「身銭を切る」機会が減ってしまった現代
近ごろ 、今までは有料で提供されてきたモノやサービスが、無料で提供されることが増えました。ネットでもリアルでも、「無料提供」「無料体験」の文字を見かけない日はないほどです。
その結果、起きているのが「身銭を切る」機会の減少です。「身銭を切る」という言葉の辞書的な意味は、「自分のお金で支払いをする・自腹を切る」。
しかしこの言葉にはそれ以上に、「リスクをとってお金を使う」というニュアンスがあります。
「お金がかからないなら、それはいいことじゃないか」と思うかもしれません。しかし身銭を切ってモノやサービスを買うことには、実は使う金額以上のメリットがあるのです。
これを知っているのと知らないのとでは、生きたお金の使い方ができるかどうかという点で、大きな差が生まれます。
以下ではリスクを背負って自分のお金を使うことのメリットを3つ紹介していきます。
身銭を切ることで得られる3つのメリット

身銭を切ることで得られるメリットは、以下の3つです。
・質の高いモノ・サービスを体験できる
・成長できる
・新しい出会いを得ることができる
これらのメリットはいずれも、身銭を切らなくては得られないというわけではありません。「無料提供」「無料体験」や、とても高価なモノ・サービスの「レンタル」「お試し」「サブスクリプションサービス」 で得られることもあります。
しかし身銭を切ることで、得られる可能性が格段にアップするというのは確かです。それはなぜなのか。以下で1つずつ説明していきます。
質の高いモノ・サービスを体験できる
リスクを背負ってお金を使うとなれば、大なり小なり迷いが生まれるものです。その迷いを乗り越える過程で、人はさまざまなことを考えます。
今の自分にとって必要なモノ・サービスは何なのか。自分は目の前のモノ・サービスを買うことで、どうなりたいのか。ほかに代わりはないのか。今お金を使うのは、自分にとって失敗につながらないか。
たとえば「仕事への気合いを入れるために20万円のスーツが欲しい」と思ったとして、以下のような考えが頭をよぎるかもしれません。
・スーツを買うよりも、オンラインサロンに入会した方が仕事にも気合いが入るうえ、安く済むのではないか。
・そもそも今の仕事を無理に頑張るよりも、転職活動をした方がいいのではないか。
・目の前の20万円のスーツよりも、ほかの店の20万円のスーツの方がいいのではないか。
・20万円のスーツよりも、30万円のスーツの方がいいのではないか。
・20万円のスーツを買ったにも関わらず、まったく仕事に気合いが入らなかったらどうしよう。 など。
これらの問いについて納得するまで考え、1つずつ自分の中で答えを出していくと、必然的に「自分にとってより良いスーツ」にたどり着くことができます。
このように、自分が「今これにお金を使うべきだ」と納得するまでじっくり、慎重に考えることで、質の高いモノ・サービスを手に入れたり、体験したりできるようになるのです。
成長できる
身銭を切るという経験の積み重ねは、ビジネスマンとして、人間として自分を成長させてくれます。その理由は大きく2つあります。
1つは、質の高いモノ・サービス=レベルの高い仕事に触れる回数が増えれば、自分の仕事にも好影響が出るからです。
たとえばミシュランガイドで3つ星評価を受けている京都の老舗旅館に宿泊すれば、世界トップレベルのサービスを受けることができるでしょう。
言葉遣いや仕草、会話の仕方や心の配り方など、自分がどんな仕事をしていても一流から学べることはたくさんあります。
もう1つの理由は、失敗するからです。
身銭を切るにあたっては、自分が納得するまで考えたら、あとは思い切りよくお金を使う必要があります。
ビジネスの世界では「計画は悲観的に、実行は楽観的に」と言われることがありますが、身銭を切る時も考え方は同じです。
しかしリスクをとる限りは失敗する可能性があります。そのため身銭を切る経験を重ねるほど、お金の使い方で失敗する回数も増えてしまいます。
たとえば「意気込んで予約したホテルのサービスが最悪だった」「オンラインサロンのメンバーのレベルが高すぎて、高い入会費を払ったのにまったくついていけない」といった具合です。
しかしじっくり考えた挙句、高いお金を払って失敗した時、人は「どうすれば次はこんな失敗をせずに済むのか」と必死になって考えます。
時間だけでなく、お金もかかっている分、失敗から学ぶことに貪欲になるのです。
新しい出会いを得ることができる
身銭を切るということは、すなわち「参加者」になるということです。
すると作り手や売り手、ほかの買い手との間に同じ参加者としての連帯感が芽生えるので、身銭を切ると新しい出会いを得ることができるのです。
たとえば「堀江貴文イノベーション大学校」のように月会費が1万円以上にもなれば、「身銭を切っている=参加者である」という感覚が強くなります。
結果としてモチベーションが上がり、新しい出会いにつながっていきます。
これは寿司屋などでも同じです。
予約が取れないような寿司屋に行って数万円のコースを食べれば、寿司を握る板前さんやほかのお客さんと同じ参加者になれます。
そこで板前さんやお客さんとのコミュニケーションが生まれ、新たな人間関係につながる可能性は十分あります。
ただしここで注意するべきは、お金を払うことで人間関係が構築できるというわけではない、という点です。
身銭を切ることを通じて新たな出会いを得るには、人とのつながりに注目してお金を使わなければなりません。
たとえば通販でスーツを買った場合、それがどんなに素晴らしいスーツでも、そこには人とのつながりはありません。
自分の気に入ったスーツを、自分で「買い物かご」に入れ、サイト上で電子決済を済ませて、あとはダンボール箱の中身さえ知らない配達員が家にもってくる……これでは新しい出会いが得られるはずがありません。
オーダースーツなのであれば、店員さんと一緒になって「ああでもないこうでもない」と考えたり、ほかのお客さんに相談してみたり……そうやって人のつながりのなかで身銭を切るからこそ、人間関係に発展する のです。
したがって、どうせ身銭を切るのであれば、できるだけたくさんの人と関われる場面を選ぶようにしましょう。
金は天下の回り物

人生100年時代と言われる現代において、お金は確かにとても大切です。しかし大切だからといって、後生大事にもっているだけではお金が死んでしまいます。
それでは「傷がついたら嫌だから」と、せっかく買ったスーパーカーをずっとガレージに置いたままにしているのと同じです。
スーパーカーを走らせなければ意味がないのと同じように、お金も使わなければ意味がないのです。
ここで紹介した身銭を切ることの3つのメリットと、そのメリットを最大限にすること を意識して、積極的にお金を使ってみてはいかがでしょうか。
