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40%の人がストレス解消のために飲み会に行く
2017年10月に1092人の20〜59歳のビジネスパーソン男女を対象として行われた調査によれば、最近3ヶ月に仕事帰りの外飲みをした人は1092人中644人で、そのうち「最近3ヶ月の仕事帰りの外飲み目的・理由」として「ストレス解消や気分転換をしたかったから」と答えた約40%にものぼっています(インテージ調べ)。
いまこの記事を読んでいる人のなかにも、ストレス解消のために飲み会に行くという人は多いのではないでしょうか。
ストレスは心身の健康に大きな悪影響をもたらすことがわかっています。そのため適度なストレス解消はビジネスパーソンにとって必要不可欠です。
しかし飲み会は得てしてストレス解消になりにくく、むしろ身体的・精神的ストレスを増やす可能性が高いこと、そしてむしろジムに行くほうがはるかにすっきりするとわかっています。
ここでは科学的な研究結果や実験をとりあげながら、ストレス解消には飲み会よりジムが効く理由を解説していきます。
飲み会はストレス解消になっていない
「仕事終わりのビールはうまい」「仕事の嫌なことは飲んで忘れる」などと言われるように、お酒はストレス解消に効果があると信じている人も多いはず。たしかにまったく効果がないわけではありません。
ただし、飲む人や飲み方によってはむしろストレスが増大するのも事実です。
日本人の40%にとって飲み会はストレス解消になりにくい
まず、そもそもお酒でのストレス解消が向いていない人がいます。それは「ND型」の遺伝子を持っている人です。
お酒に強いか弱いかは、アルコールに含まれる酵素から作られる毒性のある成分「アセトアルデヒド」を分解する力を持つ「N型」の遺伝子と、これを分解できない「D型」の遺伝子の組み合わせによって変わります。

このうちDD型の人は日本人の10%ほどで、お酒でのストレス解消などもってのほかです。とはいえそのことは自分で重々承知でしょうから、無理にお酒で鬱憤を晴らそうとはしないでしょう。
問題はND型の人です。日本人の40%はこの遺伝子型を持つと言われていますが、なまじ多少ならお酒を飲めてしまうので、つい飲み会でストレス解消しようとしまいがちなのです。
すると飲み方次第で翌日に二日酔いや体のだるさといった、身体面のストレスが残ってしまいます。体調が悪くなれば気持ちもネガティブなりますから、精神面のストレスも残るでしょう。
そのため、飲み会によるストレス解消が向いているのは、日本人の残り50%であるNN型の人だけなのです。
大酒を飲めばむしろストレスは増える

しかしどんなにお酒に強くても、過度に大酒を飲めば、むしろストレスが増えてしまいます。なぜならアルコールの過剰摂取は、腸内に毒性の強い細菌を増やし、腸内環境を悪化させる可能性があることが米国国立衛生研究所(NIH)の研究で明らかにされているからです。
アルコールによる腸内環境の悪化は、アルコール依存症や脂肪肝、大腸ガンなどの原因になるとされていますが、腸の研究が近年急速に進んだことにより、腸内環境が体のみならず、精神の状態をも左右することもわかってきています。
このように考えると、たとえ二日酔いなどにならない体質であっても、過度の飲酒は心身のストレスを増大させる可能性が高いのです。
二次会、三次会……興が乗るほどストレスは増える
酔いが回って気持ちよくなってくると「次の店に行こう!」「今日はもっと飲むぞ!」と盛り上がる人も多いもの。特に金曜日や土曜日の飲み会では羽目を外して夜遅くまで飲みたいこともあるでしょう。
しかしそうして深酒をすると睡眠の質と量が低下するため、いくら本人は「長く眠ったな」と思っていても、結果的に寝不足になってしまいます。
睡眠は本来、日中にインプットした記憶を整理したり、嫌な記憶を選り分けてストレスを軽減したりする役割を担っています。そのため睡眠不足になるとストレスが解消されず、翌日に持ち越されてしまうのです。
テキサス州立大学の研究者Grant Benhamが2010年に行った研究では、睡眠が体だけでなく心のストレスから回復させることも明らかになっています。
そのため1日、2日程度の深酒であれば問題なくとも、積み重なれば抑うつなどの精神疾患につながる可能性が出てくるというわけです。
本当に効果のあるストレス解消法が必要
付き合いの飲み会や、職場の飲みニケーションを目的とした飲み会であれば、そこまで大酒を飲んだり、深酒することはないかもしれません。しかしそうした仕事の延長線上にある飲み会に行くと、今度は他人に気を遣ってストレスを溜めてしまいかねません。
このように考えると、総じて飲み会はストレス解消になりにくいということがわかります。したがってビジネスパーソンがストレスを適度に解消し、心身の健康を保つためには「飲みに行く」以外の選択肢を持つ必要があるのです。
ストレスを解消したいなら週2〜3回ジムに行く
その選択肢として有力なものの一つがジム通いです。しかも毎日通う必要はなく、週の初めと終わりに1回ずつ、あとは思いついたときに1回程度行くだけで十分。
さらにプロテインを飲んだり、高重量を使って筋肉を本気でつけたりする必要もありません。ただ週に2〜3回ジムに行って、軽く体を動かしてくればいいのです。
以下ではどうしてそれだけでストレス解消になるのかを、海外の研究成果に触れながら見ていきましょう。
ストレスとホルモンの関係
最初に理解しておくべきは、ストレスとホルモンの関係です。ストレスに関する研究はまだ発展途上にあり、そのすべてが解明されたわけではありません。
しかし私たちがストレスを感じることによって心身の健康を損なう原因の一つだと考えられているのが、体内で分泌される「ノルアドレナリン」「コルチゾール」といった物質です。
ノルアドレナリンはストレスによって分泌される物質で、私たちに緊張・不安を感じさせ、過剰に分泌されると攻撃的になったり、ヒステリーを起こさせたりと、正常な言動をとれなくします。
これがもととなって「アドレナリン」が作られますが、アドレナリンは「闘争か逃走か」のホルモンと呼ばれており、心身を戦闘状態にする役割を持っています。それに対して、ストレスを感じると副腎からコルチゾールが分泌され、血液を通って脳に到達し、危険や恐怖などを感じさせて心身の警戒を強化させます。
このように私たちの体は、ストレスによって特定のホルモンの分泌し、そのホルモンによってさらに心身にストレスを感じるようになっているのです。
運動はセロトニンの分泌を促す
こうしたストレスに関連するホルモンの分泌を正常化する働きを持つのが「幸せホルモン」とも呼ばれる「セロトニン」です。
このセロトニンは日光や食事などによって分泌が促進されると言われていますが、さまざまな研究により、運動によっても分泌量が増えることがわかっています。
これには記憶を司る脳の部位として知られる「海馬」が関わっています。というのも海馬は運動によって活性化し、新しい神経繊維を生み出すことで、セロトニンの分泌量を増やすと明らかにされているからです。
したがって日中の仕事で溜め込んだストレスを解消し、ストレスによって大量に分泌されているはずのストレスホルモンをセロトニンによって正常化するためには、飲み会ではなく運動が必要なのです。
毎日ジムに行く必要はないし、マッチョになる必要もない

もちろん自分で運動習慣が身につけられるなら、それが最も低コストです。しかしなかには「家や家の近くでは運動する気にならない」という人も多いはず。そういう人こそジム通いを始めるべきでしょう。
ジム通いと聞くと多くの人は「毎日行かないと元が取れない」「ジムに行くからにはマッチョにならないと意味がない」と考えがちです。しかしそんな心配はご無用。
アメリカ医師会報の精神医学専門誌『JAMA Psychiatry』で2018年6月に発表された論文によると、ストレスを軽減するのが目的であれば、ジムに毎日通う必要も、マッチョになる必要もないことがわかっているのです。
同論文の研究チームはランダム化比較試験と呼ばれる信頼性の高い実験を33例見つけ、それらの分析を通じて運動とうつの関係を調べました(こうした研究手法をメタアナリシスと呼びます)。その結果わかったのが以下の4点です。
・うつ病の診断を受けているかどうかにかかわらず、運動によってうつ症状が軽減された。
・トレーニング量の多い、少ないにかかわらず、運動によってうつ症状が軽減された。
・運動によるうつ症状の軽減効果には、性別も年齢も無関係だった。
・筋力や筋肉量の増加具合と、うつ症状の軽減具合にも関係性はなかった。
つまりうつを軽減するために大事なのは、ジムでとにかく何かしらの運動をすることであって、ハードなトレーニングでも、筋肥大でもないと点です。したがってストレス解消や、健康維持が目的ならば、ジムに行って軽く体を動かすだけで十分なのです。
一流のビジネスパーソンは健康管理のコツを知っている

二流・三流のビジネスパーソンほど「気合」や「根性」で仕事をしようとするので、どこかで体調を崩し、会社やチームに迷惑をかけるものです。一流の経営者、高いパフォーマンスを発揮し続けるビジネスパーソンは、各々自分の健康を管理するためのコツを知っています。
ジム通いは肉体面だけでなく、精神面のメンテナンスにも高い効果を発揮します。近年一流のビジネスパーソンのなかにジム通いをする人が増えてきていますが、それはこうした効果をその身で体感しているからなのです。
今まで「めんどくさい」「酒を飲んでいたほうがいい」などと言って敬遠してきた人も、これを機にジム通いを始めてみてはいかがでしょうか。
