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『中身化する社会』に続く必読の1冊
以前アップした本サイトの記事『SNSの影響で“イケてる”の基準が変わった!新しい価値観3Aとは?』で、SNSによって思考や価値観に変化が起こっているという話をしましたが、このSNSによる価値観の変化をいち早く紹介した書籍に編集者の菅付 雅信さんの著書『中身化する社会』があります。
この著書の中では、衣食住、広告、ファッション、働き方……すべてが記号的なブランドやラグジュアリーから、より本質的な「中身化」に向かっているという考察が示されていました。この書籍が出版されてから、いろんな書籍や記事で『中身化する社会』の引用や、明らかに影響をうけたと思われるような内容の記事を数多く目にしました。
そして今回、満を持して『中身化する社会』の続編とも言える『物欲なき世界』がリリースされ、メディア界隈や、マーケティング界隈では大きな話題となっています。これからの消費行動や人々の価値観がどのように変化していくのか、日本だけでなく海外の事例もふんだんに盛り込まれた力作です。
今後この本で紹介されたトピックを踏まえずに、これからの消費社会について語ると、相当イケてないビジネスパーソンと認識されてしまうかもしれません。そうならないように確実に読んでおきましょう。では、発売記念トークショーで使用されていたスライドと共に、本書のトピックをいくつかご紹介します。
ライフスタイルを売る時代

いま一番メディアで語られる単語の一つが「ライフスタイル」だそうです。ようは成熟した社会になってきて、商品単体で売るのが難しくなってきているので、ライフスタイル提案型の売り方が主流になってきているのです。ライフスタイル・マガジンの創刊が相次ぐ中、既存の雑誌もファッションやカルチャー中心から方針を変えて、ライフスタイル全般について広く取り上げるようになってきているそうです。
印象的なのは2012年6月号からリニューアルしたマガジンハウスの『ポパイ』で、部数、広告ともに大きく伸びています。創刊当時『ポパイ』が掲げていた“シティーボーイ”という概念を今のライフスタイル全般に再提案しているのが同紙の特徴です。
男性ファッションとして定評のある『HUgE(ヒュージ)』の元ディレクターの右近亨さんは「ファッションにこだわりを持つ人たちが、今は同じ軸のまま食や雑貨など他のものを見ているという実感を得ている」と語っています。このライフスタイル化は雑誌だけではなく流通業界でも起こっており、生活提案をうたったライフスタイルショップという新業態が急増しているそうです。
装飾的なラグジュアリーの終焉

ライフスタイル・ショップの先駆的な存在として注目をあつめている南青山のThe Tastemakers &Co.(テイストメーカーズ)のお店のテーマは「使い捨ての対極」だといいます。代表の北館洋一郎さんは、日常的なものへこだわることに価値を見出す人々を見ている中で、都市生活者が目指すラグジュアリーな生活様式の方向性の変化を次のように語っています。
「世界基準で見ると、僕らが羨ましく思う生活をしている人というのは、きわめて日常的なものにこだわった生活をしているし、こうしたライフスタイルがラグジュアリーの新しい到達点なのではないかと思います。世界の主要都市を見ても、装飾的でファンシーなラグジュアリーが終焉しているというか、人々がそうしたものに疲弊している印象があります。
ただ、一方でそれは都会の生活に限ってのことだとも感じますね。僕としては、ここに置いてある商品が田舎に必要だとは思わないんです。どちらかというと都市型のライフスタイルに当てはまるんですね」。
中国の社会発展の過渡期としての「物欲」

経済誌『エコノミスト』の調査によれば中国のラグジュアリーブランド市場は世界市場の29%の規模に達していて、アメリカ、日本を越えて世界最大の売上を誇るまでに成長しているそうです。
中国の主流の価値観は高級ブランドを買い求め、大型家電のある大きな家に住みたいというラグジュアリー志向が大多数なようですが、一方で健康的で心地よい生活の質の向上に関心のあるロハス志向の人たちも出てきているそうです。メインストリームではありませんが人口の3~4%程度、つまり4200万人~5000万人ぐらいの巨大なマーケットになる可能性があるといいます。
拡大しつづけるシェアリングエコノミー

アメリカにおけるシェアリング・エコノミーの市場規模は約3兆円にのぼるといいます。日本でもシェアハウスやカーシェアリングなどが急速に広がってきています。シェアハウスに興味があるという人が2010年のアンケートでは11.9%なのに対して、2014年では25.5%に伸びています。
シェアリングが注目される理由は、経済合理性の部分が大きく、トヨタが自社で運営する自動車ポータルサイトで、同じ頻度で車を利用するなら、車を購入するよりもレンタカーを利用する方が断然安いという試算を公式に発表しています。
趣味で車を持つのはいいが、都市生活者にとって車は経済合理性のないものになっています。一般の人の家に泊まれるAirbnbもようやく法整備に向けて動き出し、どんどんシェアできる部分が増えていくことは間違いありません。
物欲なき世界はいつ訪れるのか
本書には、上記のようなトピックが満載です。もちろんいきなりすべての人の物欲がなくなり、物が売れなくなる世界がすぐにやってくるわけではありませんが、いま世界中でこういった流れが起こっていることはたしかです。
豊富な事例と照らしあわせて、自分の仕事にどのような影響があるのか、じっくり考えてみてください。読んで決して損のない1冊です。すぐにAmazonが在庫切れしてしまうため、在庫がある時に購入することをオススメします。

