元プロボクサー、リクルート、お弁当屋さん…異色のCMO、リノべる渡会雄一氏

プロボクサーがキャリアのスタート

2010年創業で中古マンションのリノベーションで急成長しているリノべる株式会社のキーマン、CMO(Chief Marketing Officer=最高マーケティング責任者)渡会雄一さんにお話をうかがいました。元プロボクサーという異色の経歴からキャリアをスタートさせた渡会さんの仕事のやり方や、効果的なネットマーケティングのポイントについて教えていただきます。

– 本日はよろしくお願いします。渡会さんを紹介してくれた方からちょっと変わった経歴の方と聞いていて楽しみにしてきました。

渡会:たしかにちょっと変わっているかもしれませんね。大学2年の時かな、ボクシングのプロライセンスとって、大学行きながらボクシングをやっていました。卒業して就職しないで一年だけはプロでバイトしながらちょこちょこ試合していました。

いまは跡形もないですが、フライ級だったので、計測の時は50,8キロまで毎回8〜9キロぐらいまで体重を落とすストイックな生活をしていました。だからスタートからおかしくて新卒って経験したことがないんですよ。そしてボクシングを引退して中途でリクルートに入りました。

– この時はなぜリクルートを志望されたのですか?

渡会:ボクシングをやめた時に、ビジネスに行かなくてはと考えた時に営業力をつけたいと思ったんですよね。営業ができれば最低限、どんなところでも食っていけるなと考えました。

営業力を身につけようと思った時にいくつか企業をピックアップしましたが、自分のオヤジが「リクルートの営業は面白いんだよ」と言っていたのと、その当時好きだったくらたまなぶさんの『MBAコースでは教えない「創刊男」の仕事術』という本の影響でリクルートにすごく興味があり、受けてみたらたまたま受かり入社できました。

もともとメディアに興味があったので、これを読んだ時、社会人をやったことなかったんですが、この人すげえなと思って。こんな風に仕事できたら面白いなと思ったんですね。

リクルートではホットペッパーの営業をやってました。ちょうどフリーペーパーからウェブ版ができたときで、自分でフリーペーパーの記事を書いたり、撮影も自分でやって40店舗くらい担当していました。結構面白かったんですがちょっと飽きてしまいまして、1年ちょっとくらいで辞めてしまいました。そのあと、夜のお店で働いていたこともありました。

リクルートにいて違うところいくんだったら普通の転職だったらつまらない。そもそも当時は若すぎて全然ビジネスが見えてなかったので、じゃあ成り上がるなら夜の世界だろとチープな考えで、早まりましたね(笑)その後お弁当屋さんでバイトしたりした後、そろそろビジネスをちゃんとやろうと思い、入社したのがネット系の広告代理店でした。

ビジネスに本腰を入れる

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– 代理店ではどんなことをやられてたんですか

渡会:そこでは、リスティング広告のコンサルとして業務を行いました。それまでにもういろいろ失敗をしていたので、結構自分の中ではふんぎりがついてて一気にやるぞって思ったんで、相当全力で働きました。

リスティング広告は全然知らなかったんですけど、入社する前から自分でかなり勉強したりして知識をつけました。たまたま入って2ヶ月くらいで当時のリーダー抜けたので、3ヶ月めくらいには80アカウントぐらい僕が担当していました。新規の営業開拓を積極的にやっていたわけではありませんが既存客からのご紹介で担当が増えていきました。

– そこまでアカウント数が多いと管理が煩雑になって大変ではないですか?

クライアントにハンドリングを任せてしまうとそうなってしまいますが、事前の「期待値調整」をしっかりすれば、そんなに煩雑になることはないと思います。

大きな予算をかける場合は細かくテキストを変更したりしながら最適化させていく必要がありますが、限られた予算の中でやる場合、この手数料でできる範囲はここまでですよというのをちゃんと認識してもらえていれば、必要以上に煩雑になるということはないと思います。

– クライアントの最終的な満足度を高める上で「期待値調整」はフロントに立つ人間の重要な役割だと思いますが、他に心がけていたことはありますか?

渡会:それはですね、1つ大きなことがあってそれは、「クライアントのことをお客様と思わない」ということです。社内の人と同じような目線で、やるべきこと、言うべきことをストレートに伝えます。違うものは違うだろと言ってしまうタイプですので、お客さんとはけっこうぶつかりましたね。

リスティングはちゃんとやれば絶対に効果がでるので、そこはクライアントの立場に立ってこうするべきと思ったことをハッキリと伝えていました。なかには怒る人もいたのですが、こいつはウソをつかないという部分は認められて、それが結果的に信用につながっていったのかもしれません。

リスティングは絶対効果が出せる

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– 業種とか会社の規模によってはリスティングがハマらない場合もあると思うのですが?

渡会:ないですね。リスティングは基本的にほとんどの企業で有効だと思います。リスティングがはまらないとか、ワンクリックが高いとかいう人たちっているじゃないですか。あれはマーケティングをしてないだけだと思います。例えば今リノベーションでリスティングを出すと、ワンクリックで400円、500円取られるわけですよ。大体高いなって言われるんですよ。

でも同じ業界の競合が400円、500円を使っているからこの価格になっているんです。それを高いって感じるという事は、利益率が他者に比べて負けているってことでしょう。それならばプロダクトを改善しましょうって話ですよね。だって500円を払える会社があるんですよ。それでもし払えないのであれば、何か違うところにお金をかけすぎているという話をよくしていました。だいたい怒られるんですけどね(笑)

– 規模が小さい会社でもそれは有効なんでしょうか?

渡会:有効だと思いますね。自分でやっていた会社の時は、当時7人くらいの会社ですけど「リスティング広告代行」というワードで1クリック1000円くらい普通に1位に出してました。その中で利益出す仕組みを作っていたので全然出せちゃうんですよ。1ヵ月契約続けばペイできるモデルにしていたので。

一般的な手数料20%というモデルで、当時やっていたらワンクリックに千円出すのはしんどいんですけど、その会社は料金体系をガラッと変えて月額3万円からの固定費の手数料制にしたんですよ。広告費1000万のクライアントでも3万円で受けていることもありました。

もちろんMTGに毎月伺うようなことはできないので、3万円でできる範囲の中でやっていました。先ほどの期待値調整です。ただ、工数を下げるのではなく、本質的な目的部分に工数を充てることで実現していました。そうすると、ほかにそういうリスティング会社が少ないため、受注率が上がるので、結果だせるCPAの許容値が増えるので、許容CPCも上がります。

そうすると小規模な会社でもリスティング広告でワンクリック1,000とか1,200円というのが出せるんです。こういうことができるのがマーケティングの醍醐味だと思います。後編に続く

[インタビュー・執筆] 頼母木 俊輔  [編集] サムライト編集部