池上彰、西加奈子、園子温…超レアなブックガイド、名著百選が凄い

お店で買えない最高のブックガイド

名著百選という、幻のブックガイドをご存じでしょうか?

西加奈子、池上彰、市川染五郎、佐藤可士和、蜷川実花、浅井リョウ、園子温、小田嶋隆、といった一流の作家や、クリエイター、著名人などがおススメの一冊を紹介する超豪華なブックガイドです。しかもこのブックガイドは非売品のため、お店で購入することができません。

これはもともと、ブックファースト新宿店の周年を記念して行われた2010年のブックフェアがはじまりのようです。同店に関わるさまざまな人に1冊「名著」を選んでもらい、一堂に陳列するという企画が行われました。このブックフェアの選書をまとめて小冊子にしたのが、この幻のブックガイド、名著百選です。

これが大好評だったようでそれ以降、毎年周年タイミングの11〜12月にブックフェアが行われ、この時期に5,000円以上購入すると小冊子がもらえます。それ以外でも、ときどき小冊子がもらえるフェアをやっているようなのですが、不定期のため気になる方は店頭で確認してください。

ブックファースト新宿店は、新宿駅西口改札から地下道で直結、約1,000坪に90万冊の品揃えを誇る大型書店です。品揃え、選書、陳列、空間の気持ちよさなど、都内でも一番落ち着ける書店のひとつです。ぜひ足を運んでみてください。

この、ブックファースト新宿店で行われている名著百選があまりにも素晴らしいので、今回は、過去に名著百選に登場したとトップクリエイターの中からほんの一部だけご紹介します。

ジャーナリスト 池上彰さんの選書

「君たちはどう生きるのか」 吉野源三郎

Unknown
出典:「君たちはどう生きるのか」

初版は1937年。読みつがれてきた珠玉の名作です。吉野源三郎がこどものために、人間はどう生きるか、という哲学をやさしくおしえてくれたものです。図書館で読んだことのある方も多いことでしょう。コペル君やおじさんのことばを当時はどのようにとらえたのでしょうか。時代は変わっても、内容はまったく古くありません。いじめの問題、正義感、人付き合いの哲学など、おとなになった今でも新鮮に読めます。
ポプラ社 オフィシャルサイトより

こどものためにかかれていますが、「アルケミスト」や「星の王子さま」のように大人になってから読んでもいろんなことを感じとれる作品です。子供の本棚に、こっそり差し込んでおきたい本です。

歌舞伎役者 市川染五郎さんの選書

「黒猫、アッシャー家の崩壊」 エドガー・アラン・ポー

Unknown-2
出典:「黒猫、アッシャー家の崩壊」

詩人であり、批評家であり、推理小説の祖であり、SF、ホラー、ゴシック等々と広いジャンルに不滅の作品の数々を残したポー。だがその人生といえば、愛妻を病で失い、酒と麻薬に浸り、文学的評価も受けられず、極貧のまま、40歳で路上で生を終えた―。孤高の作家の昏い魂を写したかのようなゴシック色の強い作品を中心に、代表作中の代表作6編を新訳で収録。
Amazon商品ページより

1841年に世界初の推理小説「モルグ街の殺人」を発表し、推理小説の祖としても知られるエドガー・アラン・ポー。酒と麻薬に浸り極貧になるあたりチャールズ・ブコウスキーをイメージさせますが、最後まで文学的評価も受けられず路上で生涯を終えるのは、それ以上にハードコアな人生です。40歳で生涯を終えた謎の死をモチーフにした映画も制作されています。

クリエイティブディレクター 佐藤可士和さんの選書

「疲れない身体をつくる免疫力」 安保 徹

Unknown-4
出典:「疲れない身体をつくる免疫力」

病気にならないために――今日から気楽に始める「体質改善」!たとえば、「なるべく日光をよく浴びる」「1時間に1回、大きく伸びをする」「1日に3回、爪をもんでみる」「お風呂にゆったりと浸かってみる」などなど、ちょっとした工夫で、みるみる体が元気に! しかも、免疫力が高まるから、疲れない、病気にならない!

Amazon商品ページより

佐藤可士和さんに限らず、トップクリエイターの方は例外なくいい作品をつくるための健康管理法に強い関心を持っていますね。Mr.Childrenのアートワークなどで有名な森本千絵さんはサーフィンをやっており、身体で感じることを大切にしているといいます。クリエイティブとフィジカルの関係は興味深いです。

写真家 蜷川実花さんの選書

「メメント・モリ」 藤村新也

Unknown-3
出典:「メメント・モリ」

書名の『メメント・モリ』とは、「死を想え」という意味で、ヨーロッパ中世末期にさかんに使われたラテン語の宗教用語だ。この本には、著者の短いコメントが付けられた74枚のオールカラー写真が収められ、生の光景に潜む無限の死の様相が極彩色で提示されている。たとえば、「ニンゲンは犬に食われるほど自由だ」とのコメントがつけられた写真には、荒野に打ち捨てられたヒトの死体を野犬が貪るように食らい、それをカラスが遠巻きにしている光景が写し出されている。
Amazon商品ページより

Mr.Childrenの「花」という楽曲には副題で「花 -Mémento-Mori-」とついてます。桜井さんが友人に勧められて感動した、藤原新也さんの著書からきているというエピソードがありますが、この本の持つインパクトはそれぐらい強烈です。思春期に出会ってしまうと影響を受けすぎて、放浪の旅に出てしまいそうです。「深夜特急」なみに影響力大です!

作家 浅井リョウさんの選書

「タダイマトビラ」 村田沙耶香

Unknown-5
出典:「タダイマトビラ」

自分の子どもを愛せない母親のもとで育った少女は、湧き出る家族欲を満たすため、「カゾクヨナニー」という秘密の行為に没頭する。高校に入り年上の学生と同棲を始めるが、「理想の家族」を求める心の渇きは止まない。その彼女の世界が、ある日一変した―。少女の視点から根源的な問いを投げかける著者が挑んだ、「家族」の世界。驚愕の結末が話題を呼ぶ衝撃の長篇。
Amazon商品ページより

家族に愛されたいという強烈な欲求を独自のアイデアで表現している意欲作です。今読んでも面白いと思いますが、できれば10代のときに出会いたかった本です。

作家 内田 樹さんの選書

「新訂 福翁自伝」 福沢諭吉

Unknown-6
出典:「新訂 福翁自伝」

明治30年、福沢は速記者を前にして60年の生涯を口述し、のちその速記文に全面加筆をほどこして『自伝』を書きあげた。近代日本の激動期を背景に、常に野にあって独立不羈をつらぬいた精神の歩みが大らかに自在に語られている。語るに値する生涯、自らそれを生きた秀れた語り手という希有な条件がここに無類の自伝文学を生んだ。
Amazon商品ページより

今読んでも古びた印象を受けないのは、福沢諭吉さんが自由な精神を持っていた人だからだと思います。この人がいなければ、いまほど日本の文化は発展してなかったかも知れません。自伝としても最高に面白いです。

作家 垣根涼介さんの選書

「悲しき熱帯」 レヴィ=ストロース

Unknown-7
出典:「悲しき熱帯」

1955年にフランスで刊行された文化人類学者クロード・レヴィ=ストロースの著書である。1930年代のブラジルの少数民族を訪ねた旅の記録をまとめた紀行文だが、その文章にちりばめられた思想、特に優れた未開社会の分析と、ヨーロッパ中心主義に対する批判により後に本書はセンセーショナルな評価を受け、文化人類学、また構造主義におけるバイブルのひとつとなる。
Wikipedia 悲しき熱帯より

これはビジネスマン必読の一冊でしょう。本書で紹介された「ブリコラージュ」という概念は、その場で手に入るものを寄せ集め、それらを使って何が作れるか試行錯誤しながら、最終的に新しい物を作ること。これはベンチャー経営など現在にも有効な概念だと思います。

編集者 松浦弥太郎さんの選書

「三時のわたし」 浅生ハルミン

Unknown-8
出典:「三時のわたし」

午後三時、毎日なにしてる? イラストレーターにしてエッセイストの浅生ハルミンさんの午後三時をイラストとエッセイで三六五日綴った新感覚日めくり日記。
Amazon商品ページより

なにげない日常を切り取った、お気に入りの本を見つけることができたら、それは本当に宝物だと思います。なんてことはないんだけれども、なんかいいんだよねという、自分だけの一冊を探してみてください。

映画監督 園子温さんの選書

「北回帰線」ヘンリ・ミラー

Unknown-9
出典:「北回帰線」

“ぼくは諸君のために歌おうとしている。すこしは調子がはずれるかもしれないが、とにかく歌うつもりだ。諸君が泣きごとを言っているひまに、ぼくは歌う。諸君のきたならしい死骸の上で踊ってやる”その激越な性描写ゆえに長く発禁を免れなかった本書は、衰弱し活力を失った現代人に最後の戦慄を与え、輝かしい生命を吹きこむ。放浪のパリ時代の体験を奔放に綴った記念すべき処女作。
Amazon商品ページより

独特な文体につめ込まれたエネルギーがものすごいです。園子温監督の作品に通じる、ほとばしる熱量、大胆さ、猥雑な感じなどをギュッと、閉じこめたような強烈な作品です。園子温監督の作品が好きな人はぜひチャレンジしてほしい一冊です。

作家 西加奈子さんの選書

「HHhH」ローラン・ビネ

Unknown
出典:「HHhH」

ノーベル賞受賞作家マリオ・バルガス・リョサを驚嘆せしめたゴンクール賞最優秀新人賞受賞作。金髪の野獣と呼ばれたナチのユダヤ人大量虐殺の責任者ハイドリヒと彼の暗殺者である二人の青年をノンフィクション的手法で描き読者を慄然させる傑作。
Amazon商品ページより

コアな本好きの間では注目作として必ず名前があがる1冊です。ドキュメンタリーのような独特な文体は好き嫌いが分かれそうですが、凄い作品であることは間違いありません。歴史小説や戦争小説などが好きな人にはおススメの一冊です。

書店に行こう

imasia_2339692_M

いかがでしたでしょうか。実際の名著百選の中には選書者のおススメコメントが掲載されていますので、興味がある方はぜひ、ブックファースト新宿店をチェックしてください。

書店では、こういった素晴らしい選書企画が定期的に行われており、ネットではまだまだ出会えない情報がたくさんあります。ようやく暖かくなってきたので、書店に遊びにいきましょう。

[文]頼母木 俊輔  [編集]サムライト編集部