『10人に小さな発見を与えれば、1000万人が動き出す。』音楽は 「ストリーミング」で聴く時代

2015-06-11 16.38.48

ストリーミング時代の到来

エイベックス・デジタルとサイバーエージェントが共同出資したサブスクリプション型(定額制)音楽配信サービス「AWA(アワ)」のアプリダウンロード数が6月10日に100万ダウンロードを突破したと発表されました。

そして今週はApple Musicの発表、LINE MUSICのサービス開始とストリーミング時代の到来を伝えるニュースがありました。これからのストリーミングはどうなっていくのでしょうか。

これからの音楽サービスのテーマは「ディスカバリー」

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現在、世界の音楽サービスでのキーワードになっているのは、「ディスカバリー」。 日本語でいえば「発見」です。

ストリーミングサービスとSNSの普及を背景に、「新しい楽曲やアーティストと ユーザーをどうやって出合わせることができるか?」「ユーザーが喜ぶマッチングが できるか?」ということがサービス事業者のテーマになっているのです。

つまり、ディスカバリーとは、有効なリコメンデーションの仕方ということです。 スポティファイの著名人プレイリストからヒットが出たというのもディスカバリーの 一つの例です。最近、「キュレーター(インターネット上での意味としては情報を収集し、整理し、他のユーザーと共有する人のこと)」という言葉が広まっています。

影響力のある人の発信や友人知人の嗜好を知るという「人から人へ」というリコメンドの方法と、アルゴリズムを使った機械的なリコメンドの仕組みのどちらが有効か、いわゆる「MAN vs MACHINE」が議論されているのです。結論的には、「両方を組み合わせるのが良さそうだな」ということになっているようです。

ディスカバリーという視点で代表的な2つのサービスを紹介しましょう。アメリカのネットラジオ「PANDORA」は、1億人以上のアクティブユーザーを持つサービスとして広く支持されています。有料会員の仕組みも持っていますが、 基本的には広告モデルの無料のラジオです。

アメリカは「ミレニアム法」という法律があり、インターネットラジオは、Sound ExchangeというNPO団体に規定の利用料を払えば、レコード会社からの個別の楽曲利用許諾は不要というルールになっていますので、自由な選曲が可能です。PANDORAの人気の秘密は、ユーザーごとに異なるリコメンドの仕組みです。

流れてくる楽曲を聴きながら、ユーザーが「好きボタン」を押したり、気に入らなければ飛ばしたり、「嫌いボタン」を押すことで、PANDORAに組み込まれた人口知能がユーザーの好みを学び選曲を変えていきます。「パーソナライズド・ラジオ」 とか「カスタマイズド・ラジオ」と呼ばれる、テクノロジーを活用した新しいタイプのラジオサービスなのです。

リコメンデーションのエンジンは、「ミュージックゲノムプロジェクト」と呼ばれる研究に基づき、つくられた特性情報です。詳細は企業秘密でわからないのですが、 数十人のミュージックアナリストを抱えて、楽曲を聴いたときの感覚で、音楽ジャンルや気分など、数百のキーワードをいくつか振り分ける「タグづけ」作業を行っています。

そのタグの組み合わせで、ユーザーの嗜好を予測し、聴かせる曲を選んでいるのです。選曲を行うのはコンピュータのプログラムですが、そのルールは、人の感覚を元につくられています。

まさに人とマシーンを組み合わせたリコメンデーションシステムです。PANDORAは日本からのアクセスに対しては、サービスをしていないので、現在、日本では聴くことはできません。アメリカに行く機会があれば、ぜひ体験してみてください。

もう一つは、全世界で1億人以上のユーザーがいるといわれるShazamという英国発のスマートフォンアプリです。使い方は簡単です。街角やテレビ、ラジオなどで知らない楽曲が流れてきたら、Shazamというアプリを起動させて、スマートフォンのマイク部分をスピーカーに向けてかざします。

すると、アーティスト名や曲名などの情報を教えてくれるというサービスです。利用は無料。シンプルですが、楽曲データの豊富さと音声認識技術の優秀さから全世界でユーザーの支持を集めています。

日本語版もリリースされ、Jポップの楽曲情報は、まだ完璧とはいえませんが、洋楽曲は、ほとんど問題なく教えてくれます。2014年10月に、日本の音楽サービス「レコチョク」との業務提携が発表されたので、Jポップに関する楽曲情報もこれから充実していくことが予想されます。

Shazamのビジネスモデルは、大きく2つで、iTunes Storeなどへの誘導に対するアフィリエイト収入とマーケティングデータの販売。2013年には、Shazamで楽曲を知り、そのまま楽曲をダウンロード購入したケースが1億回を超えたそうです。

ビッグデータ解析がこれからのトレンドといわれている時代に、ユーザーが知りたいと思った楽曲と購入に関する行動データを持っているのは、大きなビジネスの可能性を秘めているといえるでしょう。これもディスカバリーに貢献したサービスなのです。

日本でも音楽とITの 蜜月がはじまる!

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音楽ビジネスの近未来について語りましょう。悲観的な意見も多いようですが、僕はとてもポジティブに捉えています。これまで音楽サービスは、常に新しいテクノロジーの実験場でした。

ファイル交換サービスとレコード会社の訴訟のように、デジタルでファイルを複製することについて、権利ビジネスを行う既存の業界と、衝突を繰り返してきた歴史があります。

しかしクラウド化をきっかけに、様相は変わっています。「所有から利用へ」という変化は、インターネット全般のトレンドですが、音楽において、その変化は顕著に現れています。だからこそ今の音楽業界では、「複製」した商品をマネタイズするだけではなく、クラウド上のコンテンツに「アクセスする権利」を販売する、複製権とアクセス権を組み合わせた、ハイブリッド型の音楽ビジネスの生態系を再構築する必要があるのです。

さらには音楽ビジネスには、ライブコンサートという「体験」をマネタイズする分野もあります。日本でもライブエンターテインメント市場は右肩上がりで伸びています。2014年は、コンサート入場料収入がCDの総売り上げを抜く、史上初めての年になりました。

音楽市場の現状を象徴していると思います。ストリーミング、パッケージ、ライブエンターテインメントの3つの分野を組み合わせたかけ算で、音楽産業には新たな可能性がみえるはずです。

必要なのは 「デジタルファースト」の姿勢

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毎年3月にテキサス州オースティンで行われるサウスバイサウスウエスト(SXSW) は、ツイッターなどの最先端のITサービスを飛躍させた場として、世界で最も注目されています。

IT、音楽、映画、メディア、コンテンツ分野のカンファレンスイベントですが、もとは1987年にカントリーウエスタンのマネージャー達がはじめた音楽祭です。僕はこの十数年の間に、6~7回参加しています。

日本ではインタラクティブ部門に話題が集中しますが、実際に現地に行くと、「真ん中に音楽があるな」 と感じて嬉しくなります。期間中は街中で音楽が溢れ、デジタルテクノロジーが音楽へのリスペクトを持って発展していることが実感できます。

一方、日本では、ITベンチャーと音楽業界があまりに隔絶してしまいました。僕は微力ながらその状況を変えたいと、2013年には『世界を変える80年代生まれの起業家』(スペースシャワーブック)という若手起業家を紹介する書籍を出しました。

2014年には、エンターテインメント系のスタートアップ企業を対象としたアワー ド「START ME UP AWARDS」をオーガナイザーとして立ち上げました。旗を揚げてみると、さまざまな人が主旨に賛同して協力してくれましたし、日本にもメディア・コンテンツ系で起業したという若者がたくさんいることもわかりました。

彼らを応援し、そして連携していきたいと思っています。「STRAT ME UP AWARDS」と同時開催した「MUSICIANS HAC KATHON」は、非常に高い評価をいただきました。

近年、日本でも広まってきた「ハッカソン」は、プログラマーが集まり、チームを組み、 時間などの限られた時間でサービスのプロトタイプをつくるという「まるでマラソンのようにプログラミングを競うイベント」です。

3~5人の1チームの中には必ず音楽家が1人いるという形で行いました。これは世界初だったようです。キャプテンとして、音楽家のとりまとめをお願いした浅田祐介氏をはじめ、日本の音楽界を代表する一流のサウンドプロデューサーが集まってくれました。

プログラマー、デザイナーとアイデアを出し合いながら、さまざまなサービスを考案して、形づくっていきました。世界的にも評価されてきているJポップを成功させているのは、彼らのクリエイティビティの高さと人間力なのだなと改めて実感しました。

プログラマーもモチベーションが高く、熱量の高い2日間となりました。こういう新しいモノが生まれる「場」づくりは、今後も続けていくつもりです。

音楽とテクノロジーを高度に融合させることが、これからの音楽ビジネスを発展させることにつながると僕は信じています。「デジタルファースト」が音楽ビジネス再興のキーワードです。日本発の音楽サービスが世界で成功する姿をみたいものです。

音楽ファンにとっては、「手軽に、便利に、身近に、楽しみ、好きなアーティスト と出会い、コレクションをし、ライブ体験をする。またSNSで友人と共有する」。 このように音楽の楽しみ方が広がっていく時代がやってきています。

繰り返しになりますが、音楽は常に、テクノロジーの実験場になってきました。 ビジネスパーソンにとって、新たな音楽サービスを知ることは、新たなビジネスのヒントを発見するきっかけにもなるはずです。
(第3回に続く・・・・)

「START ME UP AWARDS 2015」開催決定、受付開始!!
起業家とクリエイターのマッチング創出、新たなビジネス・価値がココから生まれる!
エンタメに特化したグローバルな IT サービスをプロが支援
ビジネスプラン応募受付期間:6 月 10(水)~8 月 24 日(月)
http://www.startmeupawards.com/

<デジタルエンタメワークショップ 次回告知>
~近未来をポジティブに予見しよう~ Presented by LHE
6/21[日]18:00-20:30 (20:00以降:ネットワーキングタイム)
「スマートテレビ?テレビの未来を考えよう」

 

 

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10人に小さな発見を与えれば、1000万人が動き出す。

単行本(ソフトカバー)

内容紹介
人を動かす新常識! 今を生き抜く、新バイブル登場!! 「フジテレビpresents素敵なスマートライフ」デジタルエンタメワークショップ(2015年5月24日第1回開講)の公式ガイドブックでもある本書は、音楽、映像、放送、新聞、出版、自動車、IoT、UGMなど、エンターテインメント業界を幅広く横断的に捉え、デジタル化による大きな潮流が変えようとしているエンタメ・ビジネスの最新動向をまとめたもので、エンターテインメント・ビジネスに関心を持つ学生・ビジネスパーソン必携本!!

[文]山口 哲一 [編集]サムライト編集部

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