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やりたいことをやるのに、場所は関係ない
安全な生牡蠣をカジュアルに楽しむことができる。バブル以前の日本ではまだなかった文化です。
今回インタビューさせていただいたのは、「ガンボ&オイスターバー」をはじめとするオイスターバーを全国展開し、日本で生牡蠣を気軽に食べることのできる文化を作ったヒューマンウェブの吉田琇則社長。
前編では「自分のやりたいことができるのであれば、場所は関係ない」と断言する吉田社長の、日本全国を飛び回った学生〜新卒〜転職までのお話をご紹介します。
バブル崩壊間近、マハラジャで過ごした学生時代

-本日はよろしくお願いいたします。まず、学生から新卒で1社目に入るところのお話を伺いたいんですけど、経歴を見させて頂いたら、ディスコで有名な「マハラジャグループ」ですよね。
吉田:大学3年生からそこでバイトをしていました。色々と就職活動をしていたんですけど、当時そこの会長の目に止まって、「卒業したらうちに来い」と言われたんです。マハラジャでのバイトは楽しかったんで、「行きます!」と即答しました。バブルの終わりかけでしたね。
学生時代はウエイターをやっていました。お客様にとってはアルバイトも社員も関係ないということで、学生でも頑張れば頑張るほど地位が上がって行く会社だったんです。正当に評価してもらっていて、頑張れば時給もキャリアも上がるのでいい会社だなと思って社員になりました。
入社3ヶ月で店の立て直し

-新卒でマハラジャに入社されて、どんなことをされていたんですか?
吉田:バブルが終わりかけていたので、地方に出してたお店の中には、売り上げが下降気味のところがあったんです。入社して初めて課せられたミッションが「そこの売り上げをあげて来い!」ということでした。
今では居酒屋チェーンのJプロジェクトの社長をしている新田さんと、ふたりで長野まで行きました。それで本当にがむしゃらに色々やって、3ヶ月で売り上げを上げてきたんです。
-入社3ヶ月で!驚きですね。具体的にどんなことをしたんですか?
吉田:本当に当たり前のことを人より多くやりましたよ。来たお客様に全力で喜んでもらえる体制を整えたり。夜中の3時くらいまでお店は営業していたんですけど、朝7時に起きて駅前でビラまきにいったりとか。そんなことを毎日やって、来てもらって、要はリピーター作りですよね。それを本当に一生懸命やったんです。
今となっては、前から続く体制っていうのはマンネリ化してしまうので、僕たちが新しい刺激となってお店が活性化をすることによって、組織も変わったんじゃないかなと思います。で、長野が立て直せたら、「次は金沢だ!」って別の所を立て直しに行きました。
-色々な所に行かれて、上手くいくことの方が多かったんですか?
吉田:最初は結果が出ないんですけど、自分たちの信じた道を行くしかないと思っていましたね。さっき言った、チラシ撒きを寝る間も惜しんでコツコツ続けたりとか、そういったことを積み重ねていって、やっと結果がでる。
そういう時ってお金が目的じゃなくて、本当にやりたいっていうか、「結果を出さなきゃ帰れない」みたいな危機感もあって本当に頑張りましたね。
自分がしたいことが出来る場所に行くことは自然なこと

-マハラジャのあとは、エイベックスに行かれたんですよね。転職の決め手になったことはありますか?
吉田:長野、金沢、仙台、名古屋とお店の立て直しが続きまして、ちょうど名古屋にいた時に、六本木にヴェルファーレ(エイベックス系列のディスコ)が出来て、エイベックスにヘッドハンティングされてヴェルファーレに行ったんです。
転職することに関しては、深く考えていないって言えば語弊がありますけど、自分がしたいことができるのであれば、会社を移ることに全く抵抗はなかったですね。やりたいことが出来る場所に移る事は自然だと考えています。それで給料が上がればラッキーだな、くらいの感覚で。お金はだいたい後からついてくるものだと思っていますけど。
-ヴェルファーレに移られたあとは、どんなことをやっていたんですか?
吉田:ヴェルファーレでは店舗運営のマネジメントをやっていました。5フロアくらいある大きなところで、組織としても大きくて、朝礼なんか200人くらいいたんですよ。そこの総支配人をやっていました。
年下総支配人が組織をまとめた方法

-200人!それだけの人数をまとめるのは大変だったでしょう。当時も今も、スタッフの方のモチベーションの管理で心がけていたことはありますか?
吉田:仕事をランクアップしていくに従って、年上の部下ができるようになったんです。幹部も全員年上でした。その時に僕が一番心がけていたことが、仕事上ではきちんと敬語を使って、偉ぶったり命令口調になったりは絶対しないことです。
僕のスタイルですけども、敬語や礼儀を気をつけることによって、より良い人間関係や組織を作っていけるっていうのはありますね。指示系統に関してはしっかりしているんですけど、それ以外ではしっかりと年上を立てる。それを本当に心がけていました。そういうところはうまくいったかなと。
-年上の方を飛び越えて出世できた理由というか、自分ではどんなところを意識していますか?
吉田:世渡り上手!というのは冗談です(笑)量も質も人一倍やったつもりです。誰よりも早く職場に行ったりとか、自分が20代の時は読書も含め、いろんなことで勉強しましたね。読書が好きだったんで。歴史書もそうだし、ビジネス書もそうだし。年下なのでそういうところはより謙虚に。と考えていました。
孤独な経営者の視界をひらく、たった一行のことば

-組織作りに具体的に役立った一冊ってありますか?本の選び方って難しいですよね。
吉田:たくさんあります。色々な本から得るものはあるんですけど、今ってマニュアル本が多く出ているじゃないですか。ああいうのは直接役に立つってことはないですね。実際、本の通りにやると失敗します。
本の通りに実行するってことは、ただの「受け売り」で「自分の決断」がないということなので、失敗してしまうんです。結局、自分でやってみて失敗するしかないんですけど、それも悪くないんです。それが蓄積することによってノウハウになってくるので。そういうこともみんな経験したほうがいいと思う。
-効率的にインプットする上で、心がけるべき読書法はありますか?
吉田:電子書籍じゃなくて紙の本です。絶対そう思います。ふせん貼ったりとか赤鉛筆で線引いたりできるのは大きなメリットです。僕も大事だと思うことを書き込みます。
経営者って孤独なんですよ。嬉しいこともあるし、嫌なこともあるんですけど、何気なく読んだ本のたった一行でモチベーションがものすごく上がることってあるんです。たった一行のことばだけでですよ。それって他の体験ではなかなか得られないことなので。
それを目的に読むのではなくて、色んな読書を重ねてくると、面白いことに、自分が悩んでることに対して、このことなんだなと気付けるマッチングの精度がものすごく上がるんですよ。ちょうどいま、悩んでいる事の答えになるような本に出会えるようになるんです。(後編に続く・・・)
[インタビュー] 頼母木 俊輔 [執筆・編集] サムライト編集部