「転職活動とSIer営業は似ている」採用高確率を誇るコンサルに聞くSIer営業転職の秘訣

2018年、経済産業省はDX(デジタルトランスフォーメーション)レポート で、近い将来日本の企業が直面するであろう「2025年の崖」という課題を指摘しました。

これは複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムを今のまま使い続けることで、国内企業の国際競争力の低下、日本の経済力の停滞が起きる……というものです。

「2025年の崖」の指摘を受け、現在日本ではIT最適化のニーズが急拡大。これに伴って、ソリューションを提供するSIerにおける人手不足が慢性化してきています。

実際、数年前までは年間10〜20人程度の規模でしか中途採用をしていなかった大手SIerが、ここ1〜2年で数百単位の採用枠を設けているような状況です。

キャリアアップを考えているエンジニア人材や営業人材にとって、今はもってこいのタイミングと言えます。

とはいえ、状況に恵まれているとはいえ、思う通りの転職をするのは簡単ではありません。

そこで今回は、SIer営業職を専門にコンサルティングを行い、担当した求職者のほとんどを採用に導いているLHH転職エージェントの濱口卓也(はまぐち・たくや)さんに、SIer営業転職の秘訣を聞いてきました。

「転職活動とSIer営業は似ている」

−SIerの転職市場は売り手優位とのことですが、営業職も状況は同じなのでしょうか?

濱口卓也さん(以下、濱口):そうですね、基本的に状況 は同じです。

−ということは、比較的楽に転職はできる?

濱口:いえ、やはり企業の求める人材像と、求職者様のスキルやパーソナリティなどがマッチしなければ、採用には至りません。

私は転職活動と、SIer営業ってよく似ていると思っているんです。

−というのは?

濱口:SIer営業において大切なポイントは大きく3つあります。

一つ目は「クライアントの事業ビジョンを理解したうえで、最適なソリューションを提案できるかどうか」です。

そのためには担当者の目線だけでなく、担当者の上席、あるいはシステムを実際に使う現場の意見まで汲み取って、要件定義 をする必要があります。

二つ目は「自社内のチームマネジメントができるかどうか」です。

いざという時に上司に助け舟を出してもらったり、力のあるエンジニアに積極的に手を貸してもらったりと、社内のステークホルダーをうまく活用する力も、SIer営業として必要なスキルです。

三つ目は「クライアントを取り巻くマーケットの流れを理解しているかどうか」です。

グローバリゼーションやAIの進化などにより、ビジネス環境が変化するスピードは従来に比べて格段に速くなっています。そうした変化を理解しておかなければ、クライアントへの提案もピントのずれたものになってしまいます。

転職活動で大切なポイントも、これと同じなんです。つまり、

・応募先の企業の事業ビジョンや人材ニーズを理解したうえで、自分を採用することが最適なソリューションであることを理解してもらう。

・キャリアの棚卸しを通じて自分のPRポイントを整理し、応募先の企業で具体的に活躍できるイメージを持たせるようにアピールする。
・応募先の企業を取り巻くマーケットの流れを理解したうえで、将来必要になるであろう人材像と自分を結びつけてPRする。

という具合です。

面接で失敗する人に多いのは、自分の話ばかりしてしまうパターンです。

しかし転職活動というのは自分目線だけでなく、応募先の企業=相手目線と、マーケット=社会目線が必要です。

マーケットの流れと、応募先の企業のニーズに基づいて要件定義をしたうえで、自分というソリューションを提案しないといけないわけです。

だから私は転職活動とSIer営業が似ていると思うんです。

−なるほど。しかし自分のキャリアの棚卸しならまだしも、応募先の企業がどんな人材ニーズを持っているかを正確に把握するのは難しそうです。

求人票からは表面的な情報しか得られませんし……。

濱口:キャリアの棚卸しも簡単ではありませんよ 。例えば「SIer営業の経験がある」と一口に言っても、それが大手SIerでの経験なのか、中小SIerでの経験なのかによってもPRできることは変わってきます。

アカウント営業だったのか、ソリューション営業だったのかによっても変わりますし、営業先がどんな業界の、どんな規模の会社で、どれくらいの数を担当していたのかも大切です。

そうやって客観的にキャリアを因数分解していかないと、自分がどんな企業のどんなポジションにハマるかは把握できません。

SIer営業転職の秘訣とは?

−そこまで自分でやるのは、大変そうです。

濱口:そのために私のようなコンサルタントがいると思っています。

LHHはどの業界ごとにコンサルティングチームを分けるだけでなく、職種ごとでも細かく担当を分けています。

IT人材で言えば、SIerとSaaSでは求められる能力や考え方が大きく違うため、はっきりと担当が分かれていますし、SIer営業の担当とSaaS営業の担当も違います。

こうして明確に担当を分けているので、各企業の深いところにまで入り込んで情報を取ってくることができます。

例えば同じ「金融事業部に人材が欲しい」という話でも、現場の部門長に聞いてみると単に「IT知見のある人が欲しい」と考えている場合以外に、「IT知見はもちろん、金融の知見もある人が欲しい」と考えている場合もあります。

この違いを理解していないと、精度の高いマッチングはできません。

コンサルタントの職種への理解が深いという点も強みです。職種特有の事情を理解していないと、会社ごと、事業所ごと、部署ごとにどちらの営業スタイルをとっていて、今欲しいのはどんな営業ができる人材なのかが把握できません。

それではやっぱりマッチングの精度は上がらないんです。

加えて、LHHはクライアント企業と求職者様の両方を、一人のコンサルタントが担当する「360度コンサルティング」を採用しています。これもマッチングの精度を高めるには必要不可欠です。

どんなにクライアント企業の内情に詳しくても、求職者様がどんな経歴を持っていて、どんなパーソナリティの持ち主なのかがわかっていなければ、最適なマッチングなどあり得ないからです。

−濱口さん個人としては、何か工夫していることはありますか?

濱口:オリジナルの面接対策資料を作成しています。

ホームページなどで公開されている情報などをもとに、具体的に「どのスキルや経験を、どんなふうに伝えればいいか」というところまでコンサルティングをするんです。

「なんとなくこんな感じの話をしましょう」といった漠然としたアドバイスはしないので、求職者様には「採用されるまでのイメージがしやすい」と喜んでもらえています。

あとは求職者様と会う回数を最大で4回程度まで設けていることです。

−4回はかなり多いですよね。

濱口:1回目で経歴や経験について話を聞いて、その情報をもとに求人を探します。2回目で探してきた求人の内容と提案する意図を説明して、具体的な転職活動の進め方をアドバイスします。

その後、書類選考に合格したら3回目で一般的な面接対策、4回目で企業ごとに特化した面接対策を行うという感じです。

時間も手間もかかるんですが、この方が絶対に採用率は高くなると信じています。

−コンサルティングを受ける側としては、頼もしい限りですね。本日はありがとうございました。

濱口:こちらこそ、ありがとうございました。次はもっと具体的に「転職活動はどう進めていくべきか」についても話せたらいいなと思います。

−その時はぜひ、よろしくお願いします。

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ここまでやるから高い合格率が実現できるんですね。
[文]鈴木 直人 [編集]サムライト編集部