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アグレッシブでないと成長できないのか?
「成長するためにはアグレッシブになれ」「自分を売り込んでチャンスをつかめ」という話はウェブや雑誌、書籍問わずよく見られますが、果たして本当にアグレッシブでないと成長できないのでしょうか。
筆者はそうは思いません。なぜなら筆者はフリーライターとして5年間活動していますが、アグレッシブになることも自分を売り込むこともなく、これまで成長し続けてきたからです。
もちろん文章力にしろ取材力にしろ、まだまだな部分もたくさんあります。しかし収入に関して言えば毎年右肩上がりで、月収は会社員時代の3倍以上になっています。
また仕事の質も最初は個人ブログの代筆を細々とやっていましたが、今ではウェブメディアの編集者や大手出版でのブックライターとしての仕事もいただくようになっています。
これはライターとして成長していると言って差し支えないのではないでしょうか。
この結果には運を含む様々な要素が絡んでいますが、今回スポットライトを当てたいのは、1年目の頃に定めたあるコンセプトです。そのコンセプトとは「チャンスを掴むことはしなくても、受け入れるくらいはする」です。
以下ではこのコンセプトの特長や使用上の注意点を解説するとともに、このコンセプトに向いている人についても説明したいと思います。
「受け入れるだけ」でも成長し続けられる理由

「チャンスを掴むことはしなくても、受け入れるくらいはする」というコンセプトは、アグレッシブにチャンスを掴もうとしたり、自分を売り込んだりするようなことはせず、ただ自分のもとに偶然転がり込んだチャンスを必要以上に吟味せずにただ受け入れるというものです。
「そんな受け身で本当に成長できるのか」と思われるかもしれませんが、筆者が成長し続けられたのには理由があります。その理由は「未経験・予想外の事態が起きるから」です。
筆者はライターとしての仕事を受けた時、基本的に仕事を選ばないようにしています。「できるかどうかは別として、とりあえず全力で挑戦します」というスタンスをとるのです。
例えば筆者には自分名義で2冊の電子書籍の出版実績がありますが、いずれも出版社から「このテーマの電子書籍って書けますか?」とチャンスをいただき、それをよく考えもせずに「わかりませんが、やってみましょう」と受け入れた結果です。
こんな調子なので、自分でもよくわからないうちに未経験の現場に飛び込んでいたり、予想外の事態に巻き込まれたりもします。電子書籍出版以外では、今まで以下のような経験を積んできました。
クライアントの依頼 | 受け入れる時のスタンス | 発生した事態 |
---|---|---|
取材できますか? | やったことないですけど、やってみます。 | 取材のアポイントってどうやってとるんだ…? |
税金関連の原稿書けますか? | さあ……?やってみましょうか。 | 意味不明な専門用語がどっさり。 |
ワードプレスの入稿できますか? | (ワードのバージョン違いかな?)いけますよ。 | えいちてぃーえむえる? |
1万字の原稿って書けますか? | いけるんじゃないですかね……? | 情報量が全然足りない! |
法律の解説できます? | たぶんできるでしょう。 | 法律の条文が難しすぎて理解できない……。 |
このような事態に陥って「いっそ投げ出したい」と思ったことは一度や二度ではありません。しかし一度「できます」と受け入れた仕事を放り投げるわけにもいきません。結果必死になって解決策を探し出すことになります。
アポイントの取り方を調べたり、本を買って専門用語を勉強したり、情報量を増やすために自腹で文献を購入したり、公的機関に電話をして条文の解説をしてもらったり……。
するとなんとか事態を乗り越えた時には、「困った時はどうすればいいか」の引き出しが増えていて、ライターとして成長しているのです。「困ってもなんとかできる」という自信が生まれるので、ますます「やったことないけど、なんかやってみます」と言えるようになり、結果筆者はより多種多様なチャンスを受け入れられるようになっていきました。
これは何もライターだけの話ではないのではないでしょうか。企業でも未経験・予想外の事態への対応力がある人に、より多くの成長のチャンスが与えられるはずです。これがチャンスを受け入れるだけでも成長できる理由です。
「受け入れるだけ」で成長し続けるための3つのポイント

しかしある程度のレベルに成長した人や、すでにある程度のレベルにある人の場合、むやみにチャンスを受け入れていると成長がストップしてしまいます。なぜならチャンスの中には「ハズレ」も紛れているからです。筆者自身、何でもかんでもチャンスだと思って仕事を引き受けたら、お金と疲労だけが増えて、ライターとしての成長には全く繋がらなかったという経験がいくつもあります。
以下ではその経験を踏まえたうえで、「受け入れるだけ」で成長し続けるために押さえておくべき3つのポイントを紹介します。
●「自分のレベルより下」のチャンスはスルーする
「あんまり頑張らなくていい」「簡単すぎてつまらない」という仕事を受けても、成長することはありません。そのため自分のレベルより下のチャンスだと思ったら、それは断るか、無視をするべきです。
筆者の場合、舞い込んだチャンスが自分のレベルより上か下かを判別する目安は「依頼の概要を聞いただけで原稿のイメージがつくかどうか」です。概要を聞いた時点で「こうやって情報を集めて、こうやって構成して、こうやって文章に書けば出来上がり」というイメージできたら、それは自分のレベルに対して簡単すぎる仕事だと思うようにしています。
逆にイメージできない部分があるのは、そこに自分の経験からは導き出せない何かがある証拠。もちろんその「何か」が成長の糧になるかどうかはわかりませんが、少なくとも新しい経験にはなるはずです。
●「やってみたい」と少しでも思うチャンスだけ受け入れる
高いモチベーションで仕事をしているとき、人はいろいろな情報を吸収し、創意工夫を凝らすため、効率的に成長できます。逆に「やりたくない」「面白くない」と思っているときは脳の処理能力も低下し、工夫もしないため、成長の効率が大幅に低下してしまいます。
そのため舞い込んだチャンスに対して「やりたい」「やってみたい」と思うかどうかは、自分の成長に繋げられるかどうかに直結します。実際筆者は「本当はやりたくないけど、原稿料が高いからやってみよう」と思って受けた仕事で成長を実感できた試しがありません。
したがってチャンスを受け入れることを通じて成長したいのであれば、チャンスが舞い込んだ入り口のところでやりたいか・やりたくないかというフィルターにかける必要があるのです。
●自分のスキルアップ戦略に合わせてチャンスを選ぶ
最後のポイントを実践するためには、まず自分が将来どんなふうに成長していきたいか、そのためにはどんなスキルが必要かを把握しておく必要があります。そうしてスキルアップ戦略を立てたうえで、そのスキルにプラスになるかどうかでチャンスを選ぶのです。
例えば現在ウェブライターは文字通り掃いて捨てるほどいます。しかし人工知能が発達していけば、こうしたウェブライターの大半は淘汰されるでしょう。そんな中で筆者がウェブライターとして生き残るためには、今よりももっと取材力と編集力を磨く必要があると思っています。
そのため筆者は現在、この2つのスキルが身につきそうなチャンスを優先的に受け入れるようにしています。このように戦略的にチャンスを選べるようになれば、むやみに受け入れるよりも着実に成長していくことができます。
向いているのは「他人の期待に応えるのが得意な人」

最後に「チャンスを掴むことはしなくても、受け入れるくらいはする」というコンセプトに向いている人について説明しておきましょう。
それは第一に「他人の期待に応えるのが得意な人」です。なぜなら与えられたチャンスを受け入れるという行為は、「この人ならやってくれるかも」という相手の期待に応えようとする行為だからです。そのため自分の中に情熱的な何かがなくても、他人に期待されると頑張らずにはいられない人というのは、このコンセプトと相性がいいはずです。
第二に「自己肯定感が低い人」も、このコンセプトに向いています。自己肯定感が低い人は、自分を売り込むのが苦手なはずです。誇りを持てない自社製品を売り込むのが辛いように、自分でさえ肯定できない自分を売り込むのは苦痛以外の何物でもありません。そのため自己肯定感が低い人にとって「自分を売り込んでチャンスを掴む」というコンセプトは、現実離れしているように感じるはずです。
しかし「チャンスを掴むことはしなくても、受け入れるくらいはする」であれば、チャンスを受け入れるだけなので自分を売り込む必要はありません。そのため自己肯定感が低くて、自分をアピールできない人も、このコンセプトと相性がいいはずです。
受け身でも成長し続けられる
「チャンスを掴むことはしなくても、受け入れるくらいはする」というコンセプトは、お世辞にもカッコいいものではありません。しかし野暮ったい言葉のチョイスも含めて、受け身になりがちな筆者にぴったりのコンセプトだと思っています。
筆者は人が成長するために必要なのは、無理なく努力を継続することだと考えています。無理をして継続できなくなればどんなに早く成長できても中途半端な結末を迎えてしまうでしょう。そのために効果的な方法の一つが、これを読んでいる人それぞれに合ったコンセプトの設定です。
それが筆者の考えた「チャンスを掴むことはしなくても、受け入れるくらいはする」であればこれほど嬉しいことはありませんが、もちろん別のオリジナルのコンセプトでも構いません。
ぜひ自分が無理なく成長し続けられるコンセプトを見つけてみてください。それさえできればきっと、「(無理に)アグレッシブになる」「(無理に)自分を売り込む」なんてしなくても、成長していけるはずです。
