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“松浦弥太郎”とはどのような人?
松浦弥太郎という名前を聞いてピンと来る人は、きっと雑誌や本が好きな人なのではないでしょうか。
彼は、国内外様々なところで活躍をした人ですが、その中心には「本」「暮らし」がいつもあります。
主な経歴としては、「COW BOOKS」という古書店を経営しながらエッセイストとして活躍し、最近では、雑誌「暮らしの手帖」の編集長、「クックパッド」でウェブサイト「くらしのきほん」などの編集長を歴任などが挙げられます。
ですが、その昔、30代の頃は、アメリカで買ってきたヴィジュアルブックを日本のクリエイターやデザイナーに売り歩く仕事をしていたといいます。当時は、洋書は今より手に入りにくく、海外の情報が入ってくるスピードも遅かったため、そのような仕事が成り立っていました。
しかし当時は、アパートの家賃すら払えないような暮らしをしていたそうです。結婚もしていたけれど、週に3日は本を売り歩く仕事、残りの4日はアルバイト生活。そんな生活から今や「暮らしの手帖」や「クックパッド」で活躍するまでとなっています。
今回は、そんな松浦さんの『松浦弥太郎の仕事術』『おとなのきほん 自分の殻を破る方法』という本を参考にしながら、松浦さん流の仕事術やプライベートでの過ごし方について紹介していきたいと思います。
仕事のコツは、「当たり前のことを丁寧にすること」

まずは『仕事術』で紹介されている、仕事をするうえでのポイントを紹介します。
・きちんとした挨拶を行うこと
・身だしなみが清潔であること
・笑顔を忘れないこと
・自分の意見をはっきり伝えること
・飾らないこと
・真似て学ぶこと
・嘘をつかないこと
・約束を守ること
・自立すること
・欲張らないこと
・心を込めること
こうして見てみると、ごく当たり前のことが書かれているように見えますが、この当たり前のことをするのが、何よりも大切なのだと松浦氏は言っています。
特に上位にある「挨拶、笑顔、自分の意見をはっきり言う」は松浦氏の信条であると言っても過言ではないでしょう。『仕事術』以外にもさまざまな著作のなかで、彼が述べていることです。
この3つができていれば、基本的に仕事ができる、というのが、松浦氏の考え方です。
そのほかのポイントも仕事におけるスキルというよりも「暮らしにおける基本」であることがわかります。外出するときは早めに仕度をし、最後にきちんと手を洗ってから家を出る、それを普段意識しているビジネスマンが、一体どれほどいることでしょうか。
ですが、そのように「丁寧に暮らすこと」ことが、仕事をきちんとこなす重要なポイントだと松浦氏は述べています。
働く理由は給料だけではない!

人は生活のため(給料をもらうために)仕事をしていますが、そのモチベーションだけで仕事をすると、「嫌々仕事をしている」という感覚がどうしても残ってしまいます。
その一方、松浦氏は「給料のうち、仕事に対する対価と支払われているのは半分で、残りはいい仕事をするために必要な自分作りを行う資金」だと述べています。
給料を100%、自分の労働に対する対価と考えるのではなく、仕事をするうえでの自分をより成長させるためだと思うことで、仕事に対する姿勢も変わってくるのではないでしょうか。
いい仕事をするために充実した休日を過ごすと考えると、仕事への考え方も大きく変わる、と松浦氏は述べています。もちろん休むことも大切ですが、いい仕事ためにできる、自分への投資の時間にすることも可能なのです。
また、松浦氏が度々述べていることとして、何をするにもそこには「人」がいる、という点があります。
仕事をするとき、1人の後ろには50人の人間がいます。その50人の人との関係性の中に仕事の意義を見出し、行動していくことで、“やりがい”や“幸せ”を見出すことができると言っています。
仕事をしていると、どうしても独りよがりになってしまい、自分の近くの物事しか見渡せなくなってしまいがちですよね。
しかし、自分の仕事は他者にとってどういうものなのかを考えて仕事ができれば、より多くの意義を感じと目的を感じて、仕事ができるのではないでしょうか。
積極的な自己否定をしよう

なにか失敗をした際、あるいは、反省をしなければならないときに、ネガティブになりすぎてしまうと、脳がそれを記憶してしまい、次のチャンスのときに、つい脳が萎縮してしまいがちです。
松浦氏が行っている自分を顧みる方法は、“積極的な自己否定”。
これは3つのステップになっています。
その① 「もっといい自分」になれるよう前向きに今の自分を否定する。
その② 「新しい自分の理想のかたち」を思い描く
その③ 積極的に、そこに近づく努力をする
前向きに今の自分を否定してみましょう。「ここが悪かった」と思うだけでなく、「こうすれば今の自分より、もっと良くなる」と解釈をします。そうするだけでも、前向きに取り組むことができるようになります。
「これだとだめだ」ではなく「こうすればもっと良くなる」と自分を褒めること。そのためには、自分の思う「こうしたい」「こうなりたい」を明確にして、それに向かって真摯に取り組むことが大切です。
1日1時間学ぶ時間を作ろう

毎日仕事にばかり追われていても、なかなか成長することはできないもの。
松浦氏は、「常に勉強」という姿勢を崩さないといいます。どんな立場になったとしても、学ぶ姿勢を崩さないことで、さらなる成長ができると。
そのための方法として、松浦氏は、一日に最低一時間、僕は必ず「考える時間・勉強する時間」を確保していると言います。
普段、電話やインターネット、テレビなど様々な情報が飛び交い、雑多な影響を遮断できないので、定期的に一人になる時間をつくるのは非常に大切になってきます。
そのときに松浦氏がよく行う方法が、「静かな部屋で机に向かい頭の中に一枚の白い画用紙を置く」というものだそうです。
物理的に紙を使うのではなく、イメージトレーニングとして紙を頭のなかに設置する。そして、一番先に浮かんだ言葉をそこに書き留める。そこから、その言葉について、「どういう意味だろう?」と考えを広げていきます。
これをしていると、様々な言葉が浮かんできて、「これとこれが、こうつながって、この点を解決すればスッキリするな」とわかってきたりするそうです。これがまさに、考える癖。これができるようになれば、スムーズに思考ができているということになります。
積極的に、新しい友だちと付き合おう
最後に仕事とは少し離れますが、人付き合いについて紹介します。
松浦氏によれば、“おとなに必要なのは新しい友だち”です。自分で新しいジャンルの勉強をしたり、全くふだん触れることのない分野を知ることはなかなかに難しいものです。
そういった新しい知識を与えてくれ、自分のこれからの可能性を引き出してくれるのは新しい友だちです。残念ながら、ずっと仲良くしてきた親友や仲間も、伸びしろを与えてはくれません。
「チャンスは他人が運んでくるもの、そう僕は感じています」(『おとなのきほん 自分の殻を破る方法』42〜43ページ)と松浦氏が述べているように、他人から常に新しい刺激をもらうようにすることも大切なのではないでしょうか。
そのことを、松浦氏は「小さな王国にずっといることはしない」という言葉を使っていました。新しい国を知ることも大切ですね。
社会人になると、新しい出会いがあった時「同じジャンルの人だったら友だちになりたいけど、別ジャンルの人は別につきあわなくていい」と勝手にわけていることはないでしょうか?
新しい人付き合いというのは、価値観、趣味、行動パターンが似た人ではなく、全く違うジャンルの人と付き合うことを指します。松浦氏は、次のように述べています。
「自分が普段行かないフィールドに入っていって、自分が普段しないような話をし、新しくてわからないことを聞いてびっくりし、喜びたい。それがおとなの友だち作りの基本であり、楽しみです」(前掲書46ページ)
そのようなおとなの人付き合いをすることで、仕事もプライベートも充実してくるのではないでしょうか。
参考文献
松浦弥太郎著『松浦弥太郎の仕事術』2012年、朝日新聞出版
松浦弥太郎著『おとなのきほん 自分の殻を破る方法』2017年、PHP研究所

