断る力を身につければ人生はうまくいく

また、断らなかったんですか?

「困った人を見ると(たとえやりたくなくても)助けてしまう」「頼られると(たとえやりたくなくても)断れない」私たちは「良い人」だと思われたいがために、ついつい人の相談や頼みを断れないことがあります。

しかしこれを繰り返していると、どうにも自分の精神力や体力ばかりが削られて、充足感が得られないという状態に陥ってしまいます。これを解決するには「良い人」をやめ、断る習慣を身につけなくてはなりません。ここでは断らない習慣がもたらす自分の不幸と、その習慣を捨て断る力を手にいれる方法を解説します。

断らない習慣は「自分」を殺す

目の前にある毒を飲めと言われて、断らない人はいないはずです。ビルから飛び降りろ、と言われて「わかりました」という人もいません。このようなケースでの「ノー」と、やりたくないと思っている頼み事に対する「ノー」の間には、実は本質的な差はありません。なぜならどちらも「自分」を殺して、相手の意向に沿う行為だからです。

・この書類、片付けておいて。
・今日の合コン、来れるよね?
・残業代は出ないけど、君にしかできない仕事なんだ。手伝ってくれよ。
・借金の保証人になってくれ。お前しか頼れないんだよ。
・君は私の言うことを聞かなければならない。わかるね?

こうした相談事や頼みごとに「ノー」と言えないならば、それは「良い人」という薄っぺらい称号のために、自分で自分を殺していることの証拠です。だからこそ精神力や体力、あるいは時間がどんどん減っていくのに、自分自身への報酬はといえば相手からの「ありがとう」だけ。これでは人生がうまくいくわけがありません。

大切なもの以外には「ノー」と言う

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●あなたの大切なものは何か?

「ノー」と明確に断るためには、それよりも大切なものを自分の中に持っておく必要があります。

例えば「そのステーキの最後の一切れ、ちょうだいよ」と言われて「うん、いいよ」と言うのは、ステーキの一切れを食べることで満たされる自分の心身よりも、それを相手に与えて得られる人間関係が大切だからです。

しかし実の子の身代金として1,000万円要求されたとしたら、何が何でも1,000万円をかき集めて子供を取り戻そうとするはずです。これは1,000万円よりも実の子の方が大切だからです。

あらゆる対象・状況に対して、「自分にとって大切なものは何か」をはっきりさせておけば、それを侵害しようとするものに対してきちんと「ノー」と言えるようになります。

●大切なものを見つけるエクササイズ

『人生がうまくいく人の断る力』の著者の一人、ジェームズ・アルタッカー氏は、自分の心の健康を維持するために次の5つの項目を基準として設定しているそうです。

1.この習慣の邪魔になるようなことは、どれほど重要であるように見えても「ノー」と言う。
2.毎日、静かに座る時間をもつことを妨げるものには「ノー」と言う。
3.テレビやインターネットのニュースを見ない(人間の考え方は精神的に“食べた”ものでできている)。
4.自分を敬ってくれないとわかっている人や見下す人とは話さない。
5.人と言い争わない。時間とエネルギーの節約になるなら「そのとおりですね」と言っておけばいい。
引用:『人生がうまくいく人の断る力』p40

大切なものを見つけるにはこのような基準を自分の中にも設けておくことです。これは人生にとって非常に大切な基準です。時間を設けて、じっくりと考えてみましょう。「この習慣の邪魔になるようなことは、どれほど重要であるように見えても『ノー』と言う」とはっきり明示できるような基準ができあがれば、すでに「断る力」はかなり強くなっているはずです。

「自分」をエイリアンの目から見直してみる

Man about to be abducted by aliens
大切なものは何かと考える時に、一番最初にするべきは「自分の声」を聞くことです。自分から出発しなければ結局人生を他人のために生きることになります。だから、何よりも先に自分の声に耳を澄ませなければなりません。

しかし「良い人」として振舞っていた期間が長いほど、他人に人生を食いつぶされる癖がついてしまっています。この癖がつくとなかなか自分の声を聞き分けられません。そこで『人生がうまくいく人の断る力』が提案するちょっとした思考実験をやってみましょう。それは自分の体に乗り移ったエイリアンの視点から、自分を観察するという思考実験です。

これは朝起きた時、できれば早朝に試すのがベストです。目覚めたらまず「この体の持ち主は誰だ?」と問うてみます。さらに「体のどこかに不具合はないか」「何かストレスに感じていることはないか」あるいは「何を楽しい・気持ち良いと思い、どんなことに幸せを感じるのか」と問うてみましょう。エイリアンは生き残るために体の持ち主の心身を健康に保たなければなりません。それを実行することが自分を助けることにもなります。

さてエイリアンであるあなたはどう行動するでしょうか?その時選んだ行動が「自分の声を聞く」ということです。

断る力をさらに磨く3つのエクササイズ

最後にさらに断る力をアップさせる3つのエクササイズを紹介します。ぜひ実践して、自分を守るために「ノー」という習慣を身につけましょう。

1.自分をネガティブするものの正体に気づく。

→例えば「怖いニュース」「嫌な噂話」」「自分を含む他人をけなす人」「過去や他人の感情など変えられないものについての心配や不安」など。それらに気づくだけでも、大切なものとそうでないものの区別がつきやすくなり、断る力が磨かれます。

2.一日のうち「ただ座るだけ」の時間を作る。

→瞑想やヨガでも良い。時間は5分や10分から始め、徐々に長くしていきましょう。人間の頭は一日に7万ものことを考えるとされています。この溢れ出す思考にいちいち対応していては、肝心な時に「ノー」と言うための判断力が鈍ってしまいます。それを防ぐために「ただ座るだけ」の時間を設け、「考えないこと」ができるようになっておきましょう。

3.大切な人間関係をピックアップする。

→週に5回以上なんらかの関わりを持つ人たちの名前を挙げ、その人との関係を10段階評価してみましょう。その時の基準は「信用することができるか」「相手の言葉に耳を傾けたくなるか」「自分らしくいられるか」「自分の空間や距離感を尊重してくれるか」の4つ。評価が8未満の人とは少し距離を置き、5未満の人とはもっと距離を置いてみます。するとどの人間関係を優先し、どの人間関係に「ノー」と言うべきかがはっきりしてくるはずです。

「良い人」をやめて、自分を解き放て

「ノー」と言う習慣が身につくと、逆に「何にイエスと言うべきか」がはっきりしてきます。さらに、これまで断れなかった様々な物事が視界からなくなるので、自分らしくいられる「イエスと言うべきもの」が見つけやすくなり、どんどん人生が好転し始めるでしょう。さあ一刻も早く「良い人」をやめて、断る習慣を手に入れて、自分を解き放ちましょう!

参考文献『人生がうまくいく人の断る力』
Career Supli
人生の中で本当に大切にするべきものは少数です。
[文・編集]サムライト編集部