今イケてるのは「所有」じゃなくて「共有」、広がるシェア・エコノミー

広がるシェア・エコノミー

週末の旅行にカーシェアリングサービスを利用する。こういった「シェアする経済=シェア・エコノミー」は徐々に日本でも広がりつつあります。そしてこの流れはこれからもどんどん拡大していくでしょう。ここではこのシェア・エコノミーについてサービスなどの紹介をしつつ、この経済の中での私たちの消費のあり方やそのメリットについて考えていきます。

今イケてるのは「所有」じゃなくて「共有」

「消費すること」「所有すること」がステータスだった時代はもうすぐ終わり、「共有」こそがカッコいい時代がもうすぐそこまでやってきています。それこそがシェア・エコノミーという経済の形です。

例えば米国ボストンに本拠地を置く「Zipcar(ジップカー)]」は、インターネットやスマートフォンなどを使って、簡単に車の貸し借りを可能にするサービスを提供しています。同社のサービスの規模はアメリカ・カナダ・イギリスで合わせて4400拠点・9000台・会員数40万人以上。世界最大規模のカーシェアリングサービスです。

他にもサンフランシスコ発の宿泊プラットホーム「Airbnb」では、空き部屋を持つホストと宿泊先を探す旅行者をマッチングさせるサービスを提供していますし、「Spinlister」というサービスなら自転車にサーフボード、スキーギアなどを現地で借りることもできてしまいます。

大量生産大量消費の経済では「新しく作る」ことがより大きな価値を生みました。逆に言えば作らなければ価値は生まれないのです。しかしシェア・エコノミーではモノ・カネ・サービスは新しく作られるのではなく、交換・共有によって経済が成立します。欧米ではこのような経済のあり方が1つの大きな流れとなってきているのです。

日本でもシェア・エコノミーは始まっている

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画像出典:http://shibukasa.com/index.html

もちろん、シェア・エコノミーは日本でも始まっています。「タイムズカープラス」は駐車場管理会社であるパーク24が展開するカーシェアリングサービスで、パック料金などを利用すれば全車両(BMWやMINIなど含む)6時間4,020円で借りることができます。

「SHIBUKASA」は渋谷で利用できる無料の「傘シェア」サービス。企業や個人宅であぶれている傘を寄付してもらい、それを提携店に配布し、誰でも「シブカサ貸してください」の一言でカサが借りられる仕組みを作っています。借りた傘は提携店ならどこに返却してもOK。同サービスでは「シェアする社会・人と人との繋がり、優しさを持った持続可能なコミュニティーの創造」を目指しており、「傘」はその1つの象徴に過ぎないと考えているのだそうです。

他にも個人間での古着の物々交換会を開催する「xChange」というサービスや、同じく個人間での駐車場の貸し借りを可能にする「akippa」というサービスもあります。それぞれのサービスの規模は小さくても、少しずつ日本にも「共有することがカッコいい」という文化が芽吹き始めているのです。

シェアエコノミーで変わる消費の「作法」

Bike's parking

大量生産大量消費の経済では、お金と引き換えにモノ・サービスの提供を受けるのが経済における私たち消費者の役割でした。しかしシェア・エコノミーではそのようなあり方が大きく変わります。私たちはモノ・サービスの提供を受けるだけではなく、「与える側」に立つ必要が出てくるのです。

例えば「SHIBUKASA」に自宅の要らない傘を提供したり、「xChange」の古着交換会に参加したり、あるいは「Airbnb」や「Spinlister」に宿や自転車の提供側として参加する。サービスの提供を受ける側として経済に参加するだけでなく、サービスの提供をする側として参加することで、身も心も豊かになっていく、それがシェア・エコノミーにおける「豊かさ」であると言えます。

あなたが「シェアできないもの」は何ですか?

Two Japanese akita-inu puppies kiss

シェアリング・エコノミーの素敵な副産物は、「共有できないもの」を大切にしよう、というムーブメントにもつながり得ることです。イケダハヤト氏

出典:まだ東京で消耗してるの?

シェア・エコノミーのメリットには、もちろん経済的なメリットも挙げられます。車を買おうと思えば買うだけで数百万円、中でも数十万円のコストがかかり、そこに維持費が上乗せされます。しかしカーシェアリングを利用すればコストは大幅にカットされる。これは他のシェア・サービスでも同様です。

しかしイケダハヤト氏が言うように、シェア・エコノミーには実利面以外にもメリットがあります。「シェアをして身も心も豊かになろう!」とは言うものの、私たちは何もかもをシェアできるわけではありません。車や自転車、傘や部屋、家などはシェアできるかもしれません。あるいは服やカバン、アクセサリー、情報やノウハウなどもシェアできるでしょう。しかし大切な恋人や、親友、あるいは子どもとの時間などは「シェアできない」と思う人が多いはず。

多くのモノやサービスを共有することで、どうしても所有・独占したいものが浮き彫りになる。シェア・エコノミーに参加することで、私たちは本当に大切なものを再発見できるのです。

モノ以外の価値を生み出すシェア・エコノミー

欧米諸国に浸透し、そして日本にも少しずつ芽吹きつつあるシェア・エコノミー。この経済は新しいモノを作ることに重きを置きません。その代わりに、本当に大切なものの再発見やシェアがもたらす世界中の人との出会いといった、モノ以外に価値を見出します。

所有より共有。それがスタンダードになる時代はもうすぐそこまで来ています。

[文・編集] サムライト編集部