錦織圭のカラダも変えた!パフォーマンスを上げる「糖質」のススメ

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日本スポーツ界を席巻する「細野・メソッド」

千葉ロッテマリーンズ、錦織圭選手、浅田真央選手に高梨沙羅選手……。これらのトップアスリートの管理栄養士を務め、その能力を最大限引き出してきた人物、それが現在森永製菓(株)ウイダートレーニングラボの細野恵美さんです。

ここでは彼女の初著書『一流アスリートの食事 勝負メシの作り方』をもとに、体が持っているパフォーマンスを最大限生かすための栄養の考え方と食事法について解説します。ビジネスパーソンもアスリートも「体が資本」という点では全く同じ。その資本をどう生かすかを、細野・メソッドから学びましょう。

ハイパフォーマンスな体は「糖質」が作る

group of carbohydrate products
糖質制限ダイエットが大流行している昨今、ちまたでは糖質はダイエットの目の敵にされている栄養素の代表です。これはアスリートも同じようで、「お米を食べると太る」とお米を食べるのを控える人も少なくないのだとか。しかし細野さんはこれを真っ向から否定し、アスリートが高いパフォーマンスを発揮するためには糖質が必要不可欠だと言います。

その考えのもと、2005年から2010年まで管理栄養士として所属した千葉ロッテマリーンズでは、選手たちの食事を糖質中心のものに変え、積極的に摂取するように促しています。

第一に糖質はエネルギーの源です。1gあたりのエネルギー量は9kcalの脂質と比べて4kcalと半分以下ですが、脂質は体のエネルギーとして使うまでに何段階かにわけて分解する必要があるため、エネルギー効率の悪い栄養素です。

一方で糖質はほぼそのままエネルギーとして使えるのでエネルギー効率が高く、試合前・トレーニング前の食事としては最適な栄養素です。したがって少なくとも現代栄養学に基づけば、脳を含む体のパフォーマンスを維持するには糖質の摂取が必要不可欠なのです。

第二に糖質はスタミナの源でもあります。細野さんが2011年に錦織圭選手の食事管理を担当し始めた時、錦織選手はスタミナ不足に悩んでいました。そこで細野さんは彼の食事を観察した結果、「糖質不足」を指摘したそうです。

糖質、特にごはんやうどん、パンなどの「多糖類」と呼ばれる糖質は、ゆっくりと消化吸収されるため、血中や筋肉の中にエネルギー源として蓄えやすいとされています。逆に言えば多糖類を摂取せずに単糖類・二糖類(甘みの強い糖質)やそれ以外の栄養素ばかりを食べていると、スタミナ不足という結果につながるのです。

もちろんアスリートでなければ糖質の過剰摂取は肥満につながります。しかし過剰な制限はパフォーマンス低下に直結します。「ハイパフォーマンスな体作りには糖質が最も重要である」ことをよく理解しておきましょう。

「肉を食えば体力がつく」は半分ウソ

medium roast steak
「体力をつけるには肉をたくさん食べるべきだ」これは半分本当です。運動などで損傷した筋繊維を修復し、運動前よりも大きく強くする「超回復」には肉に多く含まれるタンパク質が必要不可欠だからです。しかし細野さんは「タンパク質の過剰摂取はスタミナ低下につながる」というのが最新栄養学の知見なのだと言います。

筋繊維の損傷がある場合、タンパク質はその修復に使われます。しかしそこで使われるタンパク質量には上限があり、それ以上のタンパク質はエネルギー源として使用され、エネルギーが必要ない時は体脂肪として蓄積されます。

体はタンパク質をエネルギー源として使用する時、一度アミノ酸に分解し、これをさらに分解してからエネルギーとして使用します。アミノ酸を分解した時に発生するのが「窒素」です。

窒素を処理・排泄するためには、肝臓と腎臓の協力が必要です。つまりタンパク質を過剰摂取すると、普段の食事などでただでさえ酷使している肝臓と腎臓にさらなる追い打ちをかけてしまうというわけです。内臓の疲労は筋肉の疲労と同じくらい、体のパフォーマンスに影響します。したがって「体力をつけるには肉をたくさん食べるべきだ」の半分はウソなのです。

また高タンパクの食事を与え続けたラットの筋肉量が、通常の食事を与え続けたラットよりも減少していたという実験結果もあり「とにかく肉を食べていれば大丈夫」という考え方の危険性を物語っています。

人の体が摂取できるタンパク質量は一般人で体重1kgあたり約1g、アスリートで約2gとされています。またウイダートレーニングラボでは疲労回復に適正な糖質とタンパク質の黄金律を「3:1」とし、積極的な糖質摂取とアスリートにありがちなタンパク質の過剰摂取をいさめているのだそうです。

細野流「時間別勝負メシ」

細野さんは糖質とタンパク質、そして脂質の三大栄養素をメインとする通常の食事も勝負メシと呼びますが、同時に「補食」と呼ばれる食事も勝負メシとして位置付けています。これはまさに勝負の時に最大限の力を発揮するためのメシです。

脳はエネルギーが不足すると著しくパフォーマンスを低下させます。筋肉への命令も脳が行うため、頭を使う仕事以外でも脳のパフォーマンスは結果に直結します。この点はアスリートでもビジネスパーソンでも変わりません。

しかし私たちは「自分の意思でエネルギーを溜め込み、ここぞという時に使う」ということができません。肝臓に蓄えられていて、脳の活動に重要な血糖値の維持に必要な「肝グリコーゲン」は、満タンにしていても安静状態で8時間、激しい運動をしていれば3時間ほどで空っぽになってしまいます。

下表は絶妙なタイミングでエネルギーを供給し、勝負をばっちり決めるために細野さんが提案する「時間別勝負メシ」の基本です。激しい運動をすることが少ないビジネスパーソンでも、忙しすぎて勝負の前に食事が摂れない場合もあるでしょう。そんな時でもこの表をもとに食事を摂れば、いつもの自分のパフォーマンスが発揮できるはずです。

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※1時間〜2時間前以降の補食は「一口で食べられるくらいの量」。

ただしこれらはあくまで「補食」に過ぎません。大切なのは「糖質は太る」「タンパク質は体力がつく」などの先入観にとらわれず、普段から三大栄養素を正しく意識した食事を摂取することです。それがアスリートレベルのハイパフォーマンスな体の基礎になるのです。

「糖質摂取食」がパフォーマンスを加速させる

フィットネスクラブの宣伝や、様々な書籍の影響で一大ブームを巻き起こしている「糖質制限食」ですが、細野さんに言わせれば「パフォーマンス低下食」でしかありません。確実にパフォーマンスを発揮し、結果を出すには積極的に糖質を摂る「糖質摂取食」でなくてはならないのです。脳と体にアスリート並みのパフォーマンスを発揮させるために適切に糖質を摂取しましょう。

参考文献『一流アスリートの食事 勝負メシの作り方
[文]鈴木 直人 [編集]サムライト編集部

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