日本最速の投手
今、日本の野球界で最も注目を浴びている人物は日本ハム所属の大谷翔平選手です。球速は最速で165キロ。日本最速の投手であり、現時点でもメジャーリーグで十分通用する実力を持った投手と見なされています。
さらに大谷選手が凄いのはホームランを量産する打者としての実力も兼ね備えている点です。あのイチロー選手も「彼ほどのバッターはなかなかいない」と大谷選手の打者としての才能を認めています。野球史上でも稀な投手、打者の「2刀流」の選手として活躍しているのです。
「大谷選手は193㎝と体格にも恵まれているし元々才能が凄いのだろう」と言うのは簡単です。大谷選手が一般的な他の野球選手と少し異なる特徴があります。
それは大谷選手独特の「思考」です。大谷選手の著書「不可能を可能にする大谷翔平120の思考」(ぴあ株式会社)を参考に大谷選手の思考をご紹介します。
読書家・大谷選手
大谷選手は現在若干23歳と若いですが、インタビューでの応答を見るに精神的にかなり成熟した人物だとわかります。
大谷選手は高校時代からビジネス書を始めとする様々なジャンルの本を読んできたそうです。読書を通じて、自分の内面を見つめる習慣を持っているようです。大谷選手の座右の書はなんとウォルター・アイザックソン著『スティーブ・ジョブス』です。
大谷選手は、常識に囚われない思考でビジネス界にイノベーションをもたらしたスティーブジョブスから影響を受けています。
大谷選手がプロ野球で投手、打者を兼任する2刀流でプレーし始めた当初、野球業界の専門家など世間の声は「2刀流は無謀だ」というものでした。
しかし、大谷選手はそのような声にひるむことなく2刀流で結果を出し続けてきました。野球界の常識に囚われることなく結果を出してきた大谷選手の原動力の1つは読書です。
ポジティブ思考とネガティブ思考のバランスの良さ

「良かった時より、悪かった試合の方が記憶に残るんです。自分の弱点があったら、しっかり直していきたい。頑張れと言う声も、自分がマイナス思考の時は”ちゃんとストライクを入れろ”に聞こえるんです。」大谷翔平2017年不可能を可能にする大谷翔平120の思考[Kindle版] 第5章Kindle位置番号1141
「思い通りに投げられなかったボールで抑えたことに満足したら成長するチャンスを失うことになります。」大谷翔平2017年不可能を可能にする大谷翔平120の思考[Kindle版] 第3章Kindle位置番号661
ポジティブ思考が良しとされている風潮の昨今。大谷選手ほど好成績を出して活躍しているのであれば楽観的でいても大丈夫そうなものですが、基本的に大谷選手は楽観的ではありません。むしろ大谷選手はネガティブ思考の持ち主です。
ネガティブ思考と言うと悪いイメージがありますが、ネガティブ思考には以下のようなメリットもあります。
・問題に対して危機感を持って改善に努めることができる
・現状を良くするための具体的な計画を立てることができる
・調子が良い時でも調子に乗ることなく安定して結果を出せる
ネガティブ思考にメリットがあるようにポジティブ思考にも以下のようなメリットがあります。
・自己肯定感を持てる
・過去に引きずられることなく切り替えて、未来に向かって前進していける
・周りの人から好かれる
しかし、ポジティブ思考が過ぎると「ポジティブになることだけ」に満足し、現状に甘んじてしまうという罠にはまります。それでは、自分を向上させていけません。
心理学者のバーバラ・フレドリクソン教授によると、ポジティブ:ネガティブ=3:1の比率にすると前向きで、かつ適度な危機感を持って仕事に取り組めるとのことです。大谷選手はこのポジティブ思考とネガティブ思考をバランスよく併せ持つことで自分自身を向上させてきました。
先入観は可能を不可能にする
大谷選手が高校時代より座右の銘に掲げている言葉は「先入観は可能を不可能にする」です。
「150キロを投げたかったんですけれど、160キロを目標にしようと言われて、最初は無理なんじゃないかと思いました。でも、やっていくうちに手ごたえを感じるようになってきて、そのうち出来るんじゃないかなと思うようになりました。自分で無理だと思ったら、出来なかった。最初から出来ないと決めつけるのはやめようと思いました。」大谷翔平2017年不可能を可能にする大谷翔平120の思考[Kindle版] 第6章Kindle位置番号1289
大谷選手は持って生まれた才能で160キロ以上の球速を出してきたように思われがちです。しかし、実は大谷選手自身も最初は160キロを出せるとは思っていなかったのです。しかし、160キロを目標に設定し、達成できると考えて練習に取り組むと160キロ以上の球速が出るようになったのです。
人は誰しも「自分には~~できないんじゃないだろうか」と自分で言い訳を作って行動にブレーキをかけてしまいがちです。しかし、まずは「自分は~~できる」と思って取り組むことが重要だと大谷選手の言葉から学べます。
目標達成ツール「マンダラート」を使用
大谷選手が花巻東高校時代に使っていた目標達成ツール「マンダラート」をご紹介します。大谷選手は理想を描くだけでなく、その理想を達成するために実際にすべき行動計画も立てていました。

大谷選手は高校1年生時に、高校卒業時にはドラフトで8球団から1位指名を受けることを目標として立てています。そのためにすべきことをマンダラートを使って56項目にまで細分化して落とし込みました。実際に、スピード160㎞/hという目標を高校生の時に達成しています。
このマンダラート、ビジネスパーソンがスキルアップを図る際にも有効活用できるでしょう。
本稿でご紹介したように、大谷選手の特徴はポジティブ思考とネガティブ思考のバランスの良さです。理想を描くだけでなく、その理想を実現するための筋道を自分で描き着々と前進してきました。自分の内面を見つめ常に自分を鍛錬する姿勢からは「野球道」を究める求道者のような印象を受けます。
近い将来、メジャーに挑戦する可能性が高い大谷選手。今後の活躍に注目し続けたいものです。
