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筋トレが続かないのは「頑張りすぎている」から
筋トレの理論には様々なものがありますが、今回紹介するのは「忙しい人」「長時間のトレーニングはやりたくない人」「週に1〜2回の筋トレで成果を出したい人」にぴったりの、超高効率トレーニング理論です。この理論を提唱するのがアメリカのボディビルコンテストでの優勝経験も持つ北島達也さん。北島さん曰く日本のトレーニー(筋トレをする人)は、「頑張りすぎ」が原因で結果が出せず、モチベーションを維持できないのだそうです。ここでは北島さんの著書『ハリウッド式 THE WORKOUT – 分単位で自分史上最高の身体をつくる 脳と身体のコネクトメソッド』を参考に、「北島メソッド」の基本を紹介します。
初心者は「週1回10分」だけで筋肉がつく!
北島メソッドの基本は「1部位・週1回・3セット+α」です。例えば男性の多くが最初に鍛え始める胸の筋肉を大きくしたいと思うならば、ベンチプレスのような高重量が扱える大胸筋の種目を3セットだけ行い、そのあとパンプアップ*(充血)させるための+αの種目を行うだけです。時間にしておよそ10分〜15分程度で終わってしまいます。
このたった3セットも、全てのセットで全力を尽くすわけではありません。北島メソッドにおいて、全力を尽くすのは最後の3セット目だけ。1セット目はフォームを確認しつつ、使う筋肉へ意識を集中させていく練習セット、2セット目は3セット目のためのテンションを盛り上げるセットという位置付けで、あくまで準備段階に過ぎません。
早く結果を出したい人の多くは、1回のワークアウトでさまざまな部位を鍛えようとしがちですが、これは全くの逆効果です。引用:前掲書p26
さらに北島さん曰く、初心者には「1日で全身を鍛える」「1日で複数の部位を鍛える」というやり方はふさわしくないと指摘しています。筋肉は大量の血液を必要としますが、一度に複数の筋肉を鍛えすぎると心臓が筋肉の成長のための血液を供給できず、中途半端な結果に終わってしまうからです。
つまり筋トレの初心者が最短で筋肉をつけるためには、1部位にターゲットを絞って、週にたった1回10分〜15分の筋トレをするのがベストだというわけです。しかも全力を尽くさなくてはいけないのは3セット目のたかだか1分足らずの時間だけ。辛くて疲れる一般的な筋トレのイメージを覆す理論です。
※パンプアップ:軽い重量で高回数のトレーニングを行うことで筋肉を追い込み、特定の筋肉への血流量を増やして筋肉の成長を促すテクニック
なぜ「週1回10分」で筋肉がつくのか?

●筋肉は「鍛えたぶんだけ大きくなる」わけではない
一般的には、辛い思いをすればするほど体力を使えば使うほど、体は強くなると思われがちです。しかしボディメイクに関していえば、この考え方は間違っています。
なぜなら筋肉は長時間鍛えるからではなく、脳が身の危険を感じるほどの刺激を筋肉が受けることによって成長するからです。であれば毎回クタクタになるほど筋トレをする必要はありません。短時間でも脳に「もっと強くならないとマズい」と感じさせてやれば、それで筋肉は大きくなるのです。
●「奇跡の7秒間」は週に1回しかやってこない
脳が危機感を感じるほどの負荷をかけるには、今持っている最大の筋力を使う場面を作ってやる必要があります。しかし私たちの体は、そう簡単に最大筋力を使えるようにはできていません。
ひとつの筋肉が最大筋力を出せるチャンスは、48〜72時間に一度、たった7秒と言われており、この「奇跡の7秒間」で受けた刺激が筋肉を最も成長させます。引用:前掲書p25
例えば大胸筋の最大筋力を一度発揮したら、次同じ力が出せるのは2〜3日後になります。腕や背中、脚も同じです。「トレーニングそのものが好き」という人は別として、「きちんと結果を求めるワークアウト(仕事)」として行うのであれば、高頻度で筋トレを行うべきではないのです。さもなければ別段筋肉を成長させない、最大筋力以下の筋トレを重ねることになり、努力に見合った成果が得られないままになってしまいます。
「でもそれなら週に2〜3回できるのでは?」と思うかもしれません。しかし最大筋力を使う筋トレは、筋肉以外の靭帯や腱にもダメージを与えます。これらの回復期間を含めると1部位週2〜3回の筋トレは多すぎます。したがって1部位週1回、多くとも2回に抑えるべきというわけです。
●集中力は長時間保てない
また、最大筋力を使うためには心身ともにテンションが最高潮になっている必要があります。「火事場の馬鹿力」という言葉があるように、人間は危機を感じたり、極度の興奮状態に陥ったときに初めて文字通りの全力を出すことができます。
このためには筋トレに意識を集中させ、かつ「怒りのホルモン」であるアドレナリンを分泌させて、脳のタガを外してやる必要があります。基本の3セットのうち、1セット目と2セット目はそのための準備セットでなくてはなりません。
しかし筋トレの途中でジムのトレーナーや他の会員と世間話をしたり、週末の楽しい予定などに意識を逸らしてしまうと、心身のテンションは急激に下がってしまいます。これは体力的に疲れているときにも起こります。長時間トレーニングするほど筋トレ中に世間話などが入り込む隙は多くなり、疲労による集中力不足の可能性も高まります。
集中力不足は最大筋力の発揮を妨げるばかりか、怪我の危険性も高めます。したがって効率と結果を求めるワークアウトを行うには、短時間で切り上げる方が良いのです。
超高効率トレーニングのための3つの条件

●脳と筋肉のコネクト
しかし単に頻度を下げて、時間を短くするだけでは結果にはつながりません。北島さんは超高効率トレーニングに必須の要素として「脳と筋肉のコネクト」を挙げています。前述のように筋肉の成長の可否は脳が握っています。そのため成長させたい筋肉を脳にしっかり意識させることで、よりピンポイントで筋肉の成長を促せるのです。
具体的な方法としては、次のような手順が効果的です。
1.成長させたい筋肉の場所を知り、その筋肉を触りながら動かしてみる。
2.簡単なエクササイズを行い、触らなくても成長させたい筋肉を意識できるようになる。
3.成長させたい筋肉を意識しながら、筋トレを行う。
筋トレ初心者にとって、重いダンベルを持ちながら明確に「今どこの筋肉がこのダンベルを持ち上げているのか」を意識するのは、至難の技です。だからこそ初めのうちは1部位に絞って、その感覚を身につける必要があるのです。筋トレをしない日などに上記の1や2を行うようにすれば、飛躍的に「脳と筋肉のコネクト」がうまくいくようになるはずです。
●スピードを重視する
また「スピード重視」も北島さんが挙げる必須の要素の一つです。日本の筋トレの常識は「フォームを意識しながらゆっくりと動かす」です。「脳と筋肉のコネクト」を行う段階は別として、この方法は筋肉を成長させるためのワークアウトとしては問題があります。
運動エネルギーは速度の二乗に比例するため、ダンベルやバーベルを速く動かせば動かすほど1回の動作に発揮される筋力は大きくなるからです。筋肉を成長させるための最重要課題は最大筋力の発揮。これをクリアするためには「フォームを保ったまま、できるだけ速く動かす」が正解なのです。
●「ワークアウトの基本姿勢」を体得する
筋トレでは正しいフォームを身につけることが、安全面でも効果の面でも必須です。しかし北島さんはその前に「ワークアウトの基本姿勢」を身につけるべきだといいます。
1.胸を張る
2.骨盤を前傾させる
3.重心をつま先に置く
引用:前掲書p67
この基本姿勢はワークアウト中の怪我の防止に効果があるとともに、西洋人的なメリハリのある筋肉を日常生活の中でも鍛える効果があります。
北島メソッドなら結果が出る!続けられる!
北島さんが提唱するメソッドは実は非常に堅実な理論に裏打ちされていて、ある意味で伝統的な近代的トレーニングを日本に根付かせようとしているとさえいえます。というのも「長時間のトレーニングはボディメイクの弊害である」「鍛える筋肉を徹底的に意識しろ」といった主張は、多くのプロビルダーを育てたトレーナーであるクリス・アセートの名著『ボディビルハンドブック』でも書かれていることだからです。
これはダイエットブームやエクササイズブームを経てもなお、日本に正しいボディメイクのメソッドが浸透してないことの証明であり、北島さんのメソッドが多くのボディビルダーが実践してきたものであることの証明です。
北島メソッドの真価はここにあります。なぜなら「必ず成果が出る」からです。週1回10分で結果が出ればたいていの人は嬉しくなり「もっと続けたい」「他の部位も鍛えたい」となります。そうなればボディメイクが習慣となり、健康面や身体能力面などでのメリットもどんどん増えていきます。今まで筋トレが続かなかった人、辛いことが大嫌いな人には、これ以上ない筋トレの理論といえるでしょう。
超高効率トレーニングで自分を変えろ!
「1部位・週1回・3セット+α」の基本や、今挙げた3つの条件を知っただけでは筋肉はつきません。今まで効果の出ないトレーニングを続けてきた人は、その中に北島メソッドを取り入れてみる。
何度も筋トレを挫折してきた人は、もう一度「1部位・週1回・3セット+α」を基本に再開してみる。北島メソッドをどうやって取り入れていいかわからない人は、ジムのトレーナーやパーソナルトレーナーに相談しながら、取り入れ方や正しいフォームを教えてもらう。なんといっても週1回10分だけでいいのですから、きっと続けられるはずです。
参考文献『ハリウッド式 THE WORKOUT – 分単位で自分史上最高の身体をつくる 脳と身体のコネクトメソッド』

