キャリアはどこまで設計するべきか?プロが教えるキャリア戦略

キャリア設計はロケット発射ではなく自動車の運転

キャリアは自ら設計(デザイン)するものであるという認識はすでに多くの人が持っていることと思います。

ただ、どのようにデザインすべきか、また、どの程度のスパンを見据えてデザインすべきか、という点に関しては人によって考え方が様々です。

キャリアデザインは正解がない世界ですが、当コラムでベースとして抑えておきたい考え方を整理したいと思います。

いきなり結論めいたことを言いますが、キャリアのデザインはロケット発射ではなく自動車の運転をメタファーとすべきです。

その意味するところは、キャリアはロケット発射のように目的地が固定されていたり軌道が概ね決まっているというものではなく、自動車の運転のように次の曲がり角で行き方を変えたりそもそも目的地を変えたりして良いということです。(ロケットも軌道修正できますよ、というツッコミはいったん置いておいてください笑)

また、自動車の運転は目的地がない単なるドライブという場合もあります(ロケットは今のところそういうのはないですよね)。キャリアも同じです。

目的地がなく(あるいは曖昧で)、ふらふらするときがあっても良いのです。このことを神戸大学大学院経営学研究科の金井壽宏教授は「キャリアドリフト」と呼んでいます。

キャリアのデザインは自動車を運転するように、それ自体を楽しむときもあれば、目的地を定めて最短距離で進むときもあっても良いし、寄り道しながら進んでも良い。それくらい柔軟に考えてよいのです。

なぜ目的地を定めなくても良いのか

当サイトのコラムに目を通している読者の方であればスタンフォード大学のクランボルツ名誉教授の「計画された偶発性理論(Planned Happenstance Theory)」についてはご存知のことと思います。

個人のキャリアは偶然に起こる予期せぬ出来事によって決定されている事実があり、その偶発的な出来事を計画的に発生させて活かしていく、というものです。

目的地を定めていてもドリフトしていても、その過程の中で出会った人、経験したこと、失ったもの、手に入れたもの、など様々な状況の変化が起こります。その変化をオープンなスタンスで味方につけてキャリアを模索していくことの方が現実的なアプローチです。

目的地に拘泥するがあまり、「なぜその目的地に到達するのか(したいのか)」という観点が疎かになり到達そのものが目的にすり替わってしまうということがよくあります。ビジネスでもそういうことがありますよね。

この場合、目的地に到達しても単なる「失敗の達成」になってしまう可能性があります。

もちろん、キャリアはビジネスと違ってプロセスそのものが意味を持つものなので失敗というレッテルはありえないのですが、それでも固執しすぎることは避けたほうが良いでしょう。

Will,Can,Mustを変化させたWill,Done,Awareness

キャリアのデザインは自動車の運転をメタファーとして考えるということはご理解いただけたかと思います。

ただ、メタファーとして理解できても、現実的に自分のキャリアをどのようにデザインしていくのか、というヒントにはなりません。

そこでキャリアデザインの考え方を、「Will, Can, Must」の軸と、スティーブ・ジョブズの有名なスピーチである「Connecting the Dots」を織り交ぜて説明していきます。

Will, Can, Mustをベン図で表現するのはよくできたフレームで異論を差し込む余地はあまりないのですが、筆者なりの考えをもとにCanとMustを次のように変化させます。

【Can】

日本語では「できること」と訳されます。しかし、「できること」と言われると急に後ろ向きになるのが日本人の特徴です。「できること」ではなく、「やったことがあること」と言い換えます。

筆者の考えでは「やったことがあること」=「できること」なのですが、この等式をイメージできない人の方が多いようです。Canは思い切ってDoneにしましょう。

【Must】

日本語では「すべきこと」と訳されます。キャリアは会社とともにあるのだから、会社から指示された「あなたがやらなくてはならないこと」も含めてデザインしましょうね、ということです。

ただ、今回はもっと広く人生を見据え、会社に囚われずに自分自身に正直にキャリアをデザインしていくことを考えます。

そのときに必要な観点は「すべきこと」ではなく、自分自身の価値観や志向を踏まえたキャリアデザインの自分なりの正しさへの自覚(気づき)です。思い切ってAwarenessにしましょう。

語呂は良くないのですが、筆者はキャリアをデザインするときに必要なのはWill,Done,Awarenessだと考えています。

日本語に訳すと、やりたいこと、やったことがあること、デザインの理由の自覚、です。

次に、この3つをベン図ではなく他の方法で表現することを試みます。

ベン図ではスタート地点がわからないため、動的に表現する

キャリアというものを意識し始めたばかりの段階では、おそらくあなたの中にはWillもAwarenessもなくて、Doneしかありません(①)。

でもそれが当たり前です、何かを始める前からやりたいこと(Will)があるという人は極めて稀です。

そのDoneが経験とともに膨らんで大きくなったり、別のところにDoneが生まれたり、点在し始めます(②)。

スティーブ・ジョブズのいうDotsとは、このDoneのことです。

やがてDoneが大きくなったり数が増えたりする中で計画的な偶発性も味方につけ、小さなWillが生まれます(③)。

ただ、この時点では吹けば飛んでしまうような脆く掴みどころのないWillです。

このWillを強固なものにするために必要なのがAwarenessなのです。

今回芽生えたWillは自分の価値観、志向、性格などを踏まえ、本当に育てていいものなのか。自分なりの正しさへの理由をつけられるのか。

華やかさに惹かれてやってみたいと一瞬思ったけど、立ち止まって考えてみても本当にそれで良いのか。

そうやって模索してデザインの理由の自覚ができたとき、DoneとWillがAwarenessでつながってブロックが出来上がります(④)。このブロックを形成する過程が、キャリアのデザインそのものなのです。

もちろん、ブロック形成ができたらキャリアデザインは終わりではなく、ブロックを組み替えることもありますし、Doneは増やし続ける必要がありますし、Willが変化する可能性もあります。

自動車の運転のように柔軟に、というのは常に同じです。

①から④の過程を図で示すと次のようなイメージとなります。

Doneを増やすことが全て

キャリアデザインのスタートはDoneを増やすことから始まります。目的地がなく、ふらふらとドリフトしながらのDoneでも構いません。

Willはいつ舞い降りるのか、それは誰にも分かりません。ただ、Doneのない人にはWillは舞い降りない、これだけは真理だと思います。

実はクランボルツ名誉教授の計画された偶発性理論の話には続きがあります。

「失敗を恐れず行動し、失敗から学ぶこと、試行錯誤し続けること、自分の身に起こった出来事を好機ととらえて、うまくいくように行動し続けること。」

偶発性を計画的に起こし、味方につけるためにはやはり行動しかないのです。

Career Supli
キャリアデザインのスタートはDoneを増やすこと、この言葉を忘れないでください。

著者プロフィール:鈴木洋平(すずきようへい)‬
‪2002年日本アイ・ビー・エム株式会社入社。システムエンジニアとして入社後、同社内で人事に転身。同社を退社後、「株式会社採用と育成研究社」を設立、同副代表。 企業の採用活動・社員育成の設計、プログラム作成、講師などを手掛けている。‬
‪・米国CCE,Inc.認定 GCDF-Japanキャリアカウンセラー‬
‪・LEGO® SERIOUS PLAY® 認定ファシリテーター‬
‪http://rdi.jp/about-rdi‬

[文]鈴木洋平 [編集] サムライト編集部