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美術鑑賞、楽しめていますか?
今や現代人の趣味・教養には欠かせない美術鑑賞。だからこそ、ゆっくり休日に美術館巡りをしたい、美術に関する知識をもっと増やしたい、美術館デートもしてみたい。そう思っている人も多いことでしょう。
しかし現実は、美術館は混雑していてゆっくり観る余裕もなく、長い時間歩き回ってクタクタになってしまいます。人気の展覧会と聞いて足を運んでも全く面白くないことも多く、美術館巡りは長続きしません。
実は、美術鑑賞のコツはいくつかあります。ここでは、美術館に行くまでと、美術館に行っているときに分けて、それぞれコツを紹介します。
これさえすれば、週末の美術館巡りもあっという間に楽しくなります!
美術館に行くまでのポイント
1.時期を選ぶ
遊園地や行楽地の場合、開幕直後が混みやすいですが、美術館の場合は、実は開幕後はあまり混まず、逆に閉幕直前が混みやすいと言われています。
比較的美術館が空いている時期は以下となります。
・開幕直後の数週間(開幕当日、翌日、その週末は除く)
・お花見、夏休みなど、行楽シーズン
・悪天候の日
一方で、混んでいる時期は以下になります。
・開幕当日、翌日、その週末
・閉幕間近(特に最終日近く週末)
・閉幕日当日
・テレビ番組などで取り上げられた直後(NHK「日曜美術館」など)
ツイッターの展覧会公式アカウントや美術館アカウントで混雑状況を配信していることもあるので、チェックしてから展覧会に行くことも効果的です。
2.時間帯を選ぶ
「開館直後の午前中が、一番人が少ない」という声をよく聞きますが、実は、逆に多くの人が駆けつけてしまい、開館前から行列ができていることがよくあります。
では、比較的空いている時間帯はいつなのでしょうか。
・金曜あるいは土曜の夜(夜間開館)
・15時以降
・閉館間近
・ランチタイム
美術館では“夜間開館”という通常時間よりも長めに開館するときがあります。その多くが金曜あるいは土曜の夜です。
この“夜間開館”があまり知られていないため、美術館は18時までというイメージがあり、実は今、この夜間がもっとも人が少ない時間帯になっています。
週末と言えば、飲みに出かける人も多いと思いますが、たまには美術鑑賞も良いのではないでしょうか。
ほかにも、閉館間近の夕方や、ランチタイムの時間や比較的空いていると言われています。
人気の展覧会の場合は、休日などに臨時夜間開館が増える場合もあります。ホームページやツイッターをチェックしておくと、情報が入りやすいです。
3.チケットは事前に調べてから入手する
人気の展覧会によっては、チケット購入まで30分待ちということもザラにあります。そのため、事前にチケットを手に入れておくことをお勧めします。
さらに、前売り券は、当日券よりも200〜300円安くなることが多いので、一石二鳥!美術館のほか、コンビニなどで入手することができます。また、インターネットでネット割引をしている展覧会も多くあります。
また、「相互チケット割引」という複数の美術館を巡ると入場料が安くなるサービスもあるので、いろいろな展覧会を観て回りたいという人にはおすすめです。
東京を中心とする80の美術館や博物館、動物園などの入場券または割引券が1冊になるパスです。2〜3箇所行くと、元が取れます。
関西地区を中心に93の美術館や博物館などの入場券、割引券が綴られているパスです。こちらも3箇所ほど巡れば、元が取れます。
東京・上野の美術館や博物館などの常設展などに各1回入場できる入場券です。上野を中心に美術館巡りをする人にとっては便利なパスポートです。
展覧会によっては、文化の日(11月3日)や、国際博物館の日(5月18日)などは無料解放しているところもあるので、事前のチケットチェックは必須です。
4.服装・手荷物
外出の際は、おしゃれをしたいもの。
でも、美術鑑賞のときに歩きにくい靴やヒールをはいてしまうのは、ご法度です。自分の足が疲れるだけでなく、美術館によっては足音が響くので、ローヒールでなるべく足音が響かない靴がベターです。
手荷物は少しでも大きい鞄の方は預けるほうがよいです。
会場で図録やグッズなどを買いたい方は、展覧会場からそのままグッズ売り場までつながっていることが多いため、財布を持っていくことをお勧めします。
美術館内でのポイント
5.順番通りに見る必要は全くない!
展覧会場の入口付近が混んでいることって、よくありませんか?特に日本人はまじめに順番からキャプション(看板に書いてある文章)を読んでいることが多く、そこに人だかりが出ています。
けれど、展示を順番通りに見る必要は全くありません。展覧会によっては、年代ごとに展示したり、画家ごとに展示したりしていますが、その意図は学芸員やキュレーターによるものです。
もちろん、流れに沿って展示を見るのもひとつの鑑賞方法ですが、いつまでも人混みに揉まれてしまいます。また、順番に観ていると、好きな絵に出会った頃は、足もクタクタになってしまいます。
おすすめなのは、まずはざっと展覧会を歩き回り、どんな作品があるのか全体を把握することです。
その時に、「この絵いいな」あるいは「これは何だろう」と思う作品をいくつか見つけておいて、あとから戻って、じっくり観る。あるいは、事前にどんな作品があるのか調べておいて、会場に入ったら、トコトコ歩いてチェックしておいた作品を一目散に観に行く。
これは、特に作品点数が多い場合や会場が広い場合などに、効果的です。そうすれば、気になる絵をゆっくり鑑賞することができます。全ての絵を、時間をかけて鑑賞するのは実はとても体力のいることなので、楽しく続けるには、観る点数を絞るのもひとつの方法です。
キャプションを読むことにとらわれる必要はなく、あくまでキャプションは、絵の補足説明として、気になるものだけ読むのでも十分楽しむことができます。
6.絵を観るときの距離を意識する
絵画は、離れて観たほうが良いのか、近づいてみたほうが良いのでしょうか。個人の好みでよいですが、人間の目で、絵全体を捉えやすい距離というのがあります。
長方形の絵画作品の場合、絵画の対角線の長さと同じくらい離れると良いと言われています。あるいは、腕を伸ばした距離から観ることで、画家がどのように描いていたのか追体験ができます。
逆にタッチや色の使い分けを観たい場合は、近づいて観るのもひとつの方法です。ひとつの作品でも、観る距離を変えるだけでも絵画が違って観えてくるので、ぜひいろいろな距離から絵を観てみてください。
また、企画展のほとんどには音声ガイドがあります。使用するのももちろんよいですし、借りずに絵に集中するでもよく、その日の気分やガイドの内容によって、使用を決めるのがよいでしょう。
周りの話し声が気になる、ひとりでリラックスして観たいという方は、実は、イヤホンをして好きな音楽を聴きながら観る、というのもお勧めです。その時代に合った音楽を自分でチョイスしておくと、雰囲気もばっちりあって、集中して楽しく鑑賞できます。
7.絵のなかに、気になる点をひとつ見つける
絵画鑑賞は、テレビ鑑賞や音楽鑑賞のように、心のなかに自動的に入ってくるものではなく、どちらかというと、能動的な作業です。絵画鑑賞だけでなく、読書も能動的作業に入ります。
では、ただ絵を眺めているだけでなく、鑑賞するためにはどうすれば良いのでしょうか。それは、自分のなかでひとつ気になるものを見つけることです。
「どうしてこんな暗い色なんだろう」「右手と左手の長さが違う」「女の人ばかり大きくて、男の人は小さく観える」など、自分なりに作品のポイントをピックアップします。
一緒に絵を観ている人がいれば、それについて話をしてもよいですし、メモをしておいて、あとで調べてみるのも新たな発見があって面白いもの。
そこから時代背景や美術史が見えてくることも。美術館に行って、3点や4点、自分のなかで印象に残った作品があれば、それで美術鑑賞の価値があると思ってよいと言われています。
一番もったいないのは、「確認鑑賞」になってしまうこと。「確認鑑賞」とは、ガイドブックやインターネットなどで先にその作品をチェックしておき、「ああ、ガイドブックで見たのと同じだ」と確認するだけで終わる鑑賞のことです。
絵画鑑賞に限らず観光する際でも「確認鑑賞」はおこってしまいがちですが、自分の目で観たからこその発見をすることで、記憶もより定着します。
絵画鑑賞は、続けることでもっと楽しくなる!
絵画鑑賞は観続けることで、知識がどんどん増えていきます。事前にわざわざ美術史やその展覧会について勉強する必要はありません。
知識だけで絵を観てしまうと楽しさを感じることができなくなり、つまらなくなってしまいます。逆に、感性だけで絵を観てしまうと、偏った観方しかできなくなります。
大切なのは、得た「知識」と、自分の「感性」の両方をバランスよく使って観ることです。
続けることで、知識と感性も磨かれ、絵を観ることが楽しくなるはずです。以上のコツを駆使して、ぜひ美術館巡りを楽しみましょう!
