著者:遠藤周作
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1957年出版、第5回新潮社文学賞、第12回毎日出版文化賞受賞作。太平洋戦争中、日本軍が捕虜の米兵を人体実験のサンプルとして使用した「九州大学生体解剖事件」を題材として、日本人の、そして人間の倫理に鋭く切り込んだ問題作です。人体実験に関して強い抵抗感を抱きながらも、大学病院内の同調圧力に負けて人体実験に手を染めていく主人公たち。彼らを見て「自分ならどのように行動するだろうか」「拒絶できるだろうか」と葛藤するのが本書の醍醐味です。年末年始のような気持ちに余裕がある時にこそ、読んでおきたい作品です。

4.『行かずに死ねるか!―世界9万5000km自転車ひとり旅 』
著者:石田ゆうすけ
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旅行作家・石田ゆうすけさんのデビュー作。大手企業でサラリーマンとして働いていた石田さんはその日常に耐えきれず、貯金と友人たちからのカンパ、そして自転車と荷物を抱えて7月のアメリカ・アラスカに降り立ちます。そこから7年半にも及ぶ世界一周自転車ひとり旅の中では、日本では到底見られない美しい景色あり、旅先での恋あり、砂漠で盗賊に遭い身ぐるみ剥がされる災難ありと、色々な出来事が待ち受けています。本書はそんな冒険の「面白いところだけ」を抜き取った極上のダイジェストとなっています。自転車好きや旅行好きの人でなくとも「冒険がしたい!」とウズウズすること間違いなしの一冊です。

5.『南無ロックンロール二十一部経』

著者:古川日出男
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『アラビアの夜の種族』など圧倒的スケール感を持つ物語を生み出してきた著者が、構想10年を経てようやく完成させた渾身の作品。「1995年の地下鉄サリン事件」「2011年の東日本大震災」これらの大きな事件を日本人はどのように捉え、乗り越えていくべきなのか。そんな重苦しいテーマが、絡み合う壮大な3つの物語と著者一流のロックン・ロールを思わせる文体でエンタメ感たっぷりに描かれています。単行本にして570ページを超える大きな本ですが、最後まで読み通した時「今年の年末年始にこの本を読んでよかった」と思わず呟いてしまうほどの傑作です。

6.『ポケモンの神話学 新版 ポケットの中の野生』

著者:中沢新一
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日本文化人類学の奇才・中沢新一さんが、人類の無意識と「ポケモン」をはじめとする現代のゲームを関係付けて、ゲームの面白さやプレイする意味などを学問的な観点から分析した一冊。本書は1997年に岩波文庫から『ポケットの中の野生 (今ここに生きる子ども)』として発刊され、2004年に新潮文庫から『ポケットの中の野生: ポケモンと子ども』として再刊、今回『ボケモンGO』のブームを受けて再再刊されたものです。内容はほぼ当時のままですが、それでも色あせない、普遍的な論考となっています。『ポケモンGO』にハマっている人は絶対に読んでおきたい本です。

7.『ボブ・ディラン自伝』

著者:ボブ・ディラン 訳者:菅野ヘッケル
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2016年ノーベル文学賞を受賞したボブ・ディラン本人が綴った自伝。生い立ちや下積み時代の生活、名盤の製作秘話に恋愛模様、当時の社会情勢などについて自身が抱いた思いなど、他ではなかなか知ることができないボブ・ディランを堪能できます。ボブ・ディランを聴いたことがある人はもちろん、今回のノーベル文学賞受賞で初めて知ったという人もぜひ読んでほしい一冊です。またこちらと合わせて岩波新書『ボブ・ディラン――ロックの精霊』を読むと、一層彼についての理解が深まります。

8.『貨幣の「新」世界史――ハンムラビ法典からビットコインまで』

著者:カピール・セガール
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FRB元議長ポール・ヴォルガーや、アメリカ元大統領ジミー・カーターなどの著名人のほか、「ニューヨーク・タイムズ」「フィナンシャル・タイムズ」など主要メディアも絶賛し、ベストセラーとなっためちゃくちゃ面白い「お金の歴史本」。ウォール街の投資銀行家である著者が、世界25カ国以上を飛び回り、脳科学・行動経済学・歴史学・宗教学などあらゆる専門家に話を聞きながら、「お金とは何か?」「なぜ人を惑わせるのか?」を徹底検証しています。単行本で400ページと大きな本ですが、2017年のお金との付き合い方を考えるうえでぴったりの一冊です。

9.『近代文化史入門 超英文学講義』

著者:高山宏
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19世紀末のイギリスを中心に、光学・辞典・哲学・造園術・百貨店・見世物文化・王立協会などあらゆる概念や言葉を、豊富な資料と刺激的な筆致で描いた文化史の入門書。著者は学問会で「学魔」と呼ばれ、常人では到底及ばないほどの知識と発想で、嗜好品としての学問を各方面で紹介している人物です。よくある学術書の堅苦しさはなく、まるで小説のようにダイナミックに展開される論考はエンターテイメントそのもの。一見全く関係のないものが、学魔の魔術で次々とつながっていく様子をどうぞご覧あれ。

10.『現代犯罪図鑑』

著者:別役実・玖保キリコ
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1992年初版発行。著者は日本の不条理演劇を確立した別役実さんと、女性漫画家・玖保キリコさんです。本書は刑法の判例集の中から不条理な要素の強い事件を選び、それを別役さんの視点から犯罪の構造を解説し、それに玖保さんの明快なイラストを付した「高感度犯罪図譜」となっています。無味乾燥な判例のシナリオが、別役さん独特の感性による物語化によって犯罪現場にたちこめていたはずの「関係」が浮き彫りになる様は、サスペンス好きにはたまりません。知ってはいけない「犯罪の面白さ」を味わえるちょっぴり危険な一冊です。

11.『サピエンス全史』上下巻

著者:ユヴァル・ノア・ハラリ 訳者:柴田裕之
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人類が宗教や経済などを生み出し、まるで世界の支配者のような力を手に入れたのは、全て「虚構をつくる能力」によるものだった。本書はそのようなコンセプトのもと、現在の世界を支配する価値観の多くが人類が長年かけて作り出した虚構の上に成り立っているものなのかもしれない、という極めてアナーキーな仮説を提出します。人類が種をかけて展開してきた壮大な想像の物語をあくまで科学的に解読していく姿勢は、この仮説に強力な説得力を与えています。下手をすれば自分の中の価値観がまるごとひっくり返ってしまう危険を持つ、刺激的な論考です。

12.『ニシノユキヒコの恋と冒険』

著者:川上弘美
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女性の感性を的確に文章化する作家・川上弘美さんが描く、やたらとモテるのに最後は必ず女性に去られてしまう男・ニシノユキヒコの恋と人生を描いた連作短編集です。物語はニシノユキヒコと関係を持った10人の女性を語り部として進んでいきますが、そこでニシノユキヒコはなんともしょうもなく、同時にどこか憎めない男として語られます。恋をする時のあのどうしようもない感じ、そして恋が冷める時の名残惜しいような、切ないようなあの感じ。この連作短編集はそうした恋の醍醐味を思い出させてくれる一冊です。

13.『植物図鑑』

著者:有川浩
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ヒロイン・河野(こうの)さやかが、ある日突然マンションの前に行き倒れていた青年・日下部樹(くさかべ・いつき)を拾い、奇妙な同居生活の中で恋に落ちていく恋愛小説。主人公の樹は野草採集が趣味だったり、自分の出自を聞かれるとだんまりを決め込んだりと謎の多い人物ですが、そんな樹にさやかは徐々に惹かれていきます。『花とゆめ 文系少女』『ザ花とゆめ』で漫画化され、2016年には映画化もされています。世の乙女たちをメロメロにしたちょっぴり変で、とっても素敵な恋の物語をぜひ年末年始のお供にどうぞ。

14.『ジェローム神父―ホラー・ドラコニア少女小説集成』

著者:マルキ・ド・サド 訳者:澁澤龍彦
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SM(サドマゾ)の語源であるマルキ・ド・サドの作品を、日本にサドを紹介したフランス文学者であり作家でもある澁澤龍彦さんが翻訳した、倒錯的すぎる性愛の物語。本書には一般的には相互関係にあるサディズムとマゾヒズムではなく、単なる一方的なサディズムに特化した、それはもうクレイジーな嗜好がずらりと並んでいます。とても通勤電車では読めないような作品なので、ぜひとも年末年始の自宅でこっそりと読んでみてはいかがでしょうか。

15.『マチネの終わりに』

著者:平野啓一郎
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芥川賞作家・平野啓一郎さんが「40代をどう生きるか?」を読者問いかけるために書いた、長編恋愛小説。婚約者のいるヒロイン・洋子と天才クラシックギタリスト・蒔野が強く惹かれ合いながらもすれ違い、長い年月をかけながら再び運命をたぐりよせる様子を、繊細で美しい筆致で描いています。大人の恋愛をここまで丁寧に描いた作品はないと言える、超がつく正統派の恋愛小説です。「最近まともな恋愛小説を読んでないなあ」という人には特にオススメの間違いない一冊。

16.『太陽の塔』

著者:森見登美彦
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第15回日本ファンタジーノベル大賞受賞、森見登美彦さんのデビュー作です。主人公の「私」は京都大学の5回生。彼は高い知能と高潔な道徳心をこじらせまくった挙句、未練タラタラの元彼女・水尾さんにも自分の気持ちにも全く素直に向き合えなくなってしまいます。

彼にかかればストーカー行為も「学術的価値のある水尾さん研究」となり、クリスマスは自分たちを弾圧する陰鬱なイベントでしかありません。しかし常に何かと必死に戦い、常に臆病であり続けるこの物語の主人公を、読者はきっと愛さざるを得ないでしょう。一度でも青春をこじらせたことのある人なら、きっとバイブルになる傑作恋愛青春小説です。

どっさり買って、どっさり読もう

時間が無限にあるかのように感じる年末年始。せっかくまとまった時間ができたのなら、ここで紹介した中から気に入ったものを片っ端から購入して、貪るように読んでみませんか。きっとたっぷりリフレッシュして、休み明けの仕事にも取り掛かれるはずです。

読みたい本はたくさんありますが、お酒飲んでダラダラしていると、あっという間に休みが終わってしまいますよね。

[文]鈴木 直人 [編集]サムライト編集部