資格取得はキャリア設計ありき!転職に有利な資格10選

資格は「万能」ではないが役に立つ

「やっぱり資格があったほうが有利なのかな?」「資格さえあれば食いっぱぐれないだろう」そう考えて転職活動を始める前に、資格の取得を考える人も多いかもしれません。確かに資格によっては転職に有利になります。しかし残念ながら「資格さえあれば」というような万能なものではありません。すなわち資格は万能ではないが役に立つ、というわけです。

ここでは転職における正しい資格との付き合い方を解説するとともに、転職活動を有利に進められる資格や、取得過程で転職に役立つ知識が手に入る資格を全部で10個紹介します。

転職における正しい資格との付き合い方

転職において、正しく資格と付き合うためには以下の3点を覚えておく必要があります。

・資格に振り回されない。
・資格取得の副次効果を利用する。
・資格取得を長期的&段階的な視点で考える。

第一にキャリア採用において、企業が見ているのはあくまで「実際に何ができるか」「どれだけの利益をもたらしてくれるのか」という点です。したがって難関資格を取得したとしても、実務経験が全くなかったり、今後のキャリアについての明確なビジョンがなかったりすれば、採用に至る可能性は高くありません。

また、仮に採用してもらえたとしても、どう働きたいかが不明確なまま入社すれば、入社後のギャップに悩む危険が高くなります。このような状況にならないためには、「とにかく資格を活かしたい」と資格に振り回されて転職先を選ばないようにしなくてはなりません。

そこで第二のポイントとなる「副次効果」という視点が必要になります。資格取得の副次効果とは、取得の過程で身につく特定分野の理論的知識を指します。例えば「日商簿記検定」は主に経理事務の仕事に役立つ資格と考えられています。しかしこの資格は企業の数字の基礎的な知識に関するものなので、どの部門にいようとも必ず役に立ちます。

日商簿記検定の知識を営業や企画、人事など他の業務とクロスさせて活用した経験があれば、他の転職希望者との差別化も計れるでしょう。また「中小企業診断士」などの資格を取得すれば、自分がこれから転職する企業を選ぶ際にも役立ちます。資格と採否を直結させて考えるのではなく、その資格が何をもたらしてくれるのかについても理解しておきましょう。

第三に難関資格を取得する場合には、いきなり意中の資格の勉強を始めるのではなく、長期的かつ段階的な視点で取得を考える必要があります。例えば取得したい資格が税理士ならば、日商簿記検定3級から始めて2級・1級を取得し、そのうえで挑戦するといったやり方が考えられます。

難関資格を目指すのであれば、資格取得のプランニングはそのままキャリアプランニングになります。とにかくがむしゃらに働いていてもキャリアプランニングができないのと同じで、とにかくがむしゃらに勉強していても効率的な資格取得はできません。計画的な資格取得を心がけましょう。

この3点を踏まえたうえで資格取得を考えるのであれば、きっと資格は転職に役立ってくれるはずです。以下では具体的に転職が有利になると考えられる資格を10個紹介していきます。

転職に有利な資格10選

●普通自動車免許第一種

「普通自動車免許第一種」は一般的な目的で自動車および原動機付自転車を運転するための資格です。一見転職と関係ないように思えますが、外回りのある営業職や建設現場などに実際に行かなければならない建築・土木系の仕事のほか、公共交通機関が充実していない地方への出張がある仕事など、普通自動車免許第一種を必須としている企業は少なくありません。したがって、未取得の人は取得すれば転職の選択肢が増える可能性が高いのです。

●日商簿記検定2級

https://www.kentei.ne.jp/

企画管理系や事務アシスタント系に転職する場合に、あると有利になる資格が「日商簿記検定2級」です。知名度が高いこと、様々な業界・職種で応用可能なため、企画管理系や事務アシスタント系以外でも役立つ可能性があります。ただし2級及び1級を取得していればアピールになりますが、3級ではアピールポイントとして弱くなってしまいます。最低でも2級を取得しておくようにしましょう。また日商簿記検定は公認会計士や税理士、英語の会計試験である「BATIC(国際会計認定)」や国際基準の会計監査ができる「米国公認会計士」などの難関資格へのスタートラインにもなります。会計分野でのキャリア形成を考える場合は、ぜひとも勉強したい資格といえます。

●宅地建物取引主任者

http://www.retio.or.jp/exam/

「宅地建物取引主任者」は不動産取引に関わるのであれば必須となる資格です。なぜなら不動産取引の際に必須の権利関係や物件状態などの重要事項説明は、宅地建物取引主任者の資格を持っていなければできないからです。不動産業界でなくとも関連部署を持つ企業や金融関係の企業でも、所有していると重宝されます。また、宅地建物取引主任者は「司法書士」や「マンション管理士」などの資格へのスタートラインにもなります。不動産分野でのキャリア形成を考えるのであれば、まず取得するべき資格です。

●公認会計士

http://www.fsa.go.jp/cpaaob/index.html

会計監査をするための独占資格、それが「公認会計士」です。会計監査をする側(監査法人)としての仕事だけでなく、会計監査を受ける企業側の人材としても重宝されるため、転職の選択肢はかなり広がります。活躍できる業務も会計分野はもちろん、企業コンサルティングなど多岐に渡ります。しかし価値が高い資格なだけあって、取得も難しい資格です。平成27年度の合格率は10.3%とされていますが、公認会計士試験には科目免除制度があるため、見た目の数値よりも合格への門は狭くなっています。前述したように日商簿記検定をスタートラインとして、コツコツと知識を積み上げていくようにしましょう。

●ファイナンシャルプランニング技能検定1級

http://www.kinzai.or.jp/fp

「ファイナンシャルプランニング技能検定1級」は金融業界や不動産業界で重宝されるほか、ファイナンシャルプランナーとして独立することも可能な資格です。資産運用や税務などの知識が学べるため、仕事以外にも私生活にも役立ちます。

ファイナンシャルプランニング技能検定1級と同程度の難度で、かつ国際的に評価が高いのがファイナンシャルプランナーのうち「CFP(R)資格」と呼ばれるものです。グローバルに活躍したいのであれば、こちらの取得をおすすめします。ただ、どちらにせよ難度が高いので、まずはファイナンシャルプランニング技能検定2級から勉強を始めるのが良いでしょう。

●中小企業診断士

https://www.j-smeca.jp/contents/007_shiken.html

「中小企業診断士」は企業の経営状況の総合的診断と、それに基づくコンサルティング業務についての資格です。経営中枢に入り込んで仕事をしない場合でも、自分が転職を考えている企業や今いる企業をトータルな視点で分析できるようになるため、自分のキャリアプランニングにも大いに役立ちます。なお5年に一度の更新が必要で、その都度「新たな知識の拡充」と「診断実務の従事」が求められます。

●ビジネス実務法務検定試験(R)

http://www.kentei.org/houmu/

法律実務の知識を証明するための資格が「ビジネス実務法務検定試験」です。コンプライアンス強化が叫ばれる昨今において、この資格の取得を管理職への昇進の判断材料をしている企業もあるなど、今後存在感を増していくであろう資格のひとつです。3級から1級あり、1級になるとハードルもかなり高くなります。

直接法務に携わらない人でも資格所有者の観点から別の業務を行うなど、応用できる場面はいくらでもあります。司法書士や行政書士、弁理士といった難関資格のための知識も得られるため、法律分野のキャリア形成を考えているのであれば視野に入れておきたい資格といえます。

●ビジネス会計検定試験(R)

http://www.b-accounting.jp/

「ビジネス会計検定試験(R)」は財務諸表を読む能力を評価するための試験です。日商簿記検定2級へのスタートラインとして考えれば、転職に有利だと考えることもできます。しかしどちらかというと、転職を有利に進めるためというよりは、転職先を的確に選ぶために役立つ知識が得られる試験として活用するのがおすすめです。

財務諸表を解釈できれば、自分が転職を考えている企業の経営状況が把握できるだけでなく、抱えている問題に応じた提案や志望動機を考えることもできます。

●P検-ICTプロフィシエンシー検定

http://www.pken.com/

「P検-ICTプロフィシエンシー検定」はITを使った問題解決能力を評価する資格です。5級から1級まで準2級を含む6段階あり、企業や職場に必要とされる「現場力」を証明する資格として設計されています。

「マイクロソフトオフィス・スペシャリスト」や「ITパスポート」と並んで、IT分野資格のスタートラインとなる資格でもあります。将来的にIT分野でキャリア形成をする人はもちろんですが、エンジニアと共通の言語や認識を持つためにも役立ちます。

●メンタルヘルス・マネジメント(R)検定

https://www.mental-health.ne.jp/

いまやビジネスシーンにおけるメンタルヘルスは、無視できない重要なキーワードになりつつあります。「メンタルヘルス・マネジメント(R)検定」は人事・労務管理の観点から心の病を未然に防止し、健康を増進するための検定試験です。

一般社員や新入社員を対象とする「III種・セルフケアコース」から、管理職・管理監督者対象の「II種・ラインケアコース」、人事労務管理者・経営幹部対象の「I種・マスターコース」があります。III種は自分自身の働き方を見つめ直すためにも役立ちますし、II種以降は人材マネジメントに役立てることが可能です。

資格取得はキャリア設計ありき!

資格ありきでキャリアを設計してしまうと、資格に振り回されて自分が本来やりたかった仕事とのズレが生まれる危険があります。そのため資格取得の計画はあくまでキャリア設計に即した形で考えましょう。

そのうえで自分のキャリアにどんな資格が必要なのか、どんな手順で勉強するべきなのかを具体的に掘り下げていくようにします。そうすれば、きっと資格は心強い味方になってくれるはずです。

参考文献『資格取り方選び方全ガイド 2018年』
Career Supli
資格を活かすことを優先するのではなく、自分のやりたいことを実現するために資格を活用する意識が重要です。
[文・編集] サムライト編集部