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「全ての転機が現在につながっている」その生き方とは
年齢を重ね、自分の生きてきた道のりを振り返ると、「あれは人生の転機だったな」と思う場面はいくつかあります。
現在、日本最大級の女性向けファッションアプリ「iQON」を展開している株式会社VASILYの取締役CFO・千葉大輔さんは、中学生時代にドイツへのサッカー留学を経験し、U-15日本代表に選ばれたこともあるほど中学高校とサッカーに励み、その後大学へ進学。
新卒でベンチャーキャピタルへ入社した後、ベンチャー企業への転職を機に経営を学んで現在はITベンチャーのCFOに就任するなど、様々なキャリアを積んできました。
千葉さんは、自身の人生を振り返って「全ての出来事が、今に繋がっている」と語ります。今回はそんな千葉さんがどのような人生の転機を迎えて、どのように乗り越え学んだのか、お話を伺いました。これから転機を迎えようとしている方や、今がまさにその転機だという方は必見です。
中学生で感じた、世界トップレベルの“本気”
「―千葉さんの人生の考え方を変えた、最初のターニングポイントからお聞かせ下さい。
中学生時代に経験したドイツ留学です。
小学3年生の頃からサッカーをやっていたのですが、当時住んでいた札幌とドイツのミュンヘンが姉妹都市ということからサッカーの交換留学をする機会があったので、ドイツの「1860ミュンヘン」というクラブのジュニアユースに約2年間、所属しました。
当時、日本はまだW杯の出場経験がなく、Jリーグもできる前だったので、強豪国であるドイツと比較すると、サッカーに対する国として、また各選手の本気度が違いました。
ドイツの選手たちは、小さい頃からクラブチームで練習をしているので、そもそも部活みたいな概念がないんです。食事の管理も徹底されていましたし、天然芝のサッカー場が何百面とありました。
なので、サッカーを通じてドイツのカリキュラムを知り、「全面的な環境整備が国として継続されないと本当の強さって生まれないんだなぁ」と、中学生ながら感じましたね。
―実際にそういう環境下で生活しているチームメイトと過ごしていて、“本気度”のギャップは感じましたか?
めちゃくちゃ感じました。ドイツに行けると決まった時、最初こそ「やった!ドイツだー!」っていうぐらいの感じで喜んでいたんです(笑)。けど、実際に向こうでプレーしていると、練習でも常に「本気」です。プレー中はガンガン削られるし、「球際」の本気度が違います。
でも、それくらい子どもたちは生き残るのに必死なんです。クラブチームでトップを目指している子どもたちは本気でプロになって国の代表として世界で戦うことをイメージしているので、普段から遊んだりデートしたりせず、プライベートを捨ててサッカーに全てをかけているんですから。
―中学生でそういった本気の世界を肌で感じて、その後の人生に反映された考え方はどういう部分ですか?
自分の色を出さないと勝てないという部分ですね。例えば同じ右利きで、足が速くて、センタリングが上手い人っていっぱいいるので、下手に怪我でもして自分が戦列を離れると代わりがすぐに埋まってしまう。そしてその椅子は、二度と空かないんです。
怪我をしないようにするのはもちろんですが、大切なのは自分のできることを増やしたり、誰にも負けない武器を身につけたりと、自分の色をきちんと出して、それを監督やチームメイトなど周りに貪欲にアピールする。
これはビジネスにも通じていて、自分の強みやキャラクターを出していかないと存在価値を見出せない。同じ価値の選手は2人もいらない。それを中学生で学べたのは、その後の人生の意思決定において本当に大きかったと思います。
死の恐怖を知って固まった、やりたい事に対する「価値観の変化」
―千葉さんは大学卒業後、新卒で大手のベンチャーキャピタルに入社されましたが、そこを辞めて転職に踏み切ったきっかけは何だったのでしょうか?
平たく言うと、病気になって死にかけたところにあります。ベンチャーキャピタルの仕事にはやりたいと思って就きました。入社後は同期に比べ、決して順調ではなかったのですが、ようやくまともに働けていると感じていた入社3〜4年目の時でした。
病気で倒れて半ば死にかけたことで「人生いつ死ぬか分からない。その時々で思うやりたいことに対して最善を尽くそう」という、価値観が一気に明確になりました。それまで、世の中に新しい価値を生み出そうとしている人たちを支援したい、役に立ちたいという思いでベンチャーキャピタルに入ったので、やりがいも感じていました。
しかしそうして仕事を続けていくうちに、いつからか今度は自分自身が世の中に新しい価値を生み出す立場、その仲間に加わりたい、という思いが強くなっていたんです。
そんなとき、ある方からご紹介いただき、たまたまクックパッドに投資を検討する機会がありました。出資することはできなかったのですが、後々、株式市場や上場に詳しい人材が不足していることからと、そこの創業社長と当時のCFOにオファーをいただいたんです。
―病気にかからず健康なままだったら、クックパッドという選択肢はなかったのでしょうか?
そうですね。ベンチャーキャピタルにいたかもしれません。やはり、いつ死んでもおかしくないという状態だったので、クックパッドから話をもらった時、「あ、これはチャンスだから掴まなきゃ」と素直に思えたんです。
あのとき「死の恐怖」というものを実感できたおかげで「あの時に比べればどんなにしんどいこともできるんじゃないの?」という価値観も自分の中で生まれました。
病気にかかってから、このクックパッドからのオファーという一連の流れで、自分の中に様々な価値観がガラリと変わったり、新たに生まれたりしました。これも私の人生においてかなり大きな転機だったと思いますね。
転職を成功へ導くカギは「仮説」を立て「検証」すること

―最後に、これから転職や起業を考えている方たちに対して、千葉さんからメッセージを頂戴できればと思います。
転職や起業に踏み切る際に多少なりとも失うものはあります。しかし反対に新しく得られるものもまた、必ずあります。少なくとも、迷っていたり考えているのであればやってみたら?と思います。失うものと得られるものを天秤にかけて吟味する必要はないと、僕は思います。
実際日本は恵まれた環境下にあるので、どんどんチャレンジして自分のやりたいことを突き詰めればいいと。
―なるほど。その考え方は千葉さんがこれまでに経験してきたキャリアチェンジにも活きてきたということですね?
そうですね。これは、クックパッドから現在のVASILYに転職したことについても言えるのですが、特に前職に不安や不満があったわけではないんです。当時、もう少し経営に深く関わってみたくて、「どうしようかなぁ」と迷っていた時期がありました。
その時、ベンチャーキャピタル時代の先輩と、たまたまOB会で再会したんです。そこで転職しようか悩んでいることを相談したら、「投資先で面白い会社があるから、そこの社長を紹介するよ」と言ってもらい、会わせてもらったのがVASILYの代表取締役・金山でした。
もともと衣食住に関連する事業に関心はありましたが、ファッションのことは今でも詳しいわけではありませんし、iQONは女性向けサービスなので、僕自身がユーザにはなれません。
しかし、仮に僕がユーザになり得るサービスしか展開できないのであれば、世の中に様々な事業がある中で選択肢が狭まるじゃないですか。今後、幅広くサービスや事業に携わっていくために、ファッションのことは分からない前提でチャレンジしてみようと思ったんです。
―普通に考えれば、分からない分野には挑戦しにくいものですが、新しく得ることに対して貪欲に、失敗を恐れず「とにかくやってみる」ということですね。とても勉強になります。
ありがとうございます、まだまだ何も出来ていないんですけど(笑)。あともう一つ。今の話と連動することなのですが、転職や起業をする際に仮説、つまり環境を変える目的、目標は持っておいた方がいいと思います。
新たに環境を変える時、「何を求めて移ったのか」という目的、目標を明確にしておくんです。実際に新しい職場で経験を積み、「求めていたものは得られたのかどうか」を自問自答して検証することで、今後のキャリアに絶対生きてきます。
環境を変える時に意志を持って仮説を作り、自分なりに話せるようになるまで腹落ちさせることをオススメします。そして、検証を繰り返して自分のものにしていくことができれば、「このキャリアチェンジは成功した」と胸を張って言えるようになると思います。
