ドルトムントをリーグ2連覇に導いた“最先端”脳活性化プログラム「ライフキネティック」を体験してみた!

世界に拡大中!ドイツ発祥の脳活性化プログラム「ライフキネティック」って知ってる?

日本では脳活性化トレーニングというだけでも様々な種類の運動・プログラムが実践されています。たとえば「脳トレ」。近年、3DSやスマホアプリなどで簡単に脳を鍛えられるミニゲームとして流行しました。

しかし、そういったゲーム中のトレーニングを行うことで頭を働かせることには繋がりますが、同じことを繰り返すことで頭が“慣れてしまい”、逆に脳を鈍らせてしまうという事実が発表されているのです。

そんな中、ドイツ発祥の「ライフキネティック」という最新の脳活性化プログラムが世界各国で導入され始め、現在日本でも徐々に普及され始めていることをご存知でしょうか?

そこで今回は、株式会社ウェルネスデベロップメントのライフキネティック公認マスタートレーナーである中川慎司さんに同プログラムの効果や脳活性化の理論を伺い、実際に体験させて頂いたトレーニングの一部を合わせて紹介します。

リヴァプール監督・クロップ氏も絶賛する「ライフキネティック」とは?

dsc_0019

―本日はよろしくお願いします。まず、ライフキネティックとは一体どういったプログラムなのでしょうか?

中川:ライフキネティックというのは、簡単な動きで脳を活性化させることを目的としたプログラムです。認知機能や学習能力、そして運動のパフォーマンス向上など、様々な効果を理論的に導き出したうえで成果へと繋げています。

ドイツで生まれたトレーニングですが、現在はスイス、フランス、イギリス、スウェーデン、トルコ、アメリカ、そして日本といったカタチで世界的に導入が進んでいます。

国内で有名なのは、皆さんご存知の通りドイツのサッカーリーグであるブンデスリーガの名門ボルシア・ドルトムントですね。

前監督のユルゲン・クロップ氏(現、リヴァプール監督)がテレビ番組でこのライフキネティックを見た時に「これだ!」と即導入を決意されたそうです。もちろん香川真司選手も実践していますよ。

また当時、ドルトムントをリーグ2連覇に導いた手腕を記した書籍の中でも、ライフキネティックのことについてこう書かれています。

「ライフキネティックは、複雑な課題を達成することにより脳の働きを高めるメソッドである」

引用:『ユルゲン・クロップ 選手、クラブ、サポーターすべてに愛される名将の哲学

―日本にあるような「脳トレ」といった従来の脳活性化トレーニングとは何が違うのでしょうか?

中川:まず、人間が普段送っている生活を例にお話しますね。私たちの生活というのは、いくつもの動作を同時に行うことで成り立っています。たとえば、今「ポケモンGO」で問題にもなっている「歩きスマホ」がありますよね?

この行動の中で何が起きているかというと、メールを見ているのであれば【文章を読む・内容を理解する・どう返信するか考える・足を動かす・人が来たら避ける・信号が赤なら止まる】など、一つの行動に様々な動作や判断が同時に行われているのが分かると思います。

ただ、“歩く”という無意識にできることに1つ動作を加えても脳に対する刺激が弱い。

そこでライフキネティックの考え方としては3つあるんです。ここからはスライドショーを用いてご説明しますね。

img_1720

1つ目は『予期しない運動』。これは、自分で「次はこういう動きをしなきゃいけない」といった判断ができない状態のことを言います。2つ目は『常に変化させる』。初めの『予期しない運動』に対して次に何がくるか分からないように動きを変化させます。

そしてこれを『楽しく継続できる』という3つを継続することによって、知らないうちにパフォーマンスの向上に繋がる。これがライフキネティックの考えの基となっているんです。

―なるほど。では、ライフキネティック自体は日本に導入されてからまだ1年程だということですが、中川さん自身がこのトレーニングに携わるようになった経緯を教えて頂けますか?

中川:はい。突然ですが「テルマエロマエ」ってご存知ですか?

―はい!古代ローマの浴場と日本のお風呂をテーマにした物語ですよね。阿部寛さんの存在感が物凄くて印象深いです(笑)

中川:そうですね(笑)。傷付いた兵士たちが温泉に入って体を癒す。あれは、ヨーロッパでは何百年も前から行われている温泉を使った「バルネオセラピー」、海水を使った「タラソテラピー」という医学的にも認められている療法なんです。

もともと当社は、温泉や海水等の自然資源や自然環境を活用して、薬などを使わず自分の力で健康づくりができる施設環境づくりやプログラムづくりを行ってきました。

このようなプログラムにより、杖をついて歩いていた方が杖なしで歩けるようになるなど、体はとても元気になるのですが、脳の衰えを予防することはできませんでした。

せっかく体が元気でも認知症になってしまいますと、外出できなくなってしまい、体の健康づくりも継続できなくなってしまいます。そこで何かないかと探していた時に、もともと温泉療法等の関係でドイツとのつながりがあったので、ライフキネティックと出会い、導入するまでに至ったんです。

それから日本で普及活動をしていくためにドイツと契約し、私はマスタートレーナーとなるにあたって、ドイツ本部でライフキネティック創設者であるホルスト・ルッツの研修を受けて参りました。

そういった過程を経て、昨年の4月から日本でトレーナーを養成するための講習会を開いたり資格認定をできるようになったのです。

―ということは、これから公認トレーナーを目指される方はドイツに留学しなくても資格を取得できるというわけですね?

中川:そういうことになります。日本でドイツのカリキュラムを全て受けることができるので、4~5日間講習を受けて頂くと、日本でトレーナーとして認定され、ドイツでも登録されます。

このような手順を踏んで頂くことで、日本でライフキネティックを指導できるようになるんです。

ライフキネティック・トレーニング“3つの柱”

img_1722

―それでは、具体的なライフキネティックのトレーニング方法を教えてください。

中川:まず、主な構成要素があるのでご説明します。先ほどお話の中で登場したホルスト・ルッツは、ブンデスリーガのマインツというチームでトレーナーをしていました。

選手たちのトレーニングの理論として取り入れていた中にはもちろん「運動学・トレーニング理論」、どこの骨にどういう筋肉が付いていてどのような動きをするかを教える「機能解剖学」、そして「最新の脳科学」が入っているのですが、もう一つ「視覚機能測定法」という理論があります。

目と脳がどういう関係性であるのか、あまりピンとこない方もいると思いますが、たとえば普段見ているテレビには色や文字が書かれていますよね?皆さんの目で見たものが脳の後方にある“視覚野”によってはじめて映像化されます。

なので、その視覚野が正しく機能しなければいくら視力が良くても何も見ることができません。色もハッキリしませんし、距離感も分かりません。

つまり、目というのは外の情報が入ってくる「受信機」の役割を担っているわけなんですね。

外部の情報を受信して、脳で処理されてはじめてどこに人やボールがあるとか、それがどれくらいのスピードでこちらに向かってきているのかが分かるんです。

スポーツで言うとすれば、サッカーなら上がってきたセンタリングに対して体を合わせる。野球なら飛んできた外野フライの捕球位置に足を合わせる。こういった行動は、目と脳がうまく連携していないとできないんです。

―なるほど。普通にやっているだけでは気付きませんでしたが、スポーツにおける一連のプレーの中には目と脳を同時に使った動きがたくさんあるんですね。

中川:そうなんです。では、このような要素を踏まえたうえで具体的なライフキネティックのトレーニングにある3つの柱を紹介しましょう。

img_1755

1つ目は『ボディーコントロール』と言って、体のコントロールやバランス、コンディネーションがメインとなっているトレーニング。2つ目は、先ほどお話した目の機能を改善させる『視覚機能』トレーニング。

そして最後の『認知機能』ですが、このトレーニングは基本的に単独で行うことはしません。何故なら、冒頭でお話しが出たように計算・記憶を繰り返すようなただの「脳トレ」になってしまうからです。

目いっぱい勉強しても本番で力を出せない子がいますよね?それは、覚えたことをとっさに出したりとか、必要な場面で発揮できるかといった認知機能による“引き出す能力”が足りないために起こります。

なので、この3つの柱が合わさって初めてライフキネティックのトレーニングと呼ぶことができ、学習能力や創造性が増すと言われる“ドーパミン”を高濃度に出すことにも繋がるのです。

老若男女ウェルカム!誰でも簡単にできる「ライフキネティック」を実践してみよう!

img_1771

中川:では、これからライフキネティックのトレーニングを皆さんで一緒にやってみようと思います。まず、少し間隔を開けながら円のカタチを作りましょう。

そしてこの赤いボールを「〇〇です」というように、自分の名前を言いながら誰かに投げてみてください。それだけで全員の名前を覚えることができます。

次に黄色いボールも加えるので、黄色の場合は“投げる人”の名前を言いながら投げてください。

img_1778

ただ、ボールが自分にまわってきたらすぐに他の方に投げてくださいね!
それに投げる方向ばかり見てると横からボールが飛んでくるかもしれませんよ!

img_1806

ほら!どんどん投げないとボールが増えていきますよ!(笑)

―ボールの色によって名前の言い方が変わるので意外と難しいですね…(笑)

img_1813

中川:では、最後に青いボールも加えて3色にします。青の場合は“次に投げてほしい人の名前”を言いながら投げてください。ボールを受け取った人は、その言われた名前の方に向かって投げるんですよ~。

img_1791

―3色のボールが目まぐるしく飛び交うので、どのボールで何を言えばいいのか混乱してきました…。

img_1807

中川:佐藤さん欲張りですね(笑)。さっきまでのスピードはどこへいったんですか~?

―脳をフル回転させているつもりなんですが…(汗)

中川:はい、結構です!皆さん、ボールが増えるに連れてどんどんゆっくりになってきているのが分かりますよね?それは、色に対しての指示を認知して覚えているのにとっさに出せなくなってくるから。しかも投げるだけじゃなくてボールを取らなくちゃいけない。つまり、目で見て色を認識して、その指示が何だったかを思い出して相手に投げるという動作を同時にやっているんです。

それに皆さん初対面なのに全員の名前を覚えて、失敗しても笑い合ってますよね?それがライフキネティックの“楽しい”部分なんですよ。だから間違えても「すいません」と謝らなくてもいいんです。

img_1741

今度は「エドゥ」というお手玉を使ってトレーニングを体験して頂きます。では、これを1人2つ持って顔のあたりまで投げてください。そこから手だけをクロスして入れ替え、お手玉をキャッチしてみましょう。

img_1820

―顔のあたりまで上に投げて…

img_1828

―手をクロスして取る!おぉ、最初は片方しか取れなかったけど、段々両手で取れるようになってきました。

中川:上手いですね~。でも、ボールを取るだけなのに、簡単そうに見えて脳の複数の部分を使ってるからけっこう難しいですよね?この2つのお手玉がどこに落ちてくるか、どれくらいのスピードで落ちてくるかを判断しながら手をもっていかないといけない。それを同時に行えないと、手だけクロスしてもキャッチすることはできないんです。

img_1857

では、最後に2人組になって、向かい合いながら2mくらい間隔をとってください。1組1個のエドゥを使います。そのお手玉を持っている方は相手の胸の真ん中に向かって山なりに投げるのですが、その際に1~4の数字を言いましょう。

1番は、右手で取って左足を前に出してください。
2番は、左手で取って右足を前に出してください。
3番は、右手で取って左足を後ろに下げてください。
4番は、左手で取って右足を後ろに下げてください。

では、やってみましょう。

img_1841

―あれ?「1」と言われたのに右手で取って右足が前に出てしまいました…。頭では分かっているのに、体がなかなか言うこと聞きませんね(笑)

中川:そうなんです。人間の脳というのは、右脳から左手や左足に指示し、左脳で右手や右足を動かしている。それが同時に行われないと左右対角線の動作はできません。分かっていても同じ方が出てしまうので、たった4パターンの動きでも我々はできないんですよ。

ただ、スポーツなどの練習やトレーニングで失敗すると悔しかったり、嫌な気持ちになってマイナスな方向に向いてしまいがちですが、他人・自分を含めて笑い合えるのがライフキネティックの特徴であり魅力なんです。

ビジネスシーンでも導入!トレーニングする時間によって変わる効果とは?

中川:ここまで、脳の理論に基づいた認知機能や視覚機能のトレーニングプログラムを説明してきましたが、具体的なライフキネティック効果を理解して頂くため、実際に行われた成人検証結果をご覧ください。

img_1874

このグラフは、ライフキネティックを週1回60分間を12週間続けた17~57歳の成人の検証結果です。これでどのような効果があったかというと、下から3番目のドーパミンの項目が100%の値になっているのが分かりますよね?

つまり、この期間と時間の長さでトレーニングを行うと、ドーパミンは全員改善するということになります。加えて、上から2番目の回復反応(睡眠の質などの指標)もこれだけ大きく改善されました。

img_1875

そしてこれが、ライフキネティックを毎日10分間を12週間続けた検証結果です。ただ、行う時間を変えてもトータルの時間は変わりません。

さっきと同じ項目ですが、比べてみるとドーパミンの値が少し下がっているのが分かると思います。ですが、逆にストレス関連の項目がぐ~んと上がっていますよね?

―本当ですね。同じようなライフキネティックのプログラムでも、長時間で行うものと短時間で行うものでは改善される効果が変わってくるということですか?

中川:その通りです。実際に本場のドイツでは、各々の会社に合った時間の長さで始業前、あるいはランチ休憩の後にライフキネティックを行っているところもあるんです。理由としては、「仕事の効率UP」「仕事のミス減少」という目的で導入されています。

ライフキネティックは東京五輪における日本人選手活躍の「カギ」を握る

dsc_0022

―では、最後になりますが、ライフキネティックを普及させていくうえで、今後の目標や見据えている展望があれば教えてください。

中川:はい。ライフキネティックを体験して感じて頂いた通り、このプログラムの魅力はどなたでもできるというところです。子供からお年寄りまで健康な方はもちろん、車いすの方、体に障害がある方でも行うことができる。

そして、実際に参加している方も楽しいんですけど、見ている方もすごく面白いんですよね。

「何であんなのができないんだろう?」って(笑)。本当にその場の全員が楽しい。これを一番に伝えたいですね。

また、運動機能に関しても日本人特有の身体的な弱さを言われることはあると思うんですね。どの競技にもある接触プレーといった部分でも、判断力やスピードによって接触以外でもどうにかなる。

そういった打開策を導けるツールとしては、ライフキネティックはまさに日本人向きのプログラムなんじゃないかなぁと考えているんです。

―実際に日本で導入しているチームや選手はいるんですか?

中川:ソフトテニス日本代表の篠原秀典選手と小林幸司選手、そしてジェフユナイテッド市原が既に導入しています。


実践してみて、打球に対する反応が良くなったり、見える範囲、視野が広がったという声は聞いていますね。

―ということは、2020年の東京五輪までに広範囲に普及すれば、日本人選手の金メダルラッシュも大いにあり得るのでは?

中川:夢ではないと思います。冒頭でもお話しましたが、ドイツ以外にも世界各国でこのライフキネティックが導入されているわけですが、やはり各国のアスリートに明確な効果が出ていなければ取り入れないと思うんです。

人種によって体格差や筋肉の質が違っても、脳はどの人も作りは一緒。今までやってこなかった脳へのアプローチができるようになれば、今まで従来のトレーニングをされていた方の伸びしろはもっと伸びるはずです。

東京五輪に向けて、ジュニア世代の子供たちが今のうちからライフキネティックをやっていけば、日本代表の年齢に到達する頃には良い結果を残せるんじゃないかと考えています。

なので、まずは一人でも多くの方にこのライフキネティックを体験・実践して頂けたらなぁと思っています。

〇ライフキネティック体験会(興味のある方、資格取得を考えている方ならどなたでも)
①12月10日(土) ②12月15日(木)
会場:中央区総合スポーツセンター
③1月10日(火)
会場:大阪府吹田市 キューホー江坂ビル
〇ライフキネティックトレーナー養成講習会(ドイツと同じカリキュラムで行います)
①12月21~25日
会場:横浜ワールドポーターズ
②1月7~9日及び2月8~12日
会場:大阪府吹田市 キューホー江坂ビル
詳細はHP、FBをご覧ください。
HP:http://lifekinetik.jp/
FB:https://www.facebook.com/lifekinetik.jp/

■以前、公開された記事でも紹介した「視力回復トレーニング」もライフキネティックのプログラムに組み込まれています!併せてごらんください。
過去記事『【90日で最大0.8以上回復!】イチローも取り入れた、自宅でできる視力回復トレーニング術』を読む。

Career Supli
今回、実際にライフキネティックを体験してみて、もちろん思っていた以上に難しかったというのがあります。ただ、体験している僕たちや教えている中川さん、そして撮影しているカメラマンまで自然に思い切り笑っていました。脳を活性化するプログラムとしても今後とても期待が持てますが、気軽に行える一つのコミュニケーションツールとしても僕は大きな可能性を感じました。本当に簡単にできるので、是非家族や友達と少しでもいいのでやってみてください。オススメです!
[インタビュー・文] 佐藤 主祥 [写真] 松永 貴允 [編集] サムライト編集部