本気で変わりたかった自分は変えるな!住む場所を変えよう

決意を新たにするな

人間が変わる方法は3つしかない。1番目は時間配分を変える。2番目は住む場所を変える。3番目はつきあう人を変える。この3つの要素でしか人間は変わらない。最も無意味なのは『決意を新たにする』ことだ。

世界的な経営コンサルタントとして名高い大前研一氏はこのような名言を残しています。同氏は別の発言で最も効果的な方法はこのうち「時間配分を変える」であると言っていますが、時間配分を変えるとなるとライフスタイルそのものを変えることになります。

また3番目の「付き合う人を変える」というのも現実的にはかなり難しい。しかし2番目の「住む場所を変える」なら、マイホームを持っているのでもない限り、比較的手軽にできそうです。そこでここでは「空間がライフスタイルに与える影響」について考え、人生を変えるためのヒントを紹介したいと思います。

「ヘヤカツで人生を変えよう!」岩崎夏海氏

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『もし高校野球のマネージャーがドラッガーの「マネジメント」を読んだら』で一躍有名になった岩崎夏海氏ですが、近年は「ヘヤカツ」提唱者として活躍しています。ヘヤカツとは「部屋を活かす」という意味。これは岩崎氏自身が経験した「住む場所を変えたら人生が変わった」という体験に基づく部屋作りのメソッドなのです。

岩崎氏はかつて実家の3LDK一戸建てに一人で住んでいた時期がありました。しかしそこでの生活はとても部屋を活かすという状況ではなく、自分自身を「片付けられない人間」と考えていたそうです。

しかし仕事の都合などで思い切ってワンルームマンションに引っ越したところ、無駄なものを置いたり、自分の把握できないものなどがなくなり、一気に住みやすくなったのだと言います。

人生を変えるためのヘヤカツメソッド

ヘヤカツのポイントは部屋に3つの大きな「道」を作り出すこと。その道とは「掃除」「洗濯」「食器洗い」の3つです。道は「動線」と言い換えてもいいでしょう。

つまり掃除をしやすいようなものの配置、洗濯がしやすいようなものの配置、食器洗いがしやすいようなものの配置を作るのです。すると自然に環境が整い、日々の生活が安定し始めるのです。

「オフィス空間をデザインする」チームラボ

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出典:チームラボ

チームラボ株式会社はプログラマやエンジニア、数学者に建築家、アニメーターに絵師などあらゆる分野のスペシャリストが集まっている「ウルトラテクノロジスト集団」です。この企業の一事業に「チームラボオフィス」があります。この事業のコンセプトは「情報社会のためのオフィス空間」。高度なインターネット社会が普及してきた中で、「従来通りのオフィスで仕事をしていていいのか?」という疑問を投げかけます。

この場合の「従来通りのオフィス」とは個人が個人の机で集中して仕事をし、なるだけ無駄のない動きをすることで最大限の利益を生もうとするためのものです。しかし昨今は「もっとコミュニケーションを活発にしたい」「自由な意見交換ができるようなオフィスしたい」という要望が増えているのだとか。

これを実現するためにチームラボのオフィスでは自社オフィスで実験的な試みを行っています。例えば、会議室の囲いをなくして周りの話があえて聞こえるような環境をつくったり、心理学的にコミュニケーションを生みやすいとされている「黄色」をあちこちの壁紙などに利用する。

あるいはトイレの導線上にコピー機とコーヒーメーカーの置かれた休憩スペースを設置して、目的も部署も違う人たちが「なんとなく」雑談をする場所を作るといったものです。このように空間とクリエイティビティには大きな関連性があります。

「縁側がつなぐ人と人」松岡正剛

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ネットワーカーとは縁側をつなぐ人々のことである。どんな縁側がそこにたちあらわれているかということが、ネットワーカーの条件なのである。
出典:『フラジャイル』松岡正剛著

日本文化研究の大家であり、編集工学研究所を主宰する松岡正剛氏は「縁側」と「ネットワーク」をこのような言い方で表現します。縁側とは日本に特有の建築様式で、家の中のようで中ではなく、しかし外のようで外でもないという非常に曖昧な場所です。

その境界線の上ともいうべき場所では昔から子供達からお年寄りまでが交流するスペースとなっていました。松岡氏が『フラジャイル』という本の中で紹介しているのは自分自身を縁側とした歴史上の人物たちですが、この表現を借りるのであれば「縁側こそがネットワークを生み出す空間なのだ」ということができます。縁側のある家に住むのは難しいかもしれませんが、外のようで外でもないという非常に曖昧な場所は、意識をすればつくることができるかもしれません。

最後に

マクルーハンはかつて「メディアはメッセージである」という言葉で、メディアそれ自体がある種のメッセージをすでに含んでいると言いました。もし生活環境をメディアとするならば、それ自体にメッセージが含まれていて、私たちは気づかないうちにそのメッセージを受け取り、その影響を受けて暮らしているということになるのかもしれません。

部屋を活かし、生活を活性化させるヘヤカツを提唱する岩崎氏。オフィスデザインを考え直すことでコミュニケーションを活発化させ、新しい仕事のあり方を提案するチームラボ。そして縁側のネットワーク性を示唆する松岡氏。これらの三者はいずれも空間・環境がライフスタイルに及ぼす影響を指摘しています。あなたは自分が住む環境からどんな影響を受けたいですか?

[文・編集] サムライト編集部