転職した職場に早くとけこむための5つの方法

とけこめないと仕事にならない

仕事とは、基本的にチームでやるものです。仕事で成果をあげようと思えば、チームの一員として機能できなければ話になりません。

とりわけ「よそ者」としてチームのなかに入っていく転職した職場ではなおさらです。中途採用では即戦力を期待されることが少なくありません。入社した側としては一刻も早く成果を出したいところですが、その前提となるのが「職場にとけこんでいること」なのです。

そこでここでは、転職した職場にできるだけ早くとけこむための5つの方法を紹介します。

3年以内離職者の理由トップ1は「人間関係への不満」

中小企業白書によれば、中小企業・小規模事業者の中途採用者のうち、3年以内に離職する率は3割を超えています。この人たちがなぜ辞めたのかを見てみると、実にその3割が「人間関係(上司・経営者)への不満」となっています。

いっぽうで、離職しなかった人たちのうち「職場環境への配慮(人間関係、ハラスメント対策等)」を定着した理由としてあげている人は6割以上。対人面での居心地の良し悪しが転職先でもたらす影響力は非常に大きいことがわかります。

とはいえ「転職先でうまく馴染めなかったから」という理由で簡単に仕事を辞めるわけにもいきません。前向きな転職ではないので面接で退職理由を話しにくくなりますし、転職回数をあまりにも多いと次の転職がしにくくなるのが今の日本の転職市場の現状だからです。

したがって一度転職してしまったのなら、その職場で何かしらの実績を残すまでは、できるだけとどまるべきだと言えるでしょう。

「実力を見せなきゃ」より好かれる努力が先

転職した人は「早く実力を見せなきゃ」と意気込みがちなもの。もちろん会社側もそれを期待していますが、実力を発揮すること以前にまずは「仲間」になってくれることを期待しています。

中途採用の目的はたいていの場合「今のチームの力をより強化したい」です。そのため会社側は、入社直後に張り切ってワンマンプレイをされるよりも、チームの一員として実績を残してほしいと考えているのです。

中途で入り直したほうが得なの?転職エージェントに聞いた、営業の転職市場のいま【2018年度版】で、転職コンサルタントとして長年の経験を持つ森彩乃さんが、「今の転職市場で一番強いと思うのは『キャラクターがいい人』」と言っていることからもわかります。

求人募集をする会社のなかには「ご飯に誘ったら参加する人」「飲みに行くことが苦手でない人」という条件をつけてきたり、「愛嬌がある」「素直」「一生懸命で放っておけない」といったキャラクターの人を好んだりするところも多いのだとか。

つまり会社側は「早く職場にとけこめる人の方がいい」と考えているということです。だから「実力を見せなきゃ」と張り切るよりも、まずは新しい職場の人たちに好かれる努力をするほうが大事なのです。

転職した職場に早くとけこむための5つの方法

ではどうすればうまく転職した職場に馴染めるのでしょうか。以下では効果的な5つの方法を紹介します。

1. 基本中の基本、「挨拶・笑顔・名前」をおさえる

職場に早くとけこむために最初にするべき仕事は笑顔での挨拶と、少しでも話した人の名前を覚えることです。

人間関係の基本は気持ちの良い挨拶、爽やかな笑顔、そして相手の名前を覚えて呼ぶことです。これができていない人は好かれもしなければ信頼もされません。

人の名前を覚えるのが苦手な人は、デスクの場所や見た目の特徴をメモにとって家に帰ってから見直すなどして、確実に覚えられるよう工夫しましょう。

2. 前職までのプライドは一切捨てる

ロングセラー『信頼の構造 こころと社会の進化ゲーム』の著者である山岸俊男氏は「他人から信頼してもらいたいなら、嘘をつかなければいいだけ」と言います。

しかし前職で実績を残していたり、「自分の実力を見せなきゃ」と意気込んでいたりすると、どうしても余計なプライドをもってしまいます。すると、わからない仕事なのに知っているフリをしたり、過去の経歴を盛ってしまったりと嘘につながりかねません。これでは信頼は得られず、職場に馴染むのは無理です。

「今までの自分のやり方が正しい」といった前職までのプライドは全部捨ててしまいましょう。転職した職場で受け入れられるために必要なのは余計なプライドではなく、謙虚に学ぶ姿勢です。

3. 上司か部下かにかかわらず「人の話を聞く」

自己啓発本の名著『人を動かす』のなかで、著者のデール・カーネギーは「人に好かれる六原則」の一つとして「聞き手にまわる」をあげています。

人は誰しもが自分の重要性を実感したいものなので、ついつい自分の話ばかりをしがちです。特に転職したばかりの職場というのは、できる仕事も少なく、自分の重要性を実感できないものです。

その結果「自分は今までこんな仕事をしてきた」と昔の自慢をしてしまったり、「前の職場ではこんなやり方はしていなかった」と聞かれてもいない昔話をしたりと、自分の話ばかりしてしまいます。

しかしそれでは、職場の人たちの「自分の重要性を実感したい」という欲求を無視して、自分の欲望ばかりを満たしていることになります。そんな人が社内で受け入れられるはずがありません。

だからまずは上司か部下かに関係なく、人の話を聞くところからはじめましょう。仕事の内容やこだわりでもいいですし、どんな食べ物やお酒が好きなのか、休日はどんな過ごし方をしているのかでもかまいません。自分のことを知ってもらうのは、そのあとで十分です。

4. 「あなたのことを知りたい」のサインを見逃さない

「今日の夜にでも、一杯飲みにいきませんか」

入社してしばらく経てば、こうしたお誘いが一つや二つはあるはず。

たしかに近年は「お酒が飲めないので飲み会にはいかない」「自分の時間を大切にしたい」という人も増えてきています。もちろん飲みに行くかどうかは個人の自由です。

でも入社してすぐの時期はまた別の話。なぜなら飲み会へのお誘いは「あなたのことを知りたい」というサインだからです。せっかく相手が自分のことを知りたいと言っているのに、その気持ちを無下にすれば、心の距離はいつまでたっても縮まりません。

職場にしっかり馴染んで「実は自分、お酒苦手なんですよね。普通にメシ食いにいきませんか?」と言えるようになるまでは、「あなたのことを知りたい」というサインに素直に応えておきましょう。

5. 「郷に入っては郷に従え」を実践する

デジタル大辞泉によれば、郷に入っては郷に従えは「その土地に住むにはそこの風俗・習慣に従うのが処世の術である」という意味。英語では「When in Rome do as the Romans do」となり、「ローマにいるときはローマ人のように振る舞え」と表現されます。

これは職場にとけこむための鉄則と言えるでしょう。

・部長や課長などの役職者を役職で呼ぶのか、名前で呼ぶのか。
・内勤の人の服装はどこまで自由なのか。
・就業時間ギリギリに出勤している人が多いか、10分前には全員デスクに座っているか。
・いくらくらいなら接待伝票を切っても問題ないか。 など

会社にはその会社ごとの風俗・習慣があるものです。会社によっては部署ごとに文化が違うところもあるでしょう。新参者である新入社員は、まずはそれらをしっかりと学ぶ必要があります。

「自分のやりたいことや言いたいことを主張するのは、会社の風俗・習慣を理解して、既存の社員と同じ振る舞いができるようになってから」と心得ましょう。

会社のためにも自分のためにも、まずとけこむべし

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会社側が中途採用をする目的は、社内に新しい風を吹かせたいという場合もありますが、たいていは「今のチームの力をより強化したい」というもの。

そのため、中途採用者にはワンマンプレイに走るのではなく、ましてや自分のやり方をほかの社員に押しつけるのでもなく、まずはできるだけ早く会社の一員になってもらいたいと考えています。

いっぽう、中途採用で入社する側としてもできるだけ早く会社に受け入れてもらい、気持ちよく働ける環境を整え、成果へとつなげたいところです。

つまり「中途採用者が社内にとけこむ」というのは、雇う側と雇われる側両方のためになるのです。だからまずはここであげた5つの方法を実践して、自分が会社にとけこむ努力をしていきましょう。

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まず自分から相手に興味をもつことが重要だと思います。
[文・編集] サムライト編集部
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