心身のコンディションを左右する新見解!「脳の呼吸」の影響力とセルフケアの方法

心身の不調は「脳の呼吸」が原因

風邪や怪我というわけではないのに常に体がだるかったり、気持ちが塞いでいたりすることはありませんか?その原因はもしかすると「脳の呼吸」の乱れかもしれません。

『「脳の呼吸」を整えればあなたの全身はよみがえる!』の著者・宮野博隆さんは1971年に東京・蒲田で開業して以来、45年以上も整体師や指圧師、針灸師として多くの患者を治療してきました。また2000年には国際的なカイロプラクティックの学会・SORSI(国際仙骨後頭骨学会)で研究対象を受賞するなど、世界的に評価を受けてきました。

そんな宮野さんが心身のコンディションを整え、パフォーマンスを高める方法として提唱するのが「CSFプラクティス(脳脊髄液調整法)」です。ここではこの方法の理論と、自分でもできるセルフケアの方法を紹介します。

「脳の呼吸」とは何か?

人間の呼吸には肺呼吸とは別に「脳の呼吸」もあることをご存知でしょうか。私たちの脳と脊髄は「硬膜」という袋で覆われており、この袋と脳や脊髄の間にある空間(くも膜下腔)は「脳脊髄液(または髄液)」で満たされています。

脳脊髄液は1分間に約0.35mlのペースで脳が作り、体内に排出しています。脳脊髄液を作るときに脳は膨らみ、排出するときに元の大きさに縮みます。この膨張と収縮こそが「脳の呼吸」です。

カイロプラクティックの世界では脳の呼吸を「一次呼吸」、肺の呼吸を「二次呼吸」と呼びます。また、くも膜下腔内の脳脊髄液の量と圧力をほぼ一定に保つため、脳の毛細血管や静脈系など体の様々な部位がこれを吸収していると考えられています。

この仕組みは私たちの心身のコンディションに大きな影響を及ぼします。宮野さんによれば人間の体は水の入った大きな風船のようなものであり、その中にはいくつもの大小様々な風船が入っていて、それらも水で満たされているものなのだそうです。

そのため脳の呼吸に何かしらのトラブルが起きたり、脳脊髄液の吸収が滞ると、体全体が膨らんでしまい、脳をはじめとする器官を圧迫して体調を悪くしたり、思考などにも悪影響を与えて心のバランスを乱したりする、というわけです。

「脳の呼吸」が心身に及ぼす影響

脳の呼吸が心身に及ぼす影響について、もう少し具体的に理解しておきましょう。脳の呼吸は基本的に呼吸と同じ1分間に約15回のペースで行われています。しかし体調が悪くなり、脳の呼吸が乱れるとまず脳が脳脊髄液の排出をうまくできず、正常時よりも膨らんでしまいます。

頭蓋骨は弾力性があるため、このとき脳と一緒に頭全体が膨らんでいるのです。実際に宮野さんの治療院での施術前と後で、頭の大きさを測定する3Dセンサーを用いたところ、施術後の方が頭が小さくなっていたという結果が出ています。

ここで生じる問題の1つが「脳の異常な圧迫」です。作ったものの排出されない脳脊髄液が脳を膨張させ、頭蓋骨内で圧迫されてしまうのです。

また仮に脳がきちんと呼吸できていたとしても、排出された脳脊髄液を体内で吸収できなくなると心身に不調が生じます。例えば肺呼吸が浅くなるのも、これが原因です。

体内で脳脊髄液を吸収できなくなると、人間という大きな風船は膨らみます。すると風船内の内圧は下がります。具体的には空気をため込む胸の空間(胸腔)の内圧が下がり、通常時よりも多くの空気をためられるようになるのです。

一見良いことのように思えますが、この状態は「息を吸い過ぎている状態」です。したがって息を完全に吐き出せなくなる、というわけです。これは重症化すれば呼吸困難になる危険すらあります。

宮野さんが著書の中で言及しているわけではありませんが、脳や体への酸素の供給量も減るのですから、筋肉や自律神経などへの悪影響も免れないでしょう。

「睡眠不足」と「長時間の同じ姿勢」は絶対にやってはいけない

脳の呼吸を乱したり、脳脊髄液の吸収を妨げる要因は様々ですが、宮野さんが挙げる絶対にやってはいけないことが「睡眠不足」と「長時間の同じ姿勢」です。

脳が休養し、コンディションを整えるためには質の良い睡眠が必要不可欠です。仮に8時間眠っていたとしても、それが質の悪い睡眠ではしっかりと休憩できません。宮野さんは質の良い睡眠をとるためには、室温を夏冬問わず17℃〜22℃に設定するべきだと言います。

これが脳と体が最もリラックスして活動できる気温だからです。やせ我慢をして寒過ぎたり、暑過ぎたりする環境で眠らないように注意しましょう。

デスクワークなどはもちろん、長時間の運動などで同じ姿勢を維持し続けると、その部位の筋肉が固まってしまいます。硬直した筋肉は脳脊髄液をうまく吸収できなくなり、その結果心身に支障をきたしてしまうのです。以下では、このような生活の中での脳の呼吸の乱れや、体内での脳脊髄液の滞りを解消する方法を3つ紹介します。

どこでもできる「脳の呼吸」の整え方

宮野さんが著書で紹介する方法は次の4つです。

1.極性タッチ
2.脳呼吸法
3.筋膜ストレッチ
4.波動法

ここではこのうち、実際に効果を実感しやすい「2.脳呼吸法」「3.筋膜ストレッチ」を紹介します。なお、行う前に自分の手で頭の大きさを確認しておくと、行った後にその効果をより実感することができます。

●脳呼吸法

脳呼吸法には寝転んだ状態で行う「手上げ法」と、座った状態で行う「足上げ法」があります。手上げ法のやり方は以下の通りです。

1.仰向けに寝る。
2.右腕をまっすぐ頭の上に伸ばし、腕が耳につくようにする。この状態を15秒維持。
3.右腕を下げ、左腕で同じようにする。
4.左右15秒×4〜12セット(1分〜3分)を行う。

このとき、15秒が5秒などに短くならないように注意しましょう。手を上げた方の頭が5秒で大きくなり、それとは逆の頭が10秒〜15秒で小さくなることがわかっているからです。頭が大きくなったところで下げてしまうと、ただ苦しくなるだけで逆効果です。

足上げ方のやり方は次の通りです。

1.椅子に座る。
2.つま先を地面につけたまま、右足のかかとを1cmだけ上げて15秒維持する。
3.右足のかかとを下ろし、左足のかかとを同じようにして15秒維持する。
4.左右15秒×4〜12セット(1分〜3分)を行う。

秒数の注意点は手上げ法と同じです。さらに足上げ法の場合は「1cm」を厳守するようにしてください。これ以上高く上げると効果が得られないからです。

●筋膜ストレッチ

筋膜とは「深筋膜」とも呼ばれ、人間の体を人間たらしめているボディスーツのような組織です。これが凝り固まったり、ねじれたりしていると体全体に悪影響を及ぼします。一般的なストレッチでは筋膜をほぐすことはできないため、宮野さんがおすすめする以下のストレッチを行います。

1.椅子に座る。
2.両腕を前に伸ばし、左手の手首を右手の手首の上に重ねる。
3.顔を固定した状態で、左側に肩を30度回転させる。この姿勢を15秒維持。
4.上に乗せる手を右手に変えて、同じように行う。
5.左右交互、各3回行う。

この運動を行うと全身の筋膜が緩み、全身で正常に脳脊髄液が吸収されるようになります。結果頭が小さくなり、圧迫されるストレスが軽減されます。正しく行えればかなり全身が楽になるはずです。

「健康法」はPDCAが大事!

「脳の呼吸」「脳脊髄液」「筋膜」など聞きなれない言葉が多かったかもしれませんが、これらは宮野さんが長年かけて培ってきたコンディショニング術のエッセンスです。理屈をしっかり理解したうえで、ぜひセルフケアを行なってみてください。きっと効果を実感できるはずです。

キャリアサプリでは様々な健康法を紹介していますが、残念ながら「万人に効果のある健康法」は今のところありません。そのためどんなものでも試してみて、自分に合うか・効果があるかを確認してもらう必要があります。そうしてPDCAを回した先に、自分にとっての「間違いない健康法」があるのです。

参考文献『「脳の呼吸」を整えればあなたの全身はよみがえる!』
Career Supli
脳の呼吸は聞きなれない新しい概念だと思いますが、言葉にすることではじめてそれを認識できるようになります。ぜひ参考にしてください。
[文]鈴木 直人 [編集]サムライト編集部