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来年こそは英語を
10代の英語の勉強が受験のための勉強、20代の英語の勉強が「自己投資」のための勉強だとすれば、30代以降の英語の勉強は「すぐに使えてなんぼ」の勉強です。そのため一から英文法を勉強したり、TOEICで高得点を取るための勉強をしている場合ではありません。
ここではフィリピン最大級の英会話学校「QQイングリッシュ」の経営者・藤岡頼光さんの著書『40歳を過ぎて英語を始めるなら、TOEICの勉強は捨てなさい』を参考に、30代が即戦力の英語力を身につけるための心得を解説します。本書は30代よりも切羽詰まった「40歳からの英語」をテーマにしています。これを30代から実践しておけば、より素早く「使える英語」が身につくはず。ぜひそのノウハウを自分のものにしましょう。
英語の勉強は「捨てる」で効率化する
ビジネスにおいて英語は単なるツールです。英語ができるからといって、それがそのまま仕事もデキることにはなりません。英語のマスターが目的ならともかく、英語でビジネスの幅を広げたいという人は、必要以上に英語の習得に時間をかける必要はありません。
そこでポイントとなるのが「捨てる」の発想です。自分が仕事をしているときのコミュニケーションを思い出してみましょう。得意先や上司、部下とのやりとり、電話応対など多くの場面で「よく似たフレーズ」を使っているという事実に気づくはずです。
もちろんビジネスシーンでも臨機応変な対応は必要ですが、大部分は決まり切った定型文でコミュニケーションが行われているのです。即戦力の英語を身につけたいのであれば、まずはこうしたお決まりのコミュニケーションに確実に対応できるようになりましょう。
藤岡さんはそのためにまず10ヶ月かけて『DUOセレクト―厳選英単語・熟語1600』に習得されている例文全てを丸暗記したのだそうです。ここで身につけた単語・熟語・構文などが「強固な基礎力」となり、藤岡さんの英語力を支えています。ここでは藤岡さんの著書で紹介されている勉強法には触れませんが、まずはこの『DUOセレクト』の丸暗記から始めてみるのもいいでしょう。
しかしその場合でも、日本人特有の真面目な気質が邪魔をします。以下ではより具体的に英語の勉強における「捨てる」を開設していきます。
「ネイティブと話せなきゃ意味がない」を捨てる
文部科学省の平成19年の資料によると、英語を公用語・準公用語等とする国は54カ国に及び、その総人口は21億人を超えます。しかし一方で英語を母国語とする人口は4億人。つまりネイティブスピーカーはたった2割にも満たないのです。
にもかかわらず日本人には「ネイティブの英語が聞き取れなきゃダメ」「ネイティブと話せなきゃダメ」と考えている人がかなりたくさんいます。もちろん英語を母国語とする国を中心にビジネスをするのなら別ですが、多くの場合は非ネイティブとのビジネス会話が成立すれば問題はありません。
英会話学校を経営する藤岡さんでさえ、ネイティブと会話をするときには非ネイティブとの会話の何倍ものエネルギーを消費すると言います。集中力が続く30分程度ならともかく、それ以上になるとほとんど雰囲気で会話をしているそうです。
しかし本当に何を言っているのか理解できないときは、藤岡さんはためらわずに英語で「もっとゆっくり話してください」「もう一度お願いします」と言うようにしているのだとか。多くの人はこれで気を遣ってくれるようになるそうです。
「言いたいことをきっちり伝えたい」を捨てる
真面目な人ほど「自分の言いたいことをヌケ・モレ、誤解なく伝えたい」と考えがちです。しかしそれは母国語の日本語だからできることで、そうではない英語ではかなり難易度の高い技術です。もしすぐに役立つ英語を身につけたいのなら、正確さや表現の技巧についてのこだわりは一切捨てましょう。
正確さや表現の技巧についてこだわる無駄は、自分が日本語でコミュニケーションをとっているときを思い出せば気づけるはずです。例えばこちらが言葉を尽くして懇切丁寧に説明していても、相手はあまり聞いておらず、蓋を開けてみたら全く伝わっていなかった、なんてことはよくあります。これは逆もしかりで、よほど集中していない限り、私たちは誰かの話を大雑把に印象で理解しているのです。
外国人も同じです。ましてや相手が非ネイティブならなおさらでしょう。正確さや表現の技巧にこだわっても、習得に必要な時間と労力に見合った成果は得られません。
「完璧に聞き取りたい」を捨てる

藤岡さんはお互いがお互いの言っていることを7割理解できれば、会話もビジネスも成立すると言います。例えば私たちは日本語で話しているとき、相手の言うことを100%聞き取れなければコミュニケーションを成立させられないでしょうか。
そんなことはないはずです。聞き取れない言葉、理解できない言い回しも、他の言葉との文脈関係で補完し、「概ねこういった内容の話だ」と認識するのではないでしょうか。これを英語で実践すればいいのです。
もちろんあまりにも理解できない部分が多いと、文脈関係での補完もできません。藤岡さんが聞き取れる内容がこの割合以下になるとダメ、と考えているのが6割のラインです。言い換えれば最低でも6割以上の単語や言い回しを理解できるようになれば、藤岡さんのように世界を相手にビジネスを展開できるということです。
藤岡さんはリスニング能力を上げるために、特別な勉強はしなかったそうです。延々と『DUOセレクト』を暗記していたら、いつの間にか相手の言葉が理解できるようになっていたのだとか。このように知っている単語と言い回しを丸暗記で増やすだけでも、リスニング能力はアップするのです。
「読む・書く・話す・聞く全部マスターしたい」を捨てる
藤岡さんはビジネスに特化した英語力を身につけるために、読む・書く・話す・聞くの4つの技能のうち「話す」「聞く」だけに特化して勉強をしたのだと言います。
私たちは「英語を勉強するぞ」と決断すると、ついついTOEICなどの英語の総合力をアップさせようとします。しかし藤岡さんのビジネス(英会話学校のほか、輸入スクーター専門店などの経営)に必要だったのは「話す」「聞く」だけでした。
そこで藤岡さんは他の「読む」「書く」をきっぱり捨て、必要な技能だけに絞り込んでトレーニングをした、というわけです。どの技能が重要かは人それぞれです。中には「とにかく読むが重要なんだ!」という人もいるでしょう。その場合は「読む」だけを勉強すればいいのです。
4つの技能は完全に独立しているわけではありません。読むことだけを勉強していても、ある程度までは「書く」「話す」「聞く」の技能も高まっていきます。重要性の低い技能はその程度のレベルがあれば十分です。「とにかく必要なことに全力を注ぐ」これが最短最速で英語力を実践レベルに引き上げる秘訣なのです。
絞り込めば勉強は効率化できる!
英語を勉強し始めるときに「TOEICで○点とる」を目標にしてしまうと必要のない技能の勉強までしなくてはなりません。しかし「ビジネスで通用する英語を身につける」と「TOEICで○点とる」は必ずしもイコールではないのです。
まずはここで挙げた4つの「捨てる」を意識し、自分にとって必要な英語とは何かを明確にしましょう。どんな勉強をするのか、何を使って勉強をするのかはその後です。
参考文献『40歳を過ぎて英語を始めるなら、TOEICの勉強は捨てなさい』
