Contents
ファストフードは時代遅れ?
日本マクドナルドは2014年の12月期の決算報告で5年連続の減収を発表、様々な新メニューを発表しますがなかなか結果は出ていません。これはファストフードが少しずつ時代の流行から遅れ始めていることを示唆しています。ではファストフードの次にはどんな「食」が待っているのでしょうか?以下では「食」についての最新の研究や食材などを紹介することで、新時代の「食」について考えていきます。
完全食ソイレント−炭水化物は必要でも、パンは要らない

画像出典:Wikipedia
2013年、あるアメリカ人青年が「わたしはいかにして食べるのをやめたか(How I Stopped Eating Food)」というタイトルのブログ記事を公開しました。のちに「ソイレント」という名の栄養機能食品を開発・販売することになるロブ・ラインハート氏です。ソイレントとは人体の生存に必要な栄養素全てを含んでいる粉末の流動食で、ラインハート氏は2014年4月時点ですでに1年半もの間、食事の90%をこの粉末だけで済ませるようになっています。味はほんのり甘く、ホットケーキミックスのような香りもするのだとか。
同氏いわく一般的な食事は「複雑で、高価で、不安定な方法」。実際ソイレントの粉末は224食で432ドル(1食1.91ドル)と格安です。「あれは体に悪いからダメ、あれは体に良いから食べても大丈夫」などと世の中に流れる情報に惑わされるのはもうおしまい。ソイレントだけあれば、「栄養学的に健康的な食生活」は問題なく送れるのです。
ラインハート氏は新時代の食について「効用や機能のための食事と、体験や社交のための食事」に分かれると言います。前者に関してはソイレント、後者に関してはこれまで通りの生活を送る。これがソイレントが提示する、新しい食のあり方です。
昆虫食−最強のタンパク源
2013年、米エクソ社はコオロギの粉末を主原料としたプロテインバー「クリケットバー」の生産のためにクラウドファンディングサービス「KICKSTARTER」で資金を集めようとしました。この挑戦は見事成功し、同社のホームページでは現在も12本入り36ドルで販売しています。コオロギの体の65%はタンパク質でできており、コスト面でも優れています。コオロギ100gと同じタンパク質を牛肉で摂取しようとすると、なんと数十倍もの飼料と水が必要になるのだとか。
コオロギだけでなく、昆虫食は世界的にも注目を集めています。Japan Business Press編集部記者・堀川晃菜氏によれば欧米では食用ウジムシ(アメリカミズアブの幼虫)の養殖キット「FARM432」、食用バッタ養殖器「Lepsis」などが販売されているのだそうです。
昆虫食の問題はやはり「昆虫を食べる」ことへの消費者の抵抗感。エクソ社の「クリケットバー」はその点に配慮して、パッケージデザインにコオロギを使っていません。
発酵食−科学で未だ解明できない健康食

味噌、醤油、みりん、酒やヨーグルト、チーズにキムチ、そして納豆。私たちの生活には発酵食が根付いています。発酵食に関する社会人向けの講座を運営する発酵食大学(石川県)曰く、発酵食は「ずば抜けたパワーを秘めた『未来食』」です。同時に発酵食には謎が多く、伝統的な発酵食の生成過程における微生物間の相互作用は科学でも未だ解明しきれないほど複雑なのだとか。
この発酵食の持つ健康効果は絶大です。代表的なものには腸内環境を整える乳酸菌(ヨーグルトなど)や、独特の旨味を引き出す麹菌(酒、味噌、醤油など)、血栓症予防に役立つ納豆のナットウキナーゼなどが挙げられます。
確かに伝統的な発酵食の製法は繊細な管理が必要で大量生産には向きません。しかし発酵食大学の言うように、発酵食には「ずば抜けたパワー」がまだまだ隠されています。科学的なブラックボックスがあるという点も可能性を感じさせます。新時代の食について考える場合、発酵食は1つのトピックになるでしょう。
培養肉−倫理と環境と経済に揺れるニューフード

2013年8月にオランダのチームが開発、ロンドンで試食会が行われた培養肉ビーフバーガー。試食会に参加したある食の専門家は「ジューシーではないけれど、肉に近いね」とコメントしています。牛の幹細胞をシャーレで培養したこの肉は、環境面で見ると非常に優秀です。Environmenntal Sciense & Technology Journalによると「エネルギーを45%、使用する土地を99%、温室効果ガスを96%削減する」のだとか。
しかし「人工的に肉を作る」ことが正しいことなのかという倫理的な問題は無視できません。牧畜業者の目から見ても自分たちの生活に直結する問題で、培養肉が普及するには数多くの議論を重ねる必要があるでしょう。
残念ながら今のところは培養肉を商品化するにはコストがかかりすぎる模様。さてこのニューフード、あなたは食べますか?食べませんか?
自然農法農産物−有機農法の向こう側
肉、大型の魚に卵、乳製品や砂糖などを控えた食事を基本とするマクロビオティック(マクロビ)や「自然食カフェ」などが流行する現在では、有機農法はすでに「誰でも知っているレベル」になっています。しかし有機農法よりももっと自然に寄り添った農法があるのはご存知でしょうか?それが「自然農法」です。
実践者によって諸説あるものの、原則は「耕さない」「除草しない」「肥料を与えない」「農薬を使わない」の4つ。この場合の農薬は天然かそうでないかは関係なくNGです。有機農法よりもさらに自然の力を重視した農法と言えるでしょう。
公益財団法人・自然農法国際研究開発センターによれば、この農法は1935年(昭和10年)に岡田茂吉によってすでに提唱されていました。同センターは1985年(昭和60年)に農林水産省から認可を受け、この技術の普及に努めています。
「食の未来」を考える
ソイレントや培養肉のように化学的な「新時代の食」がある一方で、昆虫食や発酵食、自然農法のようにもう一度伝統的な食を見直そうとする「新時代の食」もあります。これらを踏まえた上で最後にもっと未来の食の問題について考えてみましょう。もし世界が気候の急激な変化や戦争で深刻な食糧問題に直面した時私たちはどうするか、という問題です。
北極点近くに位置するスヴァールバル諸島・スピッツベルゲン島にはビル・ゲイツ氏が中心となって建設した「スヴァールバル世界種子貯蔵庫」があります。世界中から集められた84万種類(2015年3月時点)を超える「種子の標本」が保存されている施設です。温度変動・海水面上昇はもちろん、テロ攻撃にすら耐えうる堅牢な構造を持っており、絶望的な食糧危機に対するゲイツ氏の意識の高さがうかがい知れます。
しかしこの施設に日本が保管をしているのは岡山大学・自然植物化学研究所が提供したオオムギ種子1種類だけ。私たち日本人は「食の未来」について、もっと深刻に考える必要があるのかもしれません。
明日、何食べる?
「食と健康」は老若男女問わず関心の高い話題です。しかし私たちはどれだけ「食」について知っているのでしょうか?ここで挙げた4つの「新時代の食」を1つでも取り入れてみれば、今よりもっと「食と健康」について深く考えられるようになるはず。ひょっとすると「食の未来」に想いを馳せることになるかもしれません。さあ、あなたは明日、何を食べますか?
