「自分探し」から家族の「幸福探し」へ、移住という選択!

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メディアでも紹介される移住は「新ディスカバージャパン」?

1970年代はじめ、輸送力アップで「日本を再発見し、自分自身を再発見する」をコンセプトに、「ディスカバージャパン」のコピーが話題になりました。

当時は「遠くへ行きたい」の紀行番組がヒットし、同名の主題歌は視聴者の旅情を誘いました。人々は地方を目指し、その土地の人情に触れあったものです。

あれから50年弱。NHK朝ドラ「まれ」は一家が夜逃げ同然で能登に移り住み、家族再生がテーマなりました。テレビ朝日「人生の楽園」は「いい人生の歩き方発見」をコンセプトに、各世代の家族の地方での「幸せ探し」が感動や共感を与えています。時代の激変で家族の形も様々に変化し、いま移住が家族の大きな選択肢として、クローズアップされています(シンクタンク研究員)。

ひとつのフレームワークではくくれないライフスタイル

「定住」を断って「移住」を決断するには夫婦の理解、夫の仕事、子供の教育、年老いた両親の介護など、人生を左右するシビアな問題が背景にはあります。

それこそ動機や理由は様々です。人口動向に詳しい社会部記者によれば、家族で話し合いや候補地を調べながら、1.安定して暮らしていけるか、2.地元の方とうまくやっていけるか、3.仕事は見つかるか、4.安全面などのインフラはどうか、5.幸せ感が予感出来るかーなどが選択基準になっているそうです。

断舎利をしてシンプルライフを楽しみたいという20代と、自らが高齢者になった団塊の世代の人たちの移住への思いや計画には差異があります。定住を断つマイナスの理由や家族が分散するというネガティブな考えより、新しい出会いや生きがいをいかに持つかーに軸足を置いた方がいい。青い鳥を探す前に、青い空、碧い海を描くことです。確かに家族は個に分散するでしょうが(同)。

移住について地方の行政機関やNPOなどは次のようにパターン化しています。

「Uターン」生れ育った故郷に再び戻り住むこと。
「Jターン」生れ育った故郷から進学・就職などで違う地域に移り住み、
その後、故郷とは異なる地域に住むこと。
「Iターン」都会・都市で生まれ育った人が、地方に移り住むこと。
「2地域居住」都市・都会に住む人が年間、定期的に、しかも継続して景観の良い農漁村などに滞在すること。
「地方から都会へ」地方出身者が、都市・都会に住むこと。

注目の新しいコミュニティの形成では、「I、J」がすでに動きだしています。

「地方創生」が加速する中、自分に適した生活を決める心構え

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安倍首相が「地方創生」を政策の目玉にしていることもあり、近年動きが加速。連動して政府系や地方自治体のネット上の移住関連ナビも活発化しています。

お試し移住や漁村留学。なかには火星移住のネットが笑いを誘ったり・・故郷希望地域ランキングも登場しており、人生を左右する「移住」という決断がトレンドとして語られたりしています。移住の際の「引かれる」というプラス要因と、マイナス要因の「出る」を比較することも大事です(メディア評論家)。

ここで言う「引かれる」とは、より良い経済的機会や気象条件、文化的コミュニティの創設など、移住者にとってプラス要因のこと。一方、「出る」は貧困への恐怖や仕事の欠如、ポジショニングの弱さなどマイナス要因を指します。

「移住を選択する要因はこの2つに大別されます。プラスの面が誇張されたり、マイナス面の説明不足は要注意です。情報の見極めは大事です」(社会部記者)。

楽園生活が喧伝される一方で、移住者が孤立化する危険性も孕んでいるのです。

移住希望地域で首都圏近郊が上位ランキングの訳

Mount fuji and city in yamanashi japan

ここに興味深い調査結果があります。全国的なネットワークを持つNPO法人「ふるさと回帰支援センター」が、ことし2月にリリースした「ふるさと暮らし希望地域ランキング」の上位ランクです。

ランキング1位山梨県、2位長野県、3位岡山県 4位福島県、5位新潟県
(調査期間は昨年1月~12月、回答数は約3千人、移住相談者などを対象に実施)

支援センターによれば、1位山梨、2位長野、3位岡山の上位3県は安定した人気を維持。また2011年以降、若者世代(20~40代)の相談が急増しており「地方移住や田舎暮らしが一般化してきた」と説明しています。首都圏から交通アクセスが良い山梨・長野が上位にランキングされたことに、「新天地での再興を求めながらも、心のどこかに都会生活の余韻を完全に消したくないーとの思いが伺える」と、都市開発研究員は興味深い分析をしています。

ちなみに6位熊本、7位静岡、8位島根、9位富山、10位香川の各県。
もちろん希望地はライフスタイルや生きがい探しで全国に拡散しています。

アンテナショップやネットを見ると、まるで求人広告の情報のように、移住先や田舎の情報が〝お国訛り〟で微笑かけています。そんな時こそ「引かれる」と「出る」を秤に掛ける必要があるのかも知れません・・・

移住体験者が語る「勇気」と「決断」と「これから」

定住を断ち、新しいライフワークを家族と始めた移住体験者の「ことば」には、重ねた苦労より、手にした幸せが感じられます。

30代。夫婦と子供2人。東京→和歌山県田辺市、移住歴3年

東京でテレビ局のディレクターをしていた中島さん。取材で田辺市に行き、他の地域にはない人の魅力、大きなパワーを感じたそうです。「ここで子育てをしたい」。奥さんの理解も得られ、漠然とした思いが現実的なものとなりました。

都会では保育園の待機児童の問題がありますが、ここではそんなことはありません。自然を見ながら送り迎えをしています。息子の愛を取り戻せました(笑)心配していたのは大きな病院まで車で1時間ほどかかる事。でも都会の病院で何時間も待つ事を考えれば全然苦にならないです。買い物は週一回街に出てまとめ買い。収入はぐんと減りましたが、今は映像制作の仕事で、東京からの撮影依頼の仕事などもこなしています。僕はここへきて、子どもと過ごす時間を大事にしています。これからも今の時間、家族との時間を大切にしていきたい。

60代。妻と2人。北海道→山口市、移住歴4年

杉田さんは訪れた温泉場の景観に「日本の里の原風景が残っている」と感動。「人の住むところ」と移住を決意。うどん店で居合わせた人に紹介されたそうです。

移住して良かったことは、留守中に雨が降れば洗濯物を軒下に乾かして置いてくれたり、昔の温かな人付き合いが当たり前にあること。田舎暮らしに何を求めているか自分に問い掛けて、これしかないと結論を出してから、決断した方がいい。ステキなものが入るように、頭の中をからっぽにして移住して下さい。

紹介した体験談は「ふるさと回帰支援センター」のHPからの抜粋です。30代の投稿が目立ち、20代の独身男性は東京から福島県郡山市にIターン。「震災前からここにいる仲間に寄り添い続けたい」と移住を決めたそうです。

体験談に共通していることは、世代を超えていかにリスクを回避し、移住先での起業はビジネスとして成立するかなど、事前調査をしっかりしていること。

「若い人ほど自分への挑戦に加え、家族への責任をしっかり受け止めているのが印象的。それでも移住先で孤立化し、漂流する現実もあります」(社会部記者)

家族の形も人生も変化する「移住」とどう向き合うか?

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今回の主題は軽やかに論考を進められないほど、移住の背景や動機は重層的でナーバス。政府が「地方創生」を唱え、自治体も巧みなPR戦略を展開していますが、「人々の営みが変化する」というフォーカスが甘くなっているようです。

限界集落や少子高齢化が重くのしかかり、その渦に移住も巻き込まれています。

「そうした状況でいかに自分に合った暮らしを探すか。家族は個に分散し、家庭内の親子関係は疎遠になり、新しい絆が移住によって生まれる」(社会部記者)。

「移住する人、定住にこだわる人。様々な生活パターンが随所で起こりそうだが、なにが人間的な生き方か、改めて問われそう。20~40代の移住希望者が増えていることは、地方からの発信力が増す可能性が大」(メディア評論家)。

「個人的に移住者を応援したい。彼らが幸せを掴み、生きがいを感じるよう地元の人達も声を掛けて欲しい。国や自治体はハートのレベルでも彼らをサポートすべき。個人や家族の物語と国のコラボに期待したい」(シンクタンク研究員)。

ゆったりとした時間が流れる中、「移住」がやがて「定住」となる日がくる・・・

Career Supli
はじめは「人生の楽園」のようなほんわかする記事をイメージしていたのですが、取材をすすめていく中で移住の動機や理由は様々で、中々一括りでは語れないことがわかってきました。また介護や地方経済、少子化など日本の抱える問題にも密接に関連しています。とは言えIT化によって働く場所の柔軟性は広がってきているのは事実なので、移住には新しい可能性もあると思います。働き方の多様性という観点から今後も移住については考えていきたいと思います。
[文]メディアコンテンツ神戸企画室 神戸陽三 [編集]サムライト編集部

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