「正しい自信」を手に入れよう!自分を正しく評価するための4つのメソッド

その自信は「本物」か?「偽物」か?

ビジネスにおいてもプライベートにもおいても「自信」は常にキーワードです。心理学の世界では、自信に満ち溢れた態度を見せるだけで、周囲がその人を信用しやすくなることが実証されていますし、自分も自信を持つだけで日々の充実感が大きく変わります。

しかしこの自信には「本物」と「偽物」があり、間違った偽物の自信をそれと知らずに手に入れてしまうと、自分を正しく評価できなくなり、最悪の場合心を病んでしまう危険すらあります。ここではそんな事態を防ぎ、自分を正しく評価して正真正銘の自信をつけるための、4つのメソッドを紹介します。

「正しい自信」と「間違った自信」の違い

自信の有無は自己をどのように評価しているかに大きく左右されます。では自己評価とは何なのでしょうか。フランスの人気精神科医クリストフ・アンドレさんは、著書『自己評価メソッド―自分とうまくつきあうための心理学』の中で次のように定義づけています。

自己評価とは、
---まず、「自分についてどう思うか」である
---次に、「他の人からどうみられていると思うか」である
引用:前掲書p23

前者においては何かしらの成功が、後者においては誰かからの愛(や称賛)が自己評価を改善します。しかしこの成功や愛などの基準が歪んでしまうと、私たちは「間違った自信」に陥ってしまうのです。ここでいう歪んだ基準とは、次の3つを指します。

1.成績
2.物質的な豊かさ
3.身体的な外見

仕事での実績や、「どんな家に住んでいるか」「どんな車に乗っているか」、細いか太いか……これらが全て無駄な価値観だというわけではありません。しかし同時に3つの価値観は、たびたび必要以上に重んじられるのも事実です。

これらを基準に自己評価を行うことは「自分を評価している」というより、「仕事がデキて、お金持ちで、容姿の良い自分にこだわっている」と表現するのが正確です。

では正しく自己評価を下して、正しい自信を身につけるためにはどうすればいいのか。それは「自分にどうにかできることと、どうにもできないことをきちんと理解する」(引用:前掲書p62)ことです。

自分を正しく評価するための4つのメソッド

自分を正しく評価できず、思い描く理想の自分にこだわってしまうのは、理想の自分でいなければ自分の価値が損なわれてしまうと思い込んでいるからです。

「自分はもっとやれるはずだ」「自分は完璧なはずだ」「みんなが自分を受け入れてくれるはずだ」そうした現実と乖離した思い込みが、自己評価を歪めます。以下ではこうした状況を回避し、再び正しい自己評価を下すための4つのメソッドを紹介します。

●「自分への暴力」をやめる

「自分への暴力」には自分を罵ったり、叩いたりといった深刻なものだけでなく、自分の成長を認めずに「まだやれるはずなのに」と不満を感じたり、反省や後悔を通り越して「自分には価値がない」と思ったりすることも含まれます。

自分への暴力をふるってしまうとき、私たちはつい自分を評価するのではなく、思い描く理想的な自分にこだわっています。

しかし残念ながら自分が失敗したことへの罰の意味合いを持つ「自分への暴力」には全く意味がありません。旧来の考えでは罰は成長を促進するとされていましたが、心理学の分野ではずいぶん前に「罰や暴力に人の成長などのポジティブな効果は認められない」という結論が出ているのです。意味なく自分を貶める行為は、いたずらに自己評価を下げ、自信を失うだけ。すぐにやめてしまうべきです。

●「コンプレックス」と正しく向き合う

コンプレックスは誰もが抱くものです。しかし多くのコンプレックスは、他人から見ると「そんなつまらないことで悩んでいるのか」と不思議に思うものばかりです。

2003年のフランスの『心理学』という雑誌のアンケートによれば、対象者は以下のようなコンプレックスを抱いていると回答しています。

・「教養がない」70%
・「きちんと話ができない」69%
・「知性に欠けている」67%
・「容姿が劣っている」54%

冷静に考えれば教養やトーク力、知性や容姿が文句なしに完璧な人などほとんどいません。

にもかかわらず私たちはこれらを自己評価を下げる材料に使っているのです。ではどうすればコンプレックスときちんと向き合えるのでしょうか。対策は以下の2つです。

1.コンプレックスに逃げず、コンプレックスを隠さず、コンプレックスに振り回されないこと。
2.コンプレックスを相対化すること。

「自分はブサイクだからモテない」「ブサイクだから顔を隠す髪型にする」「ブサイクだから合コンにもいかない」これがコンプレックスに逃げ、コンプレックスを隠し、コンプレックスに振り回されている典型です。これを続けている限り正しい自己評価は下せません。

また、自分のコンプレックスを客観的に観察したり、同じような欠点を持っているはずの他人を観察したり、あるいは誰かにコンプレックスについて話してみるのも効果的です。「よくよく考えると自分のコンプレックスは大きな問題ではない」と実感することが、コンプレックスと正しく向き合うきっかけになります。

●「劣っている自分」のままで生きる

私たちは「当然、できてもいいことができない時」と「みんなの中で自分だけが違っていると思う時」に自分が劣っていると感じます。人は誰もが誰もに対して劣っているので、本来劣っていることを受け入れてしまえば問題は解決します。

しかし思い描く理想的な自分にこだわっていると、この劣っている自分が受け入れられず、その事実を隠そうとして嘘をついたり、劣っていないふりをしたりします。これでは正しい自己評価はできません。

劣っている自分を受け入れて生きていくためには「嘘をついて、劣っていないふりをしない」以外にも実践的なトレーニング方法があります。

1.準備をせずにレジャーや旅に出かけてみる。

→「完璧な準備」がなくとも楽しめることを知り、それまで自分が完璧を求めて動けなくなっていたことを知りましょう。

2.家電店の店員に家電の使い方を尋ねてみる。

→そして、一通り説明してもらってから「すみません、よくわからなかったので、もう一度説明してもらえますか」と言ってみましょう(ただし、お店に人気が少ない時に限る)。こうして劣っている自分を主張することに慣れるのです。

完璧でない自分、劣っている自分に慣れてきたら、より自分の日常で近いところでも同じことを試してみましょう。自然と劣っていることが怖くなくなるはずです。

●「自分が受け入れられない事実」を受け入れる

「メールが返って来ない」「挨拶してもらえない」という軽いものから、いじめや差別などの深刻なものまで、自分が受け入れられない事実は私たちを動揺させます。すると私たちがどう反応するかというと、怒りや憎しみを覚えたり、実際に他人に攻撃的になったり、孤立しようとしたりします。

これは到底状況を改善するような反応ではありません。他者からはますます受け入れられなくなり、自己評価も下がっていきます。しかし単に特定の人から自分が受け入れられなくても、自分自身の本来の価値がなくなるわけではありません。そのことを実感するための方法が以下の3つです。

1.鏡を見る。

→人は「自分が受け入れらない」と知ると、鏡に映った自分を見なくなることが実験でわかっています。しかしこういうときこそ反対に鏡を見て、「自分のいいところは何か?」と自問自答することが大切だということも、複数の実験で明らかになっています。これにより「自分が受け入れらない」というマイナス要素を相対化し、自分をコントロールする力を回復させるのです。

2.部屋の掃除をする。

→「自分が受け入れられない事実」に直面すると、人の思考力が低下することがわかっています。そのためショックに打ちひしがれて考えこんではいけません。掃除や日曜大工などの作業に打ち込んで一度頭をクールダウンし、冷静になってから再度自己評価を行いましょう。

3.人と会う。

→私たちは「特定の人から受け入れられなかった」を「全ての人が自分を受け入れてくれない」と誤認しがちです。しかしたいていの場合そんなことはありません。その事実を実感するには、自分の中に閉じこもるのではなく、自分を受け入れてくれる他の人と会うべきなのです。また、このようなときのためにも狭く深い人間関係以外に、広く浅い人間関係も築いておきましょう。

自分を正しく評価できれば、揺るぎない自信が手に入る

私たちの自信が揺らぐときは、たいていの場合間違った自己評価をしているときです。自分の価値を正しく理解し、それに基づいた自己評価ができていれば、いちいち自信が脅かされることもありません。クリストフ・アンドレさんの著書『自己評価メソッド―自分とうまくつきあうための心理学』には、他にも多くの正しい自己評価を保つ方法が紹介されています。「本物の自信が欲しい」という人は、一度手に取ってみてはいかがでしょうか。

参考文献『自己評価メソッド―自分とうまくつきあうための心理学』
Career Supli
油断すると偽物の自信に酔ってしまうことがあります。注意しましょう。
[文]鈴木 直人 [編集]サムライト編集部