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記憶力は、コツさえつかめば高めることができる!
暗記が苦手、せっかく覚えたのにすぐに忘れてしまう、自分の記憶力に自信がない。
プレゼンや商談をしている時に、せっかく覚えていた大切なことを忘れてしまった──“記憶力”にまつわる思い出、皆さんあるのではないでしょうか。
今回は、そんな記憶力について紹介していきます。そもそも、「自分の両親も記憶力が乏しいから、自分も同じ」というわけではありません。
記憶力の遺伝率はせいぜい30~55%程度。これは、決して大きな数字ではなく、知能の遺伝率は80%、スポーツの遺伝は80~90%、数学は90%、音楽の才能はなんと90%超だと言われています。
一方で、学業成績の遺伝率は50~60%、外国語の能力は50%と言われ、あまり遺伝が関係ないということがわかると同時に、記憶力の遺伝率がいかに低いかがわかると思います。
自分は記憶力が悪いから、という言い訳はもうやめましょう。
ここでは脳科学者の篠原菊紀先生著『脳科学が教えてくれた 覚えられる 忘れない! 記憶術』を参考に、忘れないためのノウハウをここで身に着けて、「もう忘れない!」を紹介します。
忘れない記憶術3か条

その1. 覚えようとせず、思い出す訓練をせよ
人はそもそも記憶することが苦手であり、忘れっぽい生き物です。
「覚えよう」ではなく、「忘れたことをもう一度復習しよう」という気持ちに変えるだけでも、暗記との向き合い方が変わってきます。
つまり覚える訓練をするのではなく「思い出す訓練をする」ということ。
そのための方法として、最も有効なのが、「学習→テスト(チェック)」の繰り返しです。
覚えっぱなしにするのではなく、できるだけ覚えた直後に確認のテストをすることで、記憶力の定着率は上がります。
その2. ノートをきれいにまとめよ

『東大合格生のノートはかならず美しい』という本が話題になったことがありますが、ノートをきれいにとることで記憶力が定着しやすくなる、ということは脳科学の世界でも認識されています。
なぜ、ノートをきれいにとると記憶力が上がるのでしょうか?一番の理由は「大事な要点」を自分で整理しながら書くことができるからです。
教科書の内容を全て暗記するのは困難ですが、「ポイント」という部分のみをピックアップして書き出し、それを覚えることで、全体像を把握し記憶させることができます。
また、自分の手で書くことで、視覚的にも記憶に残り、自分の言葉で書くことで言葉(=音)としての記憶にもつながります。
同じ大きさの文字で連々と書くのではなく、一目見て何のページなのかをわかるようにする、それを意識してノートに書き留めるだけで、記憶は異なってきます。
実は、これは普段の仕事においてメモをとる際にも言えること。
話を聞きながら、何となく箇条書きでメモをするのは、その場の発言などを書きとめるという意味では有効ですが、それは記憶には定着しません。
忘れないようにするには、自分なりに工夫して、ノートを活用する必要があります。
3. リズムで記憶する
郵便番号を〇〇〇-〇〇〇〇、電話番号をXXX-XX-XXXXのリズムで覚えているように、人はリズムや語呂で物事を記憶することがよくあります。
ここに「-」がないだけでも、番号を覚えるのはかなり苦労してしまいます。
テスト勉強でも語呂合わせで暗記することが多々あったかと思いますが、音楽のリズム、視覚のリズムを利用して記憶することは、とても有効的です。
また、大きな発見・感動があったものは印象に残りやすいので自分の記憶にも定着している、という経験をされている方も多いと思います。
そのほかにも、「手=触覚、目=視覚、口=筋肉、耳=聴覚」を使って覚える。
これは、プレゼンをする時も同じです。できるだけリアルにイメージして、身振り手振りも合わせてリアルにプレゼンの練習をすることで、運動野の活動が高まり、実際に活動したような動きになります。
では次に、どのようなタイミングで復習をすることでより記憶が定着するのかについて、紹介します。
忘れないための復習法

その1. DWM法(D=翌日、W=一週間後、M=一か月後)
これは、
D=翌日
W=一週間後
M=一か月後
という意味で、それぞれこのタイミングで学習することで記憶はより定着し、長期化していくと言われています。
人は忘れていく生き物です。暗記した20分後には約42%を忘れ、1時間後には半分以上を忘れ、1日後では約74%を忘れると言われています。
プレゼンでの内容をせっかく丸暗記しても、翌日にはほとんど忘れてしまっている、というわけです。
だからこそ、半分ほど忘れた段階で復習することで、忘れてしまう割合を減少させることができます。
その目安が、「DWM」のタイミングになります。
コツコツ資格の勉強などをしている人は、これを目安にして勉強をすることで、より効率よく勉強をすることができるでしょう。
その2. “6で割ったタイミング”で復習
DWM法での復習法は確かに効果的ですが、忙しい現代人にとっては難しい場合もあります。
そんな時におすすめなのが、目標日(試験日などのゴール日)を設定して、“6で割ったタイミング”で復習する方法です。
例えば、2ヶ月後(60日後)が試験日だとすると、60÷6=10、つまり10日後を目安に復習すると効果的だと言われています。
あるいは1年後(12ヶ月後)だとすれば、12÷6=2、2ヶ月後。つまり1年後の定着率をあげるには、2ヶ月ごとに定期的に復習をすると良いということになります。
少ない時間を使って勉強したり暗記をしたり際に是非活用してみてください。
暗記をする絶好な時間は、3つ!

その1. スキマ時間こそ、最大のチャンス!
平均的な会社員のスキマ時間──朝の時間、電車に乗っている時間など──とは、実は、2〜3時間にもなります。
その時間は、私たちが起きて活動している時間の1割にもなります。その時間をスマホ操作やインターネットばかりに使うのは、もったいない…!
電車の移動時間が15分しかないとしても、そのような限られた時間のほうが集中力は高まりますし、人が集中できる時間は15分だと言われています。
だとすれば、その時間をその勉強時間に当てるのは、とても効果があります。
その2. マルチタスクをしてこそ、脳も活性化
人間の脳は、マルチタスク、つまり1つのことだけに取り組むよりも、複数のことを同時に行うことのほうが、より活発化するというデータがあります。
ふだんの仕事の企画や計画を実際に考えながら、資格試験の勉強をする。あるいは仕事をマルチタスクにしてこなしていく。
そのように、1つのことに集中するのではなく、同時に複数のことを覚えたほうが記憶力は向上します。
その際に気をつけるのは、「少し頑張ればできる程度」であること。負荷のバランスを自分でとることで、より脳を活性化させることができます。
脳は筋肉のようなものです。鍛えればどんどん強くなり、記憶力もどんどんアップします。負荷のかけ具合をコントロールしつつ日頃から脳を鍛えれば、効果がより出ます。
脳の仕組みを理解して、効果的に暗記しよう
暗記をするのは大変です。だからこそ、脳の仕組みを理解し、より効果的に暗記をすることで、忘れにくくなります。
脳は、小さな成功が大好きで、その成功を積み重ねることで、「もっとやりたい」と思い、新たなやる気につながります。
最初は無理をせず、100%達成可能なものを設定し、数回繰り返すようにしましょう。
一方で、脳は、「〜しなければならない」に拒否反応を示します。
「今夜中に必ず終わらせる」というゴールではなく、「○ページしよう」というような、できるだけ肯定的なものを設定すると良いと言われています。
実は、やる気が出ないのも、脳(線条体)のせい。「やる気が出なくてもとりあえず始めてみるとよい」というのはよく聞く話です。
それはやる気が出ないとわかっていても、無理やり体を動かすことで、「あれ、やる気が出ているんだった!」と勝手に脳が勘違いして、やる気を出し始めます。
たとえ、3日坊主になっても、「継続できたのが3日もある」。そう考えるだけでも脳の捉え方は変わってきます。
その3日坊主を少しずつ重ねていけば、脳も鍛えられてくる、というわけです。
ぜひ、自分の脳とうまく付き合ってコントロールし、効果的に暗記・復習に取り組んでみてください。
参考文献:篠原菊紀『脳科学が教えてくれた 覚えられる 忘れない! 記憶術』

