編集部に聞いた!岩波文庫、角川ソフィア文庫、講談社学術文庫、累計売上トップ10!

■売上ランキング6位

【岩】『銀の匙』

著:中 勘助

夏目漱石が推薦し、日本を代表する哲学者和辻哲郎が1935年初版の文庫版に解説を寄せた文学作品。2003年の「読者が選ぶ〈私の好きな岩波文庫100〉」で3位を獲得しています。2006年には岩波文庫の売上ランキング10位にランクインしていましたが、今回のランキングでは6位と順位を上げています。

本棚の引き出しにしまっていた小箱から出てきた銀の匙をきっかけに、幼年時代のことを思い出すという自伝的小説ですが、心情表現や言葉選びの美しさが最大の読みどころ。読後は「日本語ってこんなに豊かなのか」と驚くことうけあいです。

【角】『新版 遠野物語 付・遠野物語拾遺』

著:柳田 國男

日本民俗学の原点。まだ「西洋」や「科学」が浸透しきっていない岩手県遠野という土地の民間伝承の世界を、柳田國男が自分の足と耳と言葉でまとめた一冊です。黄昏時に小さな子供が突然姿を消す「神隠し」の物語や、遠野に古くから残る信仰「オシラサマ」や「コンセサマ」の物語、誰もが一度は聞いたことのある「ザシキワラシ」の物語などが生々しい文章で描かれています。科学以前の人間の想像力や感受性を痛感できる貴重な本です。

【講】『五輪書』

原著:宮本武蔵 著:鎌田茂雄

宮本武蔵が自身の兵法の奥義や人生観を記した書『五輪書』に、日中の思想研究に功績を残した鎌田茂雄が現代語訳と解説をつけた一冊。憧れた人も多いであろう剣豪の思想をじっくりと味わうことができます。また本書には『五輪書』の下敷きになったともされる同じく武蔵が記した「兵法35箇条」と、武蔵の生きる指針を21ケ条に記した「独行道(どっこうどう)」も収録されています。

■売上ランキング7位

【岩】『マルクス・エンゲルス 共産党宣言』

著:カール・マルクス、フリードリヒ・エンゲルス 訳:大内 兵衛、向坂 逸郎

マルクス主義の原典ともいうべき古典の日本語訳。原著は1848年に発表されて以来、世界各国で起きたプロレタリア(労働者)運動のバイブルとして読まれてきました。共産主義的な視点から次々と暴露される資本主義の問題点は、「資本主義が当たり前」の世界でどっぷり生きる私たちにとって今なお課題でありつづけています。

資本主義の限界が見え始めた近年になって、様々な出版社が『共産党宣言』の翻訳や、わかりやすい解説本などを出版したことからも、本書がいかに重要な一冊かがわかります。

【角】『般若心経講義』

著:高神 覚昇

「般若心経」は大乗仏教の真髄がコンパクトに解かれているとされると同時に、解釈が非常に難しいともされています。本書は仏教学者の高神覚昇が、この「般若心経」について昭和9年のラジオ番組『聖典講義』(のちの『朝の修養』)で行なったラジオ講話をまとめたものです。様々な偉人や文献などを引用しながら、非常にわかりやすく「般若心経」について解説してくれています。

また、巻末には「般若心経」の全文と全文和訳を掲載。本文のあとに読めば、「般若心経」が今までとは大きく違って見えるはずです。

【講】『考え方の論理』

著:沢田 允茂

昭和34年の第13回毎日出版文化賞の受賞作『少年少女のための論理学』を下敷きに書かれた本。そもそも「正しく考える」とは何かということから、思考における「名前」の持つ意味、接続詞が文と文にもたらす論理的な影響力など、一見難しく思える内容をわかりやすく解説してくれます。「論理的思考」系のビジネス本はごまんとありますが、これ一冊さえ読んでいればかなり骨太な論理的思考が身につくはずです。

■売上ランキング8位

【岩】『善の研究』

著:西田 幾多郎

主観と客観に分かれる前の「純粋経験」、それを手掛かりに「真の実在」「善」「宗教」「神」について慎重に考察した哲学書。日本開国からまもない1870年に生まれ、太平洋戦争が終わる2ヶ月前にこの世を去った西田幾多郎の哲学は、東洋と西洋の哲学をより根本的なところで融合させようという試みでもありました。本書はその西田の代表的著作のひとつです。かなり読み応えのある本なので、西田哲学の解説本と一緒に読むことをおすすめします。

【角】『新版 おくのほそ道 現代語訳/曾良随行日記付き』

著:松尾 芭蕉 校注:潁原 退蔵、尾形 仂

「古池や蛙飛びこむ水の音」「閑さや 岩にしみ入る 蝉の声」など数多くの名句を残した松尾芭蕉。しかし正直なところ、芭蕉の俳句の読み方がいまいちわからないという人も多いのではないでしょうか。本書はそんな人のためにこそある本といえます。芭蕉の時代を専門分野とする2人の国文学者による校注と現代語訳が、読者を芭蕉が目にした詩的幻想世界へと導いてくれます。

実は『おくのほそ道』の内容は実際に芭蕉が歩いた旅の工程とはかけ離れているのですが、これに対して『曾良随行日記』は実際の旅の工程を記した文献となっています。両者を見比べることで、より芭蕉の感性への理解が深まることでしょう。

【講】『日本書紀(下)全現代語訳』

著:宇治谷 孟

本邦初の『日本書紀』現代語訳の下巻。下巻では大和朝廷が律令(法律)によって国を治めていく時代が描かれます。扱われるのは、聖徳太子の17条憲法に大化の改新、倭国と百済連合軍VS唐と新羅連合軍との戦争「白村江の戦い」や、古代日本最大の権力争い「壬申の乱」など。

歴史の教科書では必ずと言っていいほど触れられる重要な出来事ばかりですが、本書が教科書と違うのは当時の人の目線でそれらが描かれている点にあります。より生々しい日本古代に興味がある人なら、上巻も含めて必読の書です。

■売上ランキング9位

【岩】『歎異抄』

校注:金子 大栄

近年、その思想の先進性から見直されている浄土真宗の開祖親鸞。その親鸞の言葉をもとに、弟子唯円が編集したものとされているのが『歎異抄』です。「悪人正機」「他力本願」などの独特の思想について、難解な仏教用語を使わずに、わかりやすい言葉で解説しています。さらに真宗大谷派僧侶であった金子大栄による校注は、本文と上下段に分かれる形でつけられており、本文を読みながらわかりにくい単語などの解説を参照できるようになっています。

94ページと小さな書物ですが、いつ読み返しても学ぶところのある大きな書物でもあります。

【角】『新版 歎異抄 現代語訳付き』

訳注:千葉 乗隆

校注に徹した岩波文庫版の『歎異抄』に対し、角川ソフィア文庫版には仏教史の権威千葉乗隆による現代語訳がついています。旧版は戦後間もない頃の刊行でしたが、2001年の新版では現代人に合った現代語訳に一新。さらに戦後の仏教研究の成果を盛り込んで、『歎異抄』の「真の読み方」の探求を試みています。「まずは『歎異抄』の内容を理解したい」という人は、ぜひとも手に取るべき一冊です。

【講】『中国古典名言辞典』

著:諸橋 轍次

主要な中国の古典や随筆から200、その中から約4800の名言を選び抜き、書き下し文・原文・現代語訳・解説をつけた1,000ページを超える名言集です。「辞典」の名に違わず、詳細な目次と約1万項目にものぼる五十音索引をつけるなど、懇切丁寧な作りとなっています。

著者の諸橋轍次は漢字の研究者として知られ、世界最大の漢和辞典『大漢和辞典』や『広漢和辞典』の編者も務めた人物です。本書はこの諸橋が8年もの歳月をかけて書いた力作。重要な古典や人物についての簡単な解説もついているので、名言集としてだけではなく古代中国を学ぶきっかけとしても大いに役立ちます。

■売上ランキング10位

【岩】『古事記』

著:倉野 憲司

日本古典文学の研究者倉野憲司による校注がついた『古事記』。

現代語訳で読みたい場合は講談社学術文庫版を読む必要がありますが、原文そのままの雰囲気を味わいたいという人にはこちらの岩波文庫版がおすすめです。というのも岩波文庫版は原文と校注が上下段構成になっており、わからない言葉や表現があればすぐに参照できるからです。

【角】『数学物語 新装版』

著:矢野 健太郎

東京工業大学名誉教授も務めた数学者、矢野健太郎による「数学読み物の決定版」。エジプト、バビロニアでの数字の誕生から、アルキメデスにパスカル、デカルトにニュートンなど、大学者の功績とともに数学の歴史を、言葉と図版でわかりやすく、ドラマチックに解説してくれます。数学そのもの楽しさだけでなく、自分の頭で考えることの楽しさも学べる一冊です。

【講】『本を読む本』

著:J・モーティマー・アドラー、V・チャールズ・ドーレン 訳:外山 滋比古、槇 未知子

1940年にアメリカで出版されて以来、世界で読み継がれてきた『How to Read a Book』の邦訳版です。翻訳を担当したのは英文学者であり、大ベストセラー『思考の整理学』(ちくま文庫)の著者でもある外山滋比古と、翻訳家の槇未知子。

原題どおり「本の読み方」について書かれた本で、読書術の古典ともいわれます。本書は読書を4つの習熟度に分けて考えており、基本的な読み方から学問研究にも耐えうる読み方までをレクチャーしてくれます。若干翻訳が読みづらいなどの難点はあるものの、今なお読む価値のある一冊です。

さあ、何位から読む?

初版から何十年経っても売れ続ける本だけあり、読む価値のある本だけが30冊並びました。さて、あなたはどこのレーベルの何位の本から読み始めますか?「1位から順番に」「10位から順番に」でもかまいませんし、「古典だけを読んでみよう」「古典以外から読んでみよう」でもOKです。

30冊全部を読み終えた頃には、きっと深い教養が身についているはずです。

Career Supli
今回紹介した本は良書揃いですね。ぜひ手にとってみてください!
[文]鈴木 直人 [編集]サムライト編集部