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読書には、ストレス解消効果がある!?
自分の知識を増やすために、読書をしなければならない。そう思って、読書をしている人も多いのではないでしょうか。
筆者自身、読書はとても好きですが、仕事として読まなければならない本が多数ある場合は、どうしてもストレスがたまってしまう場合があります。
しかし、実は、読書という行為は、ストレス解消にとても効果的です。以下のデータはサセックス大学(イギリス)の研究チームが、ストレス軽減についての研究を行った結果です。
このような活動がストレス軽減効果を持っていることがわかりました。
・音楽鑑賞 61%
・コーヒーを飲む 54%
・散歩をする 42%
・ゲームをする 21%
そのなかで、
・読書をする 68%
他の項目より高く、読書はより高いストレス軽減効果を持っていることが分かりました。
参考: TELEGRAPH.CO.UK-「Reading ‘can help reduce stress’」
(この実験は、活動の種類別に、心拍数の低下や筋肉の緊張緩和の程度を調べ、ストレスの軽減度合いを計測したものです)
さらに、読書によるストレス軽減効果は、6分間でその効果を認めることが出来と言います。
読書がストレスに効く“ワケ”

では、なぜ読書がストレス発散に効果的なのでしょうか。
そもそも、ストレスが起こる仕組みは以下のようになっています。脳にある扁桃体が不安や恐怖を感じると、ストレスホルモンが分泌されたり、あるいは自律神経が興奮したりします。そして結果的に心拍数が増えたり、血圧が高くなるなどの反応が起こります。これがいわゆる、「ストレス反応」です。
それによって、じんましん・アレルギー、胃炎、胃潰瘍、脳卒中、糖尿病、うつ病などを引き起こしてしまうのです。
そのようなストレスの軽減に読書が効果的な理由は、大きくわけて以下の2つが考えられます。
まずは、読書をすることで本の内容に没頭することができるためです。それによって扁桃体の活動が沈められ、鎮静効果が生まれます。読書には、この効果が他の活動よりも高いと考えられます。
もうひとつの理由は、「共感体験」を得ることができるためです。人間はそもそもコミュニケーションを求めます。なぜなら、孤独感を感じることは大きなストレスとなってしまうからです。しかし、読書によって「共感体験」を得ることで、ストレス解消に大きく役立つのです。
1年に2〜3つテーマをもって、読書に取り組む
今や読書法については、さまざまな情報がインターネットや書籍に掲載されています。速読、精読、読書マーキング法などの方法が紹介されていますが、ここでは、遠越段氏の著作『知識を自分のものにする最強の読書』を元に、読書法を紹介していきます。
まず、遠越氏によれば、1年に1つ〜3つほどのテーマを持つことを推奨しています。自分のなかで、「これは気になる!」というテーマを見つけてみましょう。それを1年ほどかけて関連本を読むだけで、かなりの知識量になります。
1年という制約を設けたのは、他のテーマに移ることで、より自分の幅が広がるためで、自分のなかで、もう1年同じテーマで本を読みたいと思うのであれば、それでも良いでしょう。
「これだ」と思うテーマを決めたら、まずは代表的な研究者の本を読んでみましょう。そうすることで、そのジャンルの現在の動向と概要をつかめることができるはずです。その後、数冊を読み、内容を比べていくことで、より理解度は深まります。
テーマごとに1冊ノートを用意し、気になるところを書き込んでいくことも遠越氏は推奨しています。メモや抜き書きだけでなく、自分の考えを書き加えていくことで、その後、名著や代表作、その他を読んでも全体を理解でき、批判的に読めるようになります。
新聞チェック、立ち読みも“速読”!

速読については、さまざまな情報、著作がありますので、ここではポイントを絞って、紹介します。
①新聞速読法
新聞を毎日きちんと読もうとすれば、かなりの時間がかかってしまいます。遠越氏は基本的に、30分で5紙読むようにするし、気になる記事は、切り抜いてファイリングしているそうです。
新聞の紙面全体をパッと見て、興味があるところ、重要なところをまず読み、さらに、キャッチコピーや写真を見てリード文を読み、そこからさらに詳しく読む。そして切り抜きをするかどうかを判断すると良いでしょう。
②立ち読み法
本屋を立ち読みすることも、多くの情報を得ることに繋がります。さらには、気になる本を探し、パラパラとめくるだけでも情報を得ることができるので、これもまた、速読に繋がります。
遠越氏による立ち読みの技法は以下のようなものです。
1.本屋を一周して、どのジャンルごとに本が置かれているかを知る。
2.本好きで、親切そうな店員さんを見つける。
3.好きなジャンル、今求められているジャンルのコーナーにはどんな本があるか、覚えるくらいに眺める。これだけでも相当な力(読書力や知識など)が身につく。
4.気になった本を手に取って、出版社名と著者名、そして最後の奥付(本の巻末にある著者略歴などが掲載されているところ)を見て、どれくらい売れているか、いつ出版されたかなどを見る。
5.パラッと中を見て、数分でページをめくって本全体を見る。
6.気になる文章があれば、そこを1分くらいで読み、ビビッとくれば買うか、そのうち買うぞと決める。
7.立ち読みをするお店は決めておくと本の流れがよくつかめ便利である。2、3店を選んでおきたい。
8.旅行をしたときは、そこにはご当地本が必ずあるものだ。これも役立つし、記念にもなる。(前掲書、31〜32ページ)
大切なのは、行きつけの本屋を決め、新しい情報・動向をすぐに把握できるくらい、書棚をよく眺めておくことですそのようにして、常にアンテナを張っておくだけでも、自分のテーマを深めていく良い方法になると言えます。
ここぞという時には、“精読”を!

では次に、精読について紹介します。特に精読すると良いのは、古典や名著などが良いと言われています。逆に、ビジネス書や最新の情報を集めるときは速読が良いと言われています。
精読の方法もそれぞれありますが、遠越氏が進める精読方法は、とにかく本に書き込みをしたり、ノートにまとめたりすること。本に書き込みをする場合、一番役に立つ方法は、本の最初のほうにある余白ページに、重要部分とそのページ数が書くことです。それによって、本全体の内容を把握することができます。
また、多くの人がおこなっているであろう、書き込み、ページ折り、抜き書きなどももちろん有効です。さらに理解を深めるために、自分がそのときに考えたり疑問に思ったりしたことを書いておくと、そののちに読み返したときに、一気にその理解は深まるでしょう。
ただし、それを各章などでおこなっていると、本を読むスピードが落ちるなどして興ざめなところもあり、その本を何度目かに読むときくらいにやるのが適切だと遠越氏は述べています。
あるいは、読書のスピードを落としたくないときは、ページの角を折る(=ドッグ・イヤー)だけでもあとで読み返す際に有効になります。
ただし、遠越氏は、重要な部分に遭遇した際は、抜き書きをすることを何度も推奨しています。もちろん、理解をより深めることにつながりますが、それだけではなく、自分の思考と文章を練ることにも関連する作業であるからです。
「文章を上達させる最大の秘訣とは、優れた本をたくさん読むにつきるといわれる。そしてもっとよいのは、その中で素晴らしいと思われる部分を抜き書きすることである」(前掲書、96ページ)
抜き書きは、文章力・思考力を身につけるひとつの方法でもあります。時間がなくて難しいという方も多いと思いますが、全てを書き出すのではなく、必要な部分のみを書き出しておくだけでも、のちのちの自分の知識に、そして何より、自身の文章力・思考力向上につながります。
もちろん、抜き書きだけでなく、自分の考えや批判的意見などを記しておくことも効果的です。
速読✕精読=速精読で、本の理解度を深める
さらに、遠越氏は、この「速読」と「精読」を同時におこなう「速精読」も効果的だと述べています。
ただし、行うのは本当に必要に迫られた、大事な仕事のときなど。さらに、準備段階として、その分野の知識はある程度備蓄しておくことが望ましいとしています。なぜならば、ある程度の時間と体力を要するので、速精読を毎回のように行うことは難しいからです。
やり方としては、まずは速読をし、ある程度の目安をつけたのちに、じっくり精読をするという流れです。部分読みとして精読を行うことも、全体を精読するのもありなので、その本の内容によって、使い分けるとよいでしょう。
旅行先のホテルや、数日の休みを確保できたときなど、一人きりで籠もれる場所でおこなうのが望ましいでしょう。
読書をライフスタイルのなかに取り込もう
「最近本を読んでいないから、読書をしないと」と言って突発的に本を読んでも、簡単な本しか読めなかったり、途中までで挫折してしまったりと、自分の興味をより深めることがなかなか進めることができません。
読書は1冊1冊読んでいくことで、自身の知識がより深まっていく、いわば、「積み重ねの勉強」です。1冊だけ、自分が興味のある本を読んだだけでは、そのテーマに精通していると言えません。
そのためにも、読書の習慣を身につけることが大切です。
1日のなかで、携帯を触っている時間、テレビを見ている時間などを15分でも30分でも短縮するだけで、読書をすることができ、たった数十分の読書でも大きな効果を期待することができます。
6分間の読書がストレス軽減につながることはもちろんのこと、遠越氏は速読すれば30分で1冊読めると言います。1日15分でも読書ができれば、1週間で十分な読書量をこなすことができるでしょう。
また、年に2回から3回は、本の整理をして置く場所を変え、同じテーマの本をできるだけ一箇所に集めるようにするとよい、とも遠越氏は述べています。本棚を整理することで、自分の頭のなかで、情報が整理され、また記憶を呼び起こすことにもつながります。
遠越氏いわく、2万冊くらいまではどこに置いているか、ほぼ自分の頭の中に入れることができるそうです。どこにどんな本があるか、記憶をしているだけでも、そのテーマに関しても知識をキープすることができます。
読書の秋。今年は少し方法を変えて、読書の時間を過ごしてみると、より効果的なストレス軽減、読書体験、知識増幅につながるのではないでしょうか。
参考文献:
遠越段 著『知識を自分のものにする最強の読書』2016年、総合法令出版
NHKスペシャル 「シリーズキラーストレス」
