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愚痴は「正しく」吐くべし
「立派になりたければ愚痴は言うな」「愚痴を言う人はみっともない」このような話はネットにも巷にもあふれていますが、「愚痴を言え」という話はあまりに聞きません。
しかし日々生活していれば、仕事でも私生活でも愚痴はたまるもの。それを全て押さえ込んでいては、ストレスで心が磨り減ってしまいます。
実は愚痴には正しい吐き出し方があります。ここではどんなときに愚痴が生まれやすく、どんな愚痴の吐き出し方が間違っているのかを説明したうえで、正しい愚痴の吐き出し方について解説します。
「愚痴で愚痴が終わる」のは間違った吐き出し方
●愚痴が生まれる7つの原因
誰しも、愚痴に多い人にはなりたくないはずです。なぜなら愚痴ばかり言っている人はネガティブなオーラをまとっていて、楽しそうではありませんし、自分だけでなく周りまでネガティブな気分にしてしまうからです。
しかし仏教の世界でも108ある煩悩のうち、特に注意するべき煩悩のトップ3に入れられているほど、愚痴は人生に密着したものです。逃れるのは至難の技です。産業カウンセラーの原祐美子さんの著書『グチの教科書』では、愚痴が生まれやすいのは以下の7つを感じた時だとされています。

このような場面は日常の中に無数にあります。人は日常的に、自分が「こんなふうになったらいいのにな」と思っていた内容に反する結果が出るたび、それを不平・不満に変換し、愚痴(=言っても仕方がないこと)として口に出してしまうのです。
●愚痴は言いっぱなしにしてはいけない
しかしそれが自分や周りをネガティブにしてしまうのは、そうして生まれる愚痴が間違った吐き出され方をしているからです。すなわち、「愚痴で愚痴が終わっている」ことが問題なのです。
「今週もまた月曜日がやってきたよ。ちっ、週末に溜まってたトラブルが山ほど降ってくるんだろうな……」
「下ろしたての靴を朝の電車で踏まれた。最悪の1日のスタートだよ」
「同期の○○は要領が良くていいよな。俺は要領よくできないから、いつまでも出世できないんだろうな」
例えばこんなふうに、愚痴を言いっぱなしにしていたら、いつまで経ってもネガティブな自分から抜け出せず、周りからも「ネガティブな人」というレッテルを貼られて煙たがられるでしょう。このような状況を防ぐために、正しい愚痴の吐き出し方を身につける必要があるのです。
吐き出した愚痴は「ポジティブ変換」しよう

●正しく愚痴の吐き出すための2ステップ
正しい愚痴の吐き出し方は、2ステップで構成されます。第一段階は間違った吐き出し方と同様に、自分の中に生まれた愚痴をそのまま吐き出すステップです。
「新品の靴を踏まれた」という日常のイライラに対してでもかまいませんし、「同期には敵わない」という到達不能に思える目標に対してでもかまいません。悔しさも悲しみも、妬みも嫉みも僻みも、自分の中にある素直な気持ちを言葉にして吐き出します。
第二段階は第一段階で吐き出した愚痴を、ポジティブに変換するステップです。吐き出したいだけ吐き出したら、それを全てポジティブに変換するのです。そうすることで自分も前を見ることができますし、周囲からのイメージも「ネガティブな人」にはなりません。
というのも『ジャーナル・オブ・ハピネス・スタディーズ』誌に発表された韓国・ソウル国立大学のサンハエ・スーさんらが、88人の男女に対して行った研究によれば、人間は「悪いニュースやイベント→良いニュースやイベント」の順に話された方が幸福感を感じやすいことがわかっているからです。
つまり「ネガティブ→ポジティブ」の順に話されると、人間の心理は後ろのポジティブに引っ張られるということです。そのため愚痴を言っても、そのあとポジティブに変換すれば、自他共にポジティブなイメージを持てるというわけです。
●愚痴をポジティブ変換するための4つの方法
しかし愚痴はネガティブな感情に支配されているときに言葉になるため、なかなかポジティブに変換できないという人もいるかもしれません。そんな時は次の4つの方法を試してみてください。
1.別の視点を持つ
愚痴を吐き出した後に、それに続けて「〜とみせかけて」「だと思うじゃん?」と自分の思考を別の視点に移すような言葉を口に出してみましょう。
例えば「仕事でミスをした!自分はもう終わりだ……とみせかけて、この程度のミスなら以前もやっているし、リカバリーの仕方も知ってるぞ」といった具合です。
前述したように愚痴を吐き出すときは、得てしてネガティブな感情に支配されているもの。「〜とみせかけて」「だと思うじゃん?」などを合言葉として持っておくと、その支配から逃れるきっかけをつかむことができます。
2.楽観視する
うまく別の視点を持てないときに効果を発揮するのが「まあ、なんとかなるか」「なるようにしかならないよな」と楽観視してしまう方法です。これでは何の解決にもならないと思うかもしれません。
しかしネガティブになっているときの人間の脳はパフォーマンスが下がるため、事態を乗り切れるようなクリエイティブなアイデアは生まれません。
そのため楽観的になってしまったほうが、愚痴を言いっぱなしにしてネガティブになっているよりはいい解決策を思いつくのです。
3.茶化す
愚痴を吐き出している時は、得てして思考や場の空気が深刻になりがちです。愚痴を聞いている側もイライラしてしまって、自分まで愚痴を言い始めれば事態はさらに悪化します。
しかし愚痴の内容を茶化して笑いに変えてしまえば、一気に思考も場の空気も柔らかくなり、ポジティブになることができます。
その時に参考になるのが第一生命が実施している「サラリーマン川柳」や、全国有料老人ホーム協会が実施している「シルバー川柳」です。これらに寄せられた一流の茶化しを以下に少し引用しておきましょう。
・ノーメイク 会社入れぬ 顔認証
第31回サラリーマン川柳 第3位・効率化 進めて気づく 俺が無駄
同第4位・百年も 生きりゃ 貯金に先立たれ
第18回シルバー川柳 入選作品・デイサービス 「お迎えです」 はやめてくれ
同上
どれも愚痴で終わらせようと思えば終わらせられる内容ですが、それを川柳にして茶化すことで、一気に笑いに変えてしまっています。
難しく感じる人もいるかもしれませんが、「どうにかして茶化せないか」と考えているうちに、ネガティブな気持ちはどこかへ行ってしまいます。あまり難しく考えず、一度挑戦してみましょう。
4.ぼかす
とっさに愚痴が出てしまい、1〜3の方法を使う余裕がないときは、語尾に「かもね」「そんな気がする」「そんなほどでもないか」といったネガティブな印象をぼかす言葉を付け足すだけでも、愚痴のネガティブさを弱められます。
例えば自分が楽しみにしていた恋人とのデートに、恋人が遅れてしまったとします。楽しみにしていればしているほど「なんて酷いやつだ!」と憤るでしょう。
しかしそこで「まあ、そこまで言うほどでもないか。自分も遅刻することはあるしな」と付け足すだけで、心がほっと落ち着くはずです。
「最悪」「最低」といった言葉が口癖になっている人がいますが、たいていの場合最も悪い、最も低いなどということはありません。つまり「最悪」「最低」といった言葉は実際の自分の気持ちよりも、大げさな表現なのです。
ぼかすという方法は、こうした大げさな表現を実際の自分の気持ちまで引き下げる力を持っています。
愚痴を「次の一歩」につなげよう

愚痴を正しい方法で吐き出せるようになると、ストレスが緩和されて心身ともに健康になり、人生もハッピーになります。ネガティブな感情に支配されずに、前向きに物事を考えられるので、仕事や私生活での成長にもつながるでしょう。
周囲から「ブラックなところもあるけど、前向きな人」という清濁併せ吞む魅力的な人だと思ってもらえる可能性もあります。
愚痴を我慢する必要はありません。ネガティブな感情は状況に応じて吐き出せばいいのです。しかし吐き出した愚痴を言いっぱなしにせず、ポジティブ変換することが大切です。そうして愚痴を次の一歩につなげていきましょう。
