30代は勝負の世代
転職するのも、独立して勝負をするのも、30代というのは、まことにいい年代だと思います。なぜなら、人間がもっともパワフルで、エネルギッシュに何でもやってやるぞ、という気持ちになれるのは30代だからです。
やる気の源として知られる男性ホルモンのテストステロンは、20代から30代くらいで最高潮に分泌されます。テストステロンがたくさん分泌されるので、エネルギーに満ち溢れるのが、だいたいこれくらいの年代になるわけです。
20代ですと、まだ自分の適性がわかっていなかったり、若すぎるので努力が空回りしたりすることが多いのですけれども、30代になるとそれなりに仕事の勘所というか、仕事のコツもわかってきて、本気の勝負もできるでしょう。
時代を動かしてきたのは30代

能の大成者である世阿弥は、「30代までに一流の仕事をしなさい」とアドバイスしています。なぜなら、40代になると身体も少しずつ疲れてきますし、精神的にも保守的になりがちで、大きな勝負ができなくなってくるからです。
明治維新という、世界的に見ても大変な偉業を成し遂げた幕末の志士たちは、当時みんな30代からせいぜい40代前半まで。西郷隆盛にしろ、大久保利通にしろ、木戸孝允にしろ、当時はいずれも30代。人生で、もっとも脂がのる年代だったのです。
戦後の経済復興も、基本的には30代の若者たちが成し遂げました。ソニーも創設時の井深大さんは38歳、盛田昭夫さんは25歳。本田宗一郎さんがアート商会から独立したのは、20代前半でしたが、それまでに6年間、きっちりと勤めています。
ベンチャー社長の企業年齢

ちなみに、ケネディ大統領が、「10年以内に月に人類を送り出す!」というスピーチをしたのが1962年。そのスピーチを聞いて感動した大学生たちが、できたてホヤホヤのNASAに入り、アポロ計画を成功させたのは7年後の1969年でした。このとき、エンジニアの平均年齢は28歳だったそうです。
日本で行われた勝ち組ベンチャーの社長71人の「起業年齢」を計算したところ、33.6歳だったというデータもあります。これらの例から総合的に判断すると、独立するにしろ、転職するにしろ、やはり30代というのは、勝負に打って出るのにまことにいい年代なのではないでしょうか。いい仕事をするのなら、やっぱり30代くらいがいいですよ、ということは、心理学的にも確認されています。
米国ブルックリン・カレッジのウェイン・デニスは、数多くの偉人についての伝記を調べ、やはり30代、40代がもっとも脂にのって仕事ができることを突き止めています。デニスは、彫刻家や画家、音楽家などを調べると、もっとも作品数が多いのが30代でした。
またそれぞれにとっての名作や代表作も、この年代にもっとも多くみられました。70代になると3分の1から4分の1にまで、作品数は減ってしまいました。転職の勝負でも、やはり30代くらいがよいと思います。
20代はじっくり仕事する

20代での転職は、あまりお勧めできません。なぜかというと、「ただ我慢できないだけ」のようなイメージを与えてしまうから。まだ若いのに、何回も転職していると、かりに正当な理由があるのだとしても、やっぱり「我慢できない人」のように見られてしまうのではないかと思います。
できれば20代は、じっくりと仕事を覚え、勝負するのなら30代がいいのではないでしょうか。30代になる頃には、実力もついているでしょうし、身体のバイタリティも最高潮になっていると思います。
かりに大学を卒業し、新卒で入社した会社があまりよくないところでも、少なくとも5年くらいは頑張りたいものです。「お金をもらいながら、なおかつ我慢の勉強をさせてもらっている」とでも思えばいいのです。そのときに、盗めるべき技術はどんどん吸収し、30代になってからの転職で勝負すればいいのです。
自分の適性に合った仕事を見つける
もちろん、私は20代の転職はやめておきなさいとか、40代になってからの転職は絶対に失敗しますよ、などと言っているわけではありません。
20代でも十分に仕事のスキルを身につけた後であれば、どこに転職してもうまくいくでしょうし、40代でも本当に自分の適性に合った仕事が見つかれば、遅すぎるということもないでしょう。あくまで30代というのは目安にすぎませんので、その点は誤解しないでください。
