「部下を幸せにするのが、リーダーの役目」―元鬼上司・小林嘉男氏が語る、幸せな職場のつくり方

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「幸せな職場」をつくるために必要な”メガネ”

「働きがいのある会社ランキング」トップ10常連の企業で、経理部長を担当している小林嘉男氏(写真左)。小林氏は経理部長として働いている傍ら、プロのメンタルコーチとしても活動しています。

自身の体験を元に執筆した著書「職場を幸せにするメガネ」では、新卒から自分がどのような価値観で仕事をしてきたのか。がむしゃらに働いて結果を出したものの、部下からは鬼上司と疎まれ、傷つき、それをどう乗り越えたのかが詳しく書かれています。

今回はそんな小林氏と、元マクドナルドNo1マネージャーの鴨頭嘉人氏(写真右)によるコラボ講演会から、小林氏が考える「幸せな職場について」をご紹介します。元鬼上司だった小林氏は、いったいどのように幸せな職場をつくり上げていったのでしょうか。

「鬼、血が通ってない、半導体…」―部下のパフォーマンスを上げるためにダメ出しをし続ける、”鬼上司”だった過去

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人は、知らず知らずのうちに自分の主観(ここでは”メガネ”と呼びます)で世の中を見ています。自分のメガネとは、普段自分が大切にしている価値観、信条です。

私の場合、学生時代に野球部に所属して体育会系の日々を送っていました。きつくてもひたすらに、がむしゃらにやる。一生懸命やって、乗り越えることができたときの喜びが好きでした。

仕事においても同じように、平日休日関係なく馬車馬のようにバリバリ働いて。それ相応の結果も伴ってきました。いわばこれが、私のお気に入りのメガネだったんです。

そして私は、そのメガネを部下にも同じように押し付けてきました。

理論で武装して、部下が資料を提出しても、何か発言をしても基本はダメ出し。自分の発言をロジックで固めているために、言ってることは正論で、やがて部下は何も言えなくなりました。

本当は、ぶつかり稽古のように、私に対してぶつかってきて欲しかったんです。そして私が厳しい環境の中で乗り越えてきたように、部下たちにも私からの厳しいチェックを乗り越えて欲しかった。

全ては部下の、そしてチームの成長のために。しかし皮肉なことに、私ががんばればがんばるほどに、チームは崩壊していったんです。

そんなある日、部下たちから無記名でフィードバックがありました。そこには「鬼」「血の通っていない冷酷な人間」「熱を通さないシリコンみたいな人間」と、散々な内容で。

その日の夜は、ショックすぎて眠れませんでした。なぜ、私と部下との間に溝ができてしまったのか。いろいろと考えた結果、その答えは私がかけていたメガネにありました。

「社長は幸福の専門家」―鬼上司を変えた新しい”メガネ”

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部下たちからの痛烈なフィードバックを受けてショックだった私は、部下たちに対してどう接すればいいのか、全くわかりませんでした。

そんなときにいろいろな本を読み漁っていた本の中で「社長は幸せの専門家」という言葉に出合ったんです。「偉いから社長なんじゃない、1番多くの人を幸せにできる、だから社長が1番上にいるんだ」という価値観に触れた瞬間、雷に打たれたような衝撃を覚えました。

自分は社長ではないけれど、リーダーという立場なら、チームのメンバーを幸せにしなければならない。彼らにとって何が幸せなのか、何をすれば幸せになってくれるのかという問題に、本気を出して考え始めました。

だからたとえ仕事の場でも、今までのように頭ごなしにダメ出しをしてはいけないんじゃないか。そんな発見から、いまかけているメガネを掛け替えて、新しいメガネをかけようと思いました。

「私たちの人生は、今ここから、自分の人生をクリエイトしていける」―アドラー心理学から学ぶ、マネジメントに必須の「愛と敬意」

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昨今話題のアドラー心理学。実は、幸せな職場をつくる上で非常に重要な考え方なんです。アドラーの教えの中では「人間は、今ここから、自分の人生をクリエイトしていける」という一節があります。

私はその一節を知った時、人はそれぞれ、自分の人生の主人公なんだと認識することができました。そしてそのメガネで一緒に働いている人たちを見たら、今までとは全く違った目線で、ものごとを見ることができたのです。

これまではパフォーマンスが低い人に対して、ただパフォーマンスが低いことだけに注視して厳しく接していました。しかし、彼らもまた人生の主人公と考えると、「この人の人生はどんなストーリーがあるんだろう」「この人は何が楽しくて何をどうしたいんだろう」といったように、相手に対して興味を持つことができたんです。

マザーテレサは「愛の反対は憎しみではなく、無関心だ」と言っています。しかしこれを言い換えれば、愛とはズバリ、関心を持つこととも言えます。相手に対してまず関心を持つことが、自分の周りの人を「愛」することにつながります。

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そして、上司と部下、親子関係にありがちなのが、命令口調になってしまう上下の関係です。しかしお伝えしたように、相手もまた、自分の人生の主人公なのです。

そこで、私がかけた方がいいと思うおすすめメガネをご紹介します。そのメガネとは、「横の関係」を意識して「敬意」を持って相手と付き合うということです。自分と相手との関係が、縦の関係に見えるのは、ただ単に先に生まれたとか、役割がこうだといった外見的なことでしかありません。

相手を下に見たりせず、同じ人生の主人公として、対等な立場として「敬意」を持って横の関係で関わっていく。尊重をして関わっていく。そうすることで現状の見え方、そして相手への伝え方も変わっていくと思います。

「愛と敬意」のメガネを持っていざ実践!でも、人に”メガネ”を書けるよう強制はしない?

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相手に対して「愛と敬意」のメガネをかけることを意識して接することができれば、見える世界も相手への伝え方も全てが変わってきます。

私はその新しいメガネを使って、考えました。私は、本当はどうしたかったのか、 どんなチームを作りたかったのか。そこで出た答えが「ワクワク イキイキ 笑顔いっぱいの仕事がデキるチームになる」でした。

そして辛辣なフィードバックを突きつけられてから数ヶ月後に、全員の前で「ワクワク イキイキ 笑顔いっぱいの仕事がデキるチームになる」と、宣言しました。

しかしながら、部下はその状況をよく理解できていませんでした。数ヶ月前まで鬼上司だった私が、急にそんなことを言い出したのですから。

そこで私は、目標に掲げた「ワクワク イキイキ 笑顔で仕事を楽しむ」ことを自ら体現することから始めました。机の上にぬいぐるみや犬の写真を置いてみたり。かつてのように「ロジックおかしいよね?」「これってMECEじゃないよね?」とは言わなくなりました。そして何より、部下に対して笑顔で接するようになりました。

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ここで考えていきたいのは、私は「こういう職場をつくるぞ!」という宣言はしたものの、他の人に対して何かを求めたわけではないというところです。

よく、他の会社やセミナーなどを受けて影響されてきたリーダーが「我が社でもこれをやるぞ」と意気込んでいることが多いんですが、影響を直で受けていない部下からしてみれば「またなんか変な影響を受けてきたぞ」と捉えられかねません。

かくいう私の宣言も、当時の私を知る部下たちからすれば「この人急に何を言い出すんだ?と捉えられていたでしょうが(笑)。しかし大切なのは、宣言をしたあと。部下や周りの人に「この人は本気でその目標を達成しようとしているんだ」と思ってもらうことです。

言ったことと、実際の行動を伴わせること。すなわち「言行一致」を心がけていました。それでいて、掲げた目標を人に押し付けない。まずは自分が1番実践して、仕事を誰よりも楽しむんです。それを見ている部下や周りの人に「自分も仕事を楽しんでいいんだ」と思ってもらうことが非常に大切だと思います。

私はそうした考え方で、幸せな職場を作ってきました。もちろん、これが全ての事象に通用する答え、というわけではありません。

なにかをやらせる、させるような強要ではなく、自然と広まる感じでみんなが仕事を楽しむ雰囲気ができてくれば、幸せな職場になってくると思うんですよね。

「がんばっていないリーダーなんて、1人もいない」―自分も相手も変わらずに、ただ自分の”メガネ”だけを掛け替えるということ

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私はいま、社内でコミュニケーション講座を立ち上げたり、プロのメンタルコーチとしても活動しています。仕事柄、様々な仕事のリーダーたちとお会いするのですが、みなさんに共通することが「がんばっていないリーダーは1人もいない」ということです。

仮に結果が出なくて、評判が悪かったとしても、リーダーはリーダーなりに部下やチームのことを考えています。そして上司にとって悩みの種である、結果が出ない部下も部下なりに、がんばっているのです。

そんな自分と部下のがんばりを、まずは認めて欲しいです。そのがんばりを認めた上で、あなたのメガネを掛け替えることができたら、自然と様々なものが変わっていきますし、みんなの居心地のいい「幸せな職場」への第一歩になると、私は思っています。

参考文献『職場を幸せにするメガネ』
Career Supli
自分がどんなメガネをかけているのか、それを知るところから全てが始まりそうですね。
[文・編集] サムライト編集部

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