ネットのつぶやきが国の「情報リテラシー」の収集対象に!?

発足した「国際テロ情報収集ユニット」の情報リテラシーとは?

8日に発足した「国際テロ情報収集ユニット」は、地球規模で拡散する国際テロ組織の動向を捉える“耳”の役割を果たす―というものです。

「耳の役割」とは、「目的に応じて散在する情報の中から必要な情報を収集・整理して、目的に応じて能力を発揮する情報リテラシーのことです」(社会部記者)。

活字だけではなく様々な情報源を効果的に利用、巷にあふれるインターネット情報も分析の対象に、収集活動はあらゆる情報に〝耳をそばだてる〟のが目的。

情報の収集や分析の意味では、キャリアサプリ9/3付で掲載したネット時代の「メディアリテラシー」や「コンピュ―ターリテラシー」と関連する領域です。

ただ今回発足した「国際情報収集テロ・・」は、国の機関が行う情報リテラシーだけに、「テロ対策を前面に押し出し、ある種の緊張感や恐怖感が漂います。しかも調査はあらゆる発信源を対象に主体的に選別する訳ですから・・」(同)。

情報化時代に「情報リテラシー」のスキルが重要な訳

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前掲(9/3付)したタイトル「その情報ホント? ネット時代のメディアリテラシー」では「その情報はウソかホントか?」、「その発信は誰のものか?」―などネット時代に溢れる情報の接し方や、見極め方などを論考。「情報の海から必要な情報だけを抜き出す能力」を検証し、読者へのアドバイスもされていました。

「情報リテラシー」も情報の収集や整理、選択などではメディアリテラシーと同じスキルです。しかし「前提条件がテロ対策の強化、しかも水際対策の拡充。実行主体は国家権力ですから極端な話〝なんでもあり〟です」(メディア評論家)。

もともと「情報をいかに使いこなすか」と、欧米を軸に各国ではアカデミックな分野での研究がなされていたようです。メディア評論家によれば「情報リテラシー」の骨格は欧米の研究成果や日本的概念によるスキルから成り立っていると分析。情報を使いこなす能力やシステムに直結していると指摘しています。

1.情報の必要性を知る、2.情報の出所(発生)、流通・収集をする方法やシステムをつくる、3.情報(源)をつきとめアクセス、接触を図る、4.情報を引き出し内容や意図を探る、5.情報をシュミレーションし、類似している情報のチャンネルを探る、6.入手した情報を加工、問題点を整理し評価、情報を共用する。

情報を主体的に選択、収集、分析、活用、発信する具体的なスキルを持つか。そのためには通話やメールを傍受する手法も必須条件、個人も対象になります。

情報収集はリアルタイムで情報が世界を駆け巡るネットが標的!

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当初「国際テロ情報収集ユニット」は、伊勢志摩サミット開催前の来年4月に新設される予定でした。ところが11月13日にパリ同時多発テロが発生し、前倒しの設置となったと見られています。政府関係者には緊急発足との声も。安倍首相はそれだけ危機感を持って立ち上げたようです。情報の専門官などは「国民レベルでの情報リテラシーの学習が必要と認識しています」(社会部記者)。

ISなどのテロ集団の犯行声明や予告が、ネットを通して世界中に発信されていることは、国内の情報機関もウオッチしています。ネット情報の収集や分析、誰がどんな情報を発信しているか。ネットは空中戦や心理戦の様相を呈する戦場になっています。日本も今年二人の犠牲者を出した時点で、すでに情報戦の渦中にあるのです。PCや端末機があればキーボードを叩くだけでサイバー攻撃を仕掛けたり・・・他国の工作員の動きも気になります(シンクタンク研究員)。

なんだか発信力のアップや、企業のオウンドメディアとしてのコンテンツ力強化など、ネットツールの様々な有効活用に水をさすようにも聞こえます。

「そうした懸念に情報リテラシーのスキルが重要視されるのです。ネットの自由な発言と、その発言を監視するリテラシーは両刃の剣なのです」(社会部記者)。

これに関連して軍事情報専門の雑誌記者は、こんな興味深い発言をしています。

ネットには意味不明なつぶやき、符丁や暗号めいた記号で溢れています。これをカテゴリーごとに体系づけるのは大変な作業です。しかしテレビの視聴率が分かるアプリが開発されて状況が変わりました。視聴者の視聴動態が判別でき、スポンサーや代理店に役立っています。このことが分析アプリの開発に期待を抱かせました。膨大な情報から危険を察知するアプリを開発するのは可能か。すでに情報の耳は最前線で稼働しているのではないか、との声すら聞かれます。

ネットはテロと命のやり取りをする、極めて危険な戦場になってしまったのか。これまでも匿名性を悪用した人権侵害をはじめ、ネット犯罪が多発しています。

高度な「情報リテラシー」でマイナンバーなど個人情報は安全か?

そもそもWikipediaによれば、「情報リテラシー」とは、情報(information)と識字(Literacy)を合わせた言葉で、情報を自己の目的に適合するように使用できる能力としています。本来、個人用のスキルアップが目的だったようです。

前述したスキルは個人の能力アップのための基準と見なされています。ところが「情報リテラシー」を国家権力、とりわけ安全保障の観点から見ると、情報機関のスキルとして操作され、さらに理論武装やシステム化されることになります。いま究極の個人情報「マイナンバー」をどう守るかが課題になっています。プライバシーの死守と、個人情報への不正侵入や入手にどう対処するか・・・

私達は国か個人か―という厄介でデリケートな問題に直面することになります。
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メディア評論家は「SNSの世界に正体不明の工作が増加してくる」と警告しています。高度情報化のすき間につけこんだ事件予測にはリアリティがあります。

■巧妙に仕組まれたテロ組織か某国のプロバガンダに興味を持ち、ネットで反応しているうちに「いいね」の数が増え、実体不明の絆が男を包囲し始めた。

■身辺の探りや男のなりすましが登場し、プロパガンダの発信者との交流がネット上で拡大。しかも男の個人情報が意図的にUPされ流出するようになった。

■どうも男のアカウント(ID)が知られてしまったようで、マイナンバーは大丈夫かと懸念。男の情報がアップされる頻度が増え、プレッシャーを感じ始めた。

■ある日、正体の分からない者がネットを通して、「お会いしたい」と言ってきた。工作員みたいだ。正体か発覚しても、別のアカウントで接触を図ってきた。
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「実話に近い事件予測だがセキュリティの問題も絡んでいる。ネット民が被害者になるか、逆に面白半分でシビアな情報に関わり、監視の網に引っ掛かるか。情報収集の対象になる可能性は大。テロ対策はそれほどシビア」と社会部記者。

「情報リテラシー」の習得は、SNS時代に自分を守るスキルかも知れません!

「情報リテラシー」から「インテリジェンスリテラシー」へ

安倍首相は「国際社会と連携した情報収集の強化が喫緊の課題」としています。
匿名性を利用した人権侵害など、ネット特有の犯罪やトラブルに加え、「安全保障を軸にした国の情報機関の戦場にSNSがなりそうだ」とはメディア評論家。

今回はビジネスパーソンがネットでの発信力やコンテンツ力UPと、「情報リテラシー」の関係を主題に取材を進めてきました。ところがそのネットが情報収集の対象となると、「ネットの闇を感じざるを得ません。ビルの屋上にアンテナが林立しているのも不気味。リテラシーの意味を再確認すべき」(社会部記者)。

「情報リテラシー」の先には「インテリジェンスリテラシー」があります。
どちらも情報を基盤にしていますが、「intelligence」は現実的には「諜報」というニュアンスで、軍事関係の用語として用いられることが一般的といいます。米「CIA」、英「MI6」の「I」はこの「intelligence」を表しているそうです。

そっと耳をそばだてている情報機関がネットの闇を暗躍しているのでしょうか。

[文]メディアコンテンツ神戸企画室 神戸陽三 [編集]サムライト編集部