プロのライターがガチで選んだ徹夜必至の最高の小説25選

iStock_000066346569_Small

次の日が休みの夜に

世の中に「小説」と名のつくものは星の数ほどあります。しかし残念ながらそのどれもが「珠玉の名作」とは言えません。ここではそんな玉石混交の小説の中でも、ページを開き始めたらそのまま徹夜コースまっしぐらの、面白すぎる作品をまとめて25冊紹介します。きっと後悔はさせません。騙されたと思って1冊でも手に取ってください。ただし、次の日が休みの日に限ります。

1. 『大聖堂』

著者:ケン・フォレット 訳:矢野浩三郎

61FOulP84eL._SX344_BO1,204,203,200_
画像出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4797332565

全世界で2000万部を超える販売部数を誇るスパイ・冒険小説の大家ケン・フォレットの力作です。10年以上構想を練りに練って発表されたこの作品は、約50年もの歳月をかけて「大聖堂」を修復する職人トムとその息子を中心とする物語。時代設定や描写、人物造形もさることながら、大聖堂建設に隠された数多の権謀術数が交錯するそのストーリーテリングには、眠気も吹き飛んでしまいます。

2. 『シャドー81』

著者:ルシアン・ネイハム 訳:中野圭二

41qNRkFAm1L._SX332_BO1,204,203,200_
画像出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4150411808

初版は1977年、すでに世に出てから40年近くの歳月を経たハイジャック小説。ロサンゼルスからハワイへと向かう747ジャンボ旅客機を、最新鋭戦闘爆撃機のパイロットである犯人が乗っ取り、乗客を人質に巨額の金塊を要求する、という物語です。筋立ての面白さもさることながら、その綿密な筆致からは当時のベトナム戦争や米国社会など時代背景も色濃く読み取ることができます。

3. 『ウォッチメイカー』

著者:ジェフリー・ディーヴァー 訳:池田真紀子

51OErlohYXL._SX338_BO1,204,203,200_
画像出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4167705885

ジェフリー・ディーヴァーの「リンカーン・ライム」シリーズ最新作。シリアルキラー「ウォッチメイカー」の事件とニューヨーク市警の汚職警官が絡んでいると思しき会計士の自殺……二つの事件を舞台に繰り広げられる熾烈な頭脳戦と、ディーヴァーの十八番であるどんでん返しのオンパレードが魅力の作品です。その息もつかせぬ展開に幕が下りた頃には、太陽が上り始めていること間違いなし。

4. 『犬の力』

著者:ドン・ウィンズロウ 訳:東江一紀

51i1WRv2UAL._SX298_BO1,204,203,200_
画像出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4042823041

メキシコを舞台に麻薬カルテルとマフィア、米国政府が繰り広げる酸鼻な「麻薬戦争」に主人公である麻薬取締局所属の捜査官が巻き込まれ、苦悩し、戦う物語。実際にメキシコで起きた革命や暗殺、暴動、紛争を物語に織り込みながら、それぞれの登場人物の「怒り」をきっかけに展開される息もつかせぬ展開がこの作品を単なるノンフィクションにとどまらせません。そこに読者の善悪の価値観に揺さぶりをかける人物たちの立ち居振る舞いも加わり、ドキドキし通しの読書になること間違いなしです。

5. 『薔薇の名前』

著者:ウンベルト・エーコ 訳:河島英昭
515XTBC9ESL._SX327_BO1,204,203,200_

画像出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4488013511

1327年の北イタリアの僧院で起きた連続殺人事件を軸に展開される壮大なスケールを持った推理小説。そんじょそこらの「推理小説」と違うのは、何しろ著者が記号・暗号学の専門家であるウンベルト・エーコであるという点です。

「物語中物語」「書物中書物」という物語自体を構造的に複雑化していくその手法は、読み進めるうちに読者までもが広大な謎の迷宮に取り込まれていくようです。さあ、あなたはエーコの迷宮から抜け出せるでしょうか?

6. 『推定無罪』

著者:スコット・トゥロー 訳:上田公子
51PPixdKwfL._SX342_BO1,204,203,200_

画像出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4167812088

ハリソン・フォード主演で映画化され、大ヒットを飛ばした名作サスペンス。地方検事の選挙戦の最中に、美しい検事補が自宅で全裸の絞殺死体で発見され、主人公のサビッチ主席検事補もその捜査に乗り出します。しかし被害者と愛人関係にあったサビッチは、捜査を深めるに連れて自身に容疑がかけられていくのに気づいていきます。物語のあらゆる部分に張られた伏線が、クライマックスに向けて見事に回収されていく様には鳥肌すら覚えるはず。

7. 『極大射程』

著者:スティーヴン・ハンター 訳:佐藤和彦

51IvJE1-6kL._SX353_BO1,204,203,200_
画像出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4594068510

ベトナム戦争で伝説的な功績を残したスナイパーが主人公ボブ・リー・スワガーが繰り広げる、ガンアクションサスペンス。アーカンソーの山中でハンターとしてひっそりと暮らしていたボブは、とある組織の陰謀と権力渦巻く世界へと引きずり出され、持ち前のスナイパーテクニックで死地を乗り越えていきます。特筆すべきは銃と銃撃戦の描写。活字でここまでど迫力の戦闘を描いた小説はそうは見つかりません。

8. 『華氏451度』

著者:レイ・ブラッドベリ 訳:伊藤典夫
51hIzCt6DuL._SX335_BO1,204,203,200_

画像出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4150119554

紙の発火点「華氏451度」をタイトルに持つ、書物から情報を得ることがタブーとされる未来の物語。主人公モンターグはタブーとされる書物を昇火器で焼き尽くすのを生業とする昇火士(ファイアマン)の一人でした。しかし彼はあることがきっかけで書物の味を知ってしまい、そこから転がり落ちるように彼の人生は劇的な変化の渦に巻き込まれていきます。ブラッドベリが当時アメリカを席巻した「赤狩り」という思想統制に対抗して書いたと言われるSFの傑作です。

9. 『ダ・ヴィンチ・コード』

著者:ダン・ブラウン  訳:越前敏弥
41KrlBQhC4L._SX350_BO1,204,203,200_

画像出典:http://www.amazon.co.jp/dp/B00FSAHHMG

キリストの時代以来とある秘密結社が守り続けてきた秘密が、閉館後のルーブル美術館で起きた殺人事件をきっかけに紐解かれていく、日本でも絶大な人気を集めたミステリー小説。謎を追う中で「モナリザ」や「聖杯」という西洋の文化と骨がらみのモチーフを次々と再解釈し、奇想の西洋史を再構築していくその手法は、荒俣宏氏や養老孟司氏も絶賛しています。

10. 『アラビアの夜の種族』

著者:古川日出男
51fhHEUIKBL._SX358_BO1,204,203,200_

画像出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4043636032

聖遷歴1213年のカイロに攻め入ろうとするナポレオン艦隊に対抗する唯一の手段が「読み始めたら面白くて止められない本、災厄の書」。これをナポレオンに贈る、というところからこの本ははじまります。そのあとは「劇中劇」「書物中書物」という形式で、極上のファンタジーが展開されていきます。全3巻の大部な作品ですが、それこそナポレオンが「ちょっと家に帰ってゆっくり読みたい」と言いたくなるのも納得の面白さです。

11. 『白夜行』

著者:東野圭吾
41AIkZpYTGL._SX353_BO1,204,203,200_
画像出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4087474399
舞台化、テレビドラマ化、映画化とあらゆるメディアミックスが行われた東野圭吾の傑作ミステリー長篇。1973年大阪のビルで一人の質屋が殺害されるところから物語ははじまります。

主人公である被害者の息子とヒロインである「容疑者」の娘の周囲で次々と起こる怪事件もさることながら、この物語最大の謎は一切描かれない二人の心情・内面です。いったい彼らは何を思い、何を考えるのか。他の登場人物と一緒にそれを類推するのもこの物語の醍醐味の一つです。

12. 『不夜城』

著者:馳 星周

画像出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4043442017

517WAN5D4CL._SX331_BO1,204,203,200_
金城武主演で映画化もされた、新宿のアンダーグラウンドを舞台にしたクライム・ノベル。登場人物全てが「真っ黒」、友情も愛情も仁義も心情も生き残るためなら全てを偽り、売り飛ばす、そんなハードな世界観をこれでもかというほど描ききっています。いわゆるみんなが善人になっておめでとう、的なハッピーエンドに飽き飽きした人におすすめの1冊です。

13. 『虐殺器官』

著者:伊藤計劃
41prk9iwXpL._SX336_BO1,204,203,200_

画像出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4150309841

「ゼロ年代SFベスト」国内篇第1位を獲得した著者のデビュー作。アメリカを中心とする先進諸国は厳重な個人情報管理システムを構築し、徹底してテロの脅威に対抗している近未来が舞台です。主人公であり、アメリカ情報軍所属のシェパード大尉は、後進国で虐殺を扇動しているとされる「ジョン・ポール」なる人物の暗殺を命令されますが、実在しているのかすら不確かなその影に翻弄されていきます。謎に次ぐ謎を追いかけているうちに、いつの間にやら朝になってしまうこと請け合い。

14. 『煙か土か食い物』

著者:舞城 王太郎
31NVD9BK8ZL._BO1,204,203,200_

画像出典:http://www.amazon.co.jp/dp/406274936X

第19回メフィスト賞を受賞した「圧倒的文圧」で知られる著者の衝撃的デビュー作。救命外科医・奈津川四郎を探偵役に繰り広げられる息もつかせぬ犯罪と暴力が織りなす物語もさることながら、スピーディな言葉の弾幕が病みつきになること間違いなしです。文庫版の帯文は「これが噂のMaijoだ」。

15. 『ハサミ男』

著者:殊能 将之
51P9BTYWETL._SX336_BO1,204,203,200_
画像出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4062735229
研ぎあげたハサミを殺害した美少女の喉元に突き立てるシリアルキラー「ハサミ男」。2人の美少女を殺した後、3人目の犠牲者を決めますが、ことに及ぶ前に何者かに殺されてしまいます。しかも、自分と全く同じ手口で。

「ハサミ男」が犯人だと囃し立てるマスコミを尻目に、誰が真の犯人なのかを調査しはじめるシリアルキラーの動向と、随所に散りばめられる警察の調査の描写がハラハラドキドキする傑作長編ミステリーです。

16.『同姓同名小説』

著者:松尾 スズキ
41B810PQP8L._SX319_BO1,204,203,200_

画像出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4860520092

広末涼子に小泉孝太郎、保田圭に荻野目洋子、そしてみのもんた……と同姓同名の人物たちが繰り広げる、抱腹絶倒の喜劇。しかし同時に「みのもんた」が公園で仲良くなったフリーターにこぼす「俺が一言言ったら全国のココアがなくなったんだよな……」というもの寂しげな台詞には芸能人だからこその哀しみが漂っています。喜劇でありながら悲劇。そんな悲喜こもごもの人の生を上質なパロディで描いた作品と言えます。

17. 『告白』

著者:町田康
41WzbGGFw+L._SX346_BO1,204,203,200_

画像出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4122049695

実際に起きた大量殺人事件「河内十人斬り」をモチーフに、「人はなぜ人を殺すのか」という永遠のテーマに迫った谷崎潤一郎受賞作。思弁家ゆえに周囲とうまくコミュニケーションが取れない主人公熊太郎は、自分をコケにしてきた親族たちの大量殺人を計画します。重々しいテーマながら、物悲しさの中に吹き出すような滑稽な描写も数多くあり、いつのまにかに引きこまれていく不思議な作品です。

18. 『邂逅の森』

著者:熊谷達也
51Blpz1fXZL._SX345_BO1,204,203,200_

画像出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4167724014

直木賞・山本周五郎賞をダブル受賞した史上初の作品。失われつつある日本の風土を克明に描いた秋田のマタギの物語で、山と人間、熊とマタギといった文明が忘れそうになる関係性を見事に表現しています。特に熊を狩るシーンなどは目の前に映像が浮かぶような迫力ある筆致で、肌がひりつくような緊張感すら抱きます。

19. 『溺レる』

著者:川上弘美

41ZSTF0YQ6L._SX326_BO1,204,203,200_

画像出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4167631024

女流文学賞・伊藤整文学賞受賞作。ダメな男とのカラダの関係に溺れ、どこまでも二人で「何かから逃げる」旅を続ける表題作をはじめ、どこかもの悲しい、それでいて刹那の恋愛を愛おしむような珠玉の短編が収録された1冊です。204頁と小さな本ですが、読み終わった後も静かな夜の空気の中で物思いにふけりたくなる作品。恋の酸いも甘いもちょっとわかったような気がし始めた大人の女性におすすめです。

20. 『ドゥームズデイブック』

著者:コニー・ウィリス 訳:大森望
516WN9TRW4L._SX335_BO1,204,203,200_

画像出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4150114374

ヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞トリプル受賞作。歴史研究のために中世にタイムスリップすることができる近未来が舞台。現代と中世で並行して発生するパンデミックを軸に、精緻な描写でそれぞれの世界を描くのは、さすがSFの大家ウィリスというところです。また出て来る電話が固定電話だったり、タイムマシンの精度がやたらと悪かったりなど、SFなのに未来化し切っていない描写を楽しむのも本書の楽しみ方の一つ。

21. 『ハイペリオン』

著者:ダン・シモンズ
615N0FCW5YL._SX332_BO1,204,203,200_
画像出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4150113335
ヒューゴー賞、ローカス賞受賞作。28世紀、人類は地球を捨て200にも上る惑星を転移網で結び連邦を形成している時代の物語。辺境の惑星「ハイペリオン」で人類の畏怖と信仰の対象となっている<時間の墓標>と怪物シュライク、迫り来る宇宙の蛮族「アウスター」、そして選ばれた「最後の巡礼」の7人が抱えるそれぞれの宿命など、設定だけでもワクワクするような、正統派SFです。

22. 『ブラック・ジャック・キッド』

著者:久保寺 健彦

51uPQ9xRTwL._SX298_BO1,204,203,200_
画像出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4101354669

ドラマ原作大賞選考委員特別賞、パピルス新人賞、第19回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作。手塚治虫の名作『ブラック・ジャック』に憧れて、「患者」を探し団地を駆け巡る小学生の和也が主人公です。そんあ和也にのしかかる両親の離婚、転校、いじめ。子供らしい夢と現実の織りなす苦い感覚を、健気に生きる和也少年の姿を通して描いた青春小説です。

23. 『すべてがFになる』

著者:森博嗣
41vAbauP0TL._SX353_BO1,204,203,200_

画像出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4062639246

第一回メフィスト賞受賞作。密室から飛び出した死体、孤島のハイテク研究所、探偵役の建築工学助教授、その研究室の美少女お金持ち学生といったありがちな設定に、読者を翻弄する数理的なトリックや推理を持ち込んだ発表当時センセーショナルを巻き起こした推理小説です。その謎解きもさることながら、登場人物の軽妙かつ深遠な会話もこの作品の大きな魅力の一つです。

24. 『比類なきジーヴス』

著者:P・G・ウッドハウス 訳:森村たまき
51ZTATW853L._SX345_BO1,204,203,200_

画像出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4336046751

イギリスの名ユーモア作家が描く、抱腹絶倒の短編集。原書は1923年にイギリスで出版されています。ぐうたらでダメダメな若旦那のバーディーと、執事としても優秀でかつトンチもきくというジーヴスのコンビが、出版から90年経った今でもしっかり爆笑させてくれます。国書刊行会が数多く出ている「ジーヴス」シリーズを翻訳してくれているので、はまればどんどん読み進められますよ。

25. 『まほろばの王たち』

著者:仁木 英之
51rRSFMgQeL._SX349_BO1,204,203,200_

画像出典:http://www.amazon.co.jp/dp/4062188287

大化の改新の時代を舞台に、権力を拡大しようとする朝廷と、山の神々とそれを信奉する山の民たちとの戦いを描いた、ジブリの映画『もののけ姫』を彷彿とさせる作品。中大兄皇子や役小角、中臣鎌足など歴史上に実在した人物なども物語に織り込まれているので歴史好きなら間違いなく楽しめる1冊となっています。

まとめ

上記の25選には入れませんでしたが、以下の5冊もおすすめです。

『ベルカ、吠えないのか?』 古川日出男
『漂泊の牙』 熊谷達也
『ハーモニー』 伊藤計劃
『センセイの鞄』 川上弘美
『ねじまき少女』 パオロ・バチガルピ 訳:田中一江、金子浩

興味の湧いたものはもちろんですが、「あんまり興味ないなあ」と思ったものでもぜひ一度は手に取ってみてください。それまで読んでいなかったジャンルでも、良質な作品を読めばきっと「面白い」と思えるはず。ここで選んだ25冊+5冊はそんな作品ばかりです。ただし何度も言うようですが、手に取るのは必ず次の日が休みの時にしてくださいね。もし仕事に支障が出ても責任は取れませんから……。

[文]鈴木 直人/頼母木 俊輔 [編集]サムライト編集部

iStock_000066346569_Small