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部下のパフォーマンスは上司しだい
組織文化の根強い企業において、上司の存在は部下の人間関係や帰属意識に大きな影響を及ぼします。日本産業カウンセラー協会の「働く人の電話相談室」結果報告(2016年)によると、悩みの相談相手として第一に公共機関、第二に上司に相談するというケースが増えているとのこと。
一方で、「人間関係」「ハラスメント」の悩みの原因は誰?という調査では、回答者の52.7%が上司(役員を含む)であると答えています。このことから、上司が部下のモチベーション、パフォーマンスを良くも悪くも左右する存在であることがわかります。
今回は、部下に信頼される上司と、部下が離れていく上司の特徴について触れていくとともに、リーダーに求められる性質について考察していきます。以前紹介した「指示待ち部下」は上司が作っている!自分で動く部下を育てる5つのコツもあわせて参考にしてください。
優れた上司の条件とは?
ドラッカーはマネジメントについてこう語っています。
「私は、唯一無二の答えというものを信じない。いかなる答えにも間違いのおそれがある。しかも、マネジメントを含め人間社会にかかわる事柄において重要なことは、正しいか間違いかではない。うまくいくかいかないかである」出典:『ドラッカー時代を超える言葉』上田惇生,2009年,p73
唯一無二の正解というのはないんですね。ちゃんと機能しているかどうかが重要だと。とはいえ、ある程度優秀な上司の条件については把握しておく必要がありますよね。いくつか要素はありますが、基本的な人物像としては次のようなものが挙げられます。
(1)信頼の置ける人物
(2)相手の言い分にも耳を傾けることのできる人物
(3)向上心をかき立ててくれる人物
(4)リスクを冒しても大丈夫だという気持ちにさせてくれる人物
(5)既存の目標よりも高い目標の設定を後押ししてくれる人物
以上のような性質を持った人物ほど、優れた上司であると言って良いでしょう。次に、上司と部下の関係性の良し悪しがどこで別れてくるのかを考察していきます。
部下に信頼される上司の3つの特徴
1. 具体的な目標を設定し、仕事を進捗させる
上司の最も重要な責務のひとつは、仕事を進捗させることです。人は仕事を終えた時や目標を達成した時、大きな喜びを感じ、強い高揚感を覚えます。
では仕事を進捗させるために上司がすべきことは何か?答えはいくつかありますが、とりわけ重要なことは具体的な目標を設定することです。具体的目標設定に関しては、『PDCAサイクルを「鬼速」にするための10の条件』をご覧ください。
目指すべき目標と、その仕事が重要であるという理由をはっきりさせておくことで、部下の仕事のペースを上げることができます。逆に仕事がはかどらないケースとしては、目標が曖昧でわかりにくかったり、無計画に目標を変更したりという場合が多いと言えます。
2. 部下を人間として尊重する
仕事の進捗と同様に上司が重んじるべきこととして、部下を人間として尊重することが挙げられます。企業という組織で働くうえで、人間関係が及ぼす影響は軽視できません。
例えば、上司や同僚が協力的かつ協調的で、新しいアイデアを歓迎する雰囲気の職場では創造性が高まります。さらに、職場の人間関係をポジティブに捉えている社員は、生産性や仕事への意欲、チームワークへの貢献などで高いパフォーマンスを発揮する傾向にあるのです。
感情や認識によってモチベーションが変化することは不思議なことではありません。上司が正当な評価や姿勢を示すことで、部下は進んで仕事を引き受け、大きなエネルギーを傾けるはずです。
3. 可愛らしい要素を持っている
上司という立場にあれば、シリアスな正論を部下に諭さなければならない場面も少なからずあるでしょう。そんなときに、可愛らしい要素を持った人であれば、ただ怖いイメージしかない上司よりも、部下は余計なプレッシャーを感じずに言葉を受け入れやすいはずです。
また、ユニークで可愛らしいキャラクターは人を惹きつけたり、癒したりもするので、自然と人が集まり、コミュニケーションを円滑に進めることができます。部下に信頼される上司を目指すのであれば、普段から仕事の話だけではなく、プライベートな趣味の話をするなど、自分の魅力を部下にアピールすることも必要と言えるでしょう。
部下が離れていく上司の3つの特徴

1. 上から目線で、自分が感じたままに話す
次に部下が離れていく上司の特徴を考察していきます。上司と部下の関係と言っても、上からの物言いは相手に不快感を与えやすいものです。また、相手の立場になって物事を考えず、自分の意見をそのまま口にするのも軋轢が生じる原因となります。フィードバックについては『部下に栄養与えてる?できる上司が実践する最高のフィードバック13ヶ条』をご覧ください。
たとえ嫌味がなかったとしても、ニュアンスひとつで言葉の伝わりやすさは変わってきます。言いたいことを部下にうまく伝えられないという人は、組織の関係に固執せず、同じ社会人として対等に敬語で話すことを心がけてみるといいかもしれません。
2. 過去の栄光や人脈を自慢したがる
自慢話が多いことも部下の信頼を失う原因となることがあります。過去の武勇伝や、影響力の大きい人物とのつながりを話すことは気持ちのいいことかもしれませんが、ほとんどの場合、相手の興味を引くことはできません。
このほかにも、うんちくや専門用語を多用した話し方をする人も敬遠されがちです。特にIT業界に属している人は仕事の性質上この傾向が強いので、同じ会社に勤める人間同士であっても全員がプロフェッショナルであると考えずに、誰でもわかる言葉使いをするよう普段から気をつけたほうが無難でしょう。
3. 実行に関与せず、部下をサポートしない
優れたリーダーシップを持っている上司であれば、仕事のプロセスにおいて準備から実行まで自らも積極的に関わり、ステークホルダーを巻き込んで熱意を引き出すものです。逆に冴えないリーダーほど、重要な情報を集めようとせず準備をおろそかにして、実行まで関与しない傾向があります。
上司として部下のモチベーションを引き出すためには、わかりやすいマイルストーンを設け、判断の中身や理由を丁寧に説明し、実行へのサポートを惜しんではいけません。
上司として必要な柔軟性を身につける

上司の日々の行動が重要なのは、それが部下のモチベーションを左右し、仕事の進捗に関わるからだけではありません。上司と部下の信頼関係の成り立たない組織では、変革のための仕組みが設けられず、企業の業績にまで悪影響を及ぼすリスクを高めてしまうのです。苦手な上司とのつき合い方は『人間関係は技術だ!苦手な上司との正しい付き合い方【タイプ別】 』をご覧ください。
真に優れたリーダーは、直面している状況を正しく把握するだけではなく、状況に応じて自分の態度や意思決定スタイルを変えることのできる柔軟性を持ち合わせているものです。立場に固執することなく、たゆみなくフィードバックを求めて耳を傾けることができれば、組織に好循環が生まれ、人間関係も良くなるはずです。
上司をマネジメントするフォロワーシップ
たとえこの上司は仕事ができないなと思ってもそこで諦めてはいけません。フォロワーシップと呼ばれる部下による上司のマネジメントが多くの企業で注目を集めています。
フォロワーシップとは組織の目標達成に向けてフォロワーが主体的に行動してリーダーを補助することです。リーダーの指示に従って成果を上げるだけでなく、自発的に意見を述べて、リーダーの誤りを修正することが期待されます。組織が出す結果に対して、リーダーが及ぼす影響は1割〜2割でそれに対して、フォロワーが及ぼす影響は8割〜9割にものぼるとも言われています。
冷静さを保ちながら、疑問や不満、リーダーの間違いなどをリーダーに伝えて、組織全体にとって有益な状況を意識してください。上司の上手な使い方は『使って使って使い倒す!上司の上手な操縦の仕方お教えします!』を参考にしてください。
