人生100年時代とは? これからを生き抜くための働き方を解説

近年では「人生100年時代」という言葉を耳にする機会が増えてきました。しかし「人生100年時代」になったことで今までからどう変わるのか、明確に答えられる人は少ないのではないでしょうか。

そこで、本記事では人生100年時代に備えてできることやこれからの働き方について解説します。ぜひ参考にしてみてください。

人生100年時代とは?

「人生100年時代」とは、長寿化によって働き方や生き方が変容した時代を表す言葉です。教育を受け、仕事に就き、引退して老後を過ごすという従来型の人生を歩むことが、困難になった時代での個人のキャリアプランや、社会のあり方などを象徴する言葉として世界中で注目を集めています。

70代、80代になっても働かなければならない時代には、若い頃に身につけたスキルが時代遅れになって通用しなくなる可能性があるでしょう。誰もが100年の人生を歩む時代に、その人生を充実させるためには、生涯に渡る学習が必要となります。

若者から高齢者まで、全国民に活躍の場があり、さまざまな人が楽しく、安全に過ごせる社会を実現するために、私たちが取り組むべき課題を整理してみましょう。

人生100年時代に向けて求められる変化や問題点

「人生100年時代」を迎える私たちには何が求められているのでしょうか。また、新時代に移り変わることで予測される社会構造の変化、懸念される問題点も気になる内容といえます。

ここでは人生100年時代に私たちが求められるスキルや時代背景などを7つのポイントに分けて解説します。

世界一の健康寿命を誇る日本

超長寿社会といわれている日本は、健康寿命世界第1位の国家です。厚生労働省の調べによると、日本人の平均寿命が令和2年において男性81.64歳、女性87.74歳であるとされています。また前年と比較しても平均寿命は上回っており、今後もその傾向は続くでしょう。

長寿大国・日本に生きる私たちにとって、人生100年時代を生き抜くための術を身につけることは、高齢化の進んでいない他国の国民と比べてより強く求められる重要な課題となっています。

個人の努力はもちろんですが、よりよい経済や社会システムを実現するためには、政策の全体図を描き、人生100年時代を支える社会構造をつくることも大切です。

仕事で社会人基礎力を身につける

人生100年時代を生き抜くために私たちが身につけておきたいスキルの1つが社会人基礎力です。社会人基礎力は大きく分けて3種類あります。

1つ目の能力は「前に踏み出す力」です。前に踏み出す力とは、何事も前向きに捉え、失敗を恐れない心を持つということをいいます。社会人基礎力を身につけるには、未来のために積極的に自分を磨き、新しいことに挑戦する意欲を持ち続ける能力が求められるでしょう。

2つ目の能力は「考え抜く力」です。考え抜く力を養うには、自分の意思を持つことが大切でしょう。他人や社会に流されてなんとなくなく生きていく他責思考では自発的に行動できない人間になってしまいます。責任感や自分の考えを持って生きていくことが重要です。

そして3つ目の能力は「チームで働く力」が必要といえます。人生100年時代ではさまざまな生き方や働き方の人々が共存していくことになるでしょう。互いの利害関係や思想の違いを理解し、思いやりを持って協働していくことが求められます。多様性を認める心を育むということで、人間としても大きく成長できるでしょう。

3つの視点が必要となる

人生100年時代を迎えるこれからの社会には、社会人基礎力に加えて、3つの視点を考える必要性があります。3つの視点とは、何を学ぶのか、どのように学ぶのか(組み合わせ)、何の目的を持って行動するのかという視点です。

具体的には、社会のなかで「自身に付加価値を生むために何を学ぶのか」「自分の能力と多様な経験を組み合わせ広い視野を持てているか」「自己実現や社会貢献のためにどう活躍するか」の3つの視点をバランスよく持つことでこれからの社会を上手に生き抜くことができるでしょう。

一人ひとりが働ける場をつくる

人生100年時代では「長く生きるために、長く働かなければならない」という課題があります。そのため、若者から高齢者まで多種多様な人々が働きやすい場を用意することが求められます。

そのためには、まず自分自身の大切にしたい価値観に沿った働き方を見つけることが必要です。夢中になって取り組めることや飽きずに続けられる仕事を探しましょう。

また、従来の固定概念にはない、より柔軟で幅広い社会参加の形として、働くことを再定義する必要があります。個人事業やボランティアなどの時間や雇用形態にとらわれない新しい働き方、社会参加の形を模索していくことが重要になるでしょう。

高齢者などの労働者にも活躍の場があることも求められます。他者を支える、助けることは、最も幸福を感じられる瞬間であるため、多種多様な人たちを互いが受容し支え合っていけるような社会を目指しましょう。

教育の場を平等に提供する

教育の場を年齢問わず平等に与えることも人生100年時代の重要な課題です。100年間の人生を充実させ楽しく過ごすためには、幼児教育から社会人教育まで、生涯を通しての学習が必要になります。

学び続けることはこれからの時代において必須のスキルです。

とくに高齢者は、青年期に取得したスキルが新しいスキルや技術革新によって時代遅れになるリスクがあります。そのため、常に学習を継続しなければなりません。

高齢者に学習の機会を与えるためには、生涯に渡る教育制度の施行や、オンラインの学習システムの整備などが必要になります。

待機児童の解消や幼児教育の無償化を進める

日本では、少子高齢化問題が深刻化しています。少子高齢化社会を乗り越えるためには、待機児童の受け入れや教育の無償化に取り組む必要があるでしょう。

そのため政府は、3歳から5歳までの子供達の保育園や幼稚園、認定こども園の費用を無償化する対応を取り決めました。

また、保育園・保育所の整備に取り組む活動を率先して行うことも、親世代のさまざまな働き方をサポートする意味で大切な政策となるでしょう。

老後の暮らしは生きがいが大切

定年退職後に趣味だけを行って過ごす生活は幸福感を得られるかもしれませんが、生きがいを感じない人も多いのではないでしょうか。

得意なことや好きなことがある場合は、自分の価値観にぴったり合う仕事や働き方が見つかることもあるでしょう。人生100年時代はシニアも働くことが前提の社会であるため、雇用の選択肢も広がると予想されます。

高齢者になってから考えるのではなく、できるだけ早く自分の好きなことや得意なこと、人より上手にできるもの(才能)を見つけておくことが老後の暮らしをよりよくするために重要となるでしょう。

人生100年時代のお金の貯め方と使い方

人生100年時代になると、お金の貯め方や使い方にも変化が生じます。働き方が変わり、老後のはじまりが個人によって異なる社会では、一人ひとりのマネーリテラシー(お金に関する活用能力)を向上させ、誰もが正しく資産運用できるようになることが重要です。

ここでは人生100年時代におけるお金の貯め方と使い方について、ポイントを4つに分けて解説します。

退職後のお金の貯め方と使い方

これからの時代では、退職した後にお金をどのように貯めて、使うことが求められるのでしょうか。

まず、お金の貯め方ですが、基本的には働いている間から着実に預貯金を行うことが必要です。働き盛りの若い頃からお金を運用し、資産形成を行う必要もあるでしょう。

資産寿命を延ばしたいのであれば「使う」だけに目を向けず、「増やしながら使う」という選択肢を入れることも大切です。しかし、全員が投資する必要はありません。投資にはリスクが伴うため、あくまでも投資は選択の1つと考えましょう。

老後の平均的な支出

老後の支出は大体どのくらいになるのでしょうか。

総務省の家計調査(2021年)にて発表されている二人以上の世帯における1世帯あたりの支出金額資料では、世帯主が65歳から69歳の場合、1か月の平均消費支出は29万6452円、70歳以上の世帯主は24万6579円と記録されています。

つまり65歳で退職した場合100歳まで生きるのに必要な平均支出額は、1億655万5560円と予測することができます。

老後にもらえる収入

老後に収入として入ってくる年金は大体どのくらいなのでしょうか。

同調査によると、65歳から69歳の世帯主を持つ二人以上の世帯の1世帯あたり収入は、事業・内職収入、他の経常収入、特別収入を合計すると16万8422円。70歳以上の世帯では17万9718円となっています。

65歳から100歳までに毎月上記の収入があったとすると、35年で7480万3800円の収入がある計算です。

このようにほとんどの場合は、支出が収入を上回ってしまうケースが多く、預貯金を切り崩していくことを余儀なくされます。また、65歳以上の収入は、明らかに生活費としては少ないことも老後の不安材料となっています。

【参照元:政府統計の総合窓口|家計調査 4-6世帯主の年齢階級別

退職後に必要となる貯金額

退職後に必要となる貯蓄金額はいくらなのか、気になる方も多いでしょう。65歳から100歳までにかかる支出から同じく収入を引くと3175万1760円と算出されます。

病気や怪我などで思いがけない出費を強いられる可能性もあるため、老後に必要となる貯蓄額は、おおよそ3,500万円程度といえるでしょう。

退職年齢を引き上げると、老後の生活費を減少させることができるため、貯金額が足りない人は考慮に入れる必要があるでしょう。

人生100年時代は、70代、80代のシニア世代も現役で働く人が増加することが予想されています。

人生100年時代会議とは?

人生100年時代を見据え政府が対策を検討する会議として、2017年に「人生100年時代会議(人生100年時代構想会議)」が発足されました。

仕事・教育・老後など、これまでのライフステージを多様化し、すべての人が安心して暮らせる社会、すべての人が元気に活躍できる社会をつくることを課題とした会議です。

人生100年時代を迎える一人ひとりが、自身の将来のことを見据え、変わりゆく社会に適応するよう自助努力を行うことも大切になるでしょう。

まとめ

本記事では、「人生100年時代」にフォーカスを当て、迫り来る新時代を生き抜くための働き方について解説しました。長寿化は今後ますます進み、世界規模の社会問題としてより関心が高まっていくことが予測されます。

70代、80代の高齢者も労働者として活躍することを余儀なくされる時代では、現在よりも多様性を受け入れ、誰もが安心して暮らせる成熟した社会をつくることが課題となるでしょう。

人生100年時代の到来に備え、働き方への新しい考え方やさまざまな心の準備、いざ働くときに役立つ資格やスキルを身につけておくことが重要です。ご自身の将来について考え、必要な対策を講じましょう。

[文]CareerSupli編集部 [編集]CareerSupli編集部