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人に会いに行く旅
「シブヤ大学」って聞いたことありますでしょうか?街を大学のキャンパスに”見立てる”ことによって、街のヒト・モノ・コトを再発掘し編集していく、「まちづくり」をコンセプトにしたNPO法人です。
様々な団体や企業、地方自治体などとコラボレーションして、地域活動の活性化にも積極的に取り組んでいます。今回はその活動の一環として企画された「人に会いに行く旅をしよう。@茨城県 県北地域」に参加してきましたので、そのレポートをお届けします。
@茨城県 県北(けんぽく)地域
11月12日渋谷駅に7時50分集合

参加者30名ほどがバスに乗り込み、茨城県 県北地域に向けて出発します。シブヤ大学のコディネーター榎本 善晃さんから挨拶があり、シブヤ大学の趣旨や今回の旅の説明を受けます。添乗員さんがいるようなパッケージ旅行ではなく、参加者が自ら主体的に動いて、一緒につくっていくことで成立する企画であるとのこと。受け身ではダメなんですね。
その後はさっそく自己紹介タイム!「人に会いに行く旅をしよう」というコンセプトにあるように参加者同士の交流もこの旅の目的の一つ。まずはとなりの席に座っている人と5分ほど話をして、その後でとなりの人を紹介するという、他己紹介形式で行なわれました。
参加メンバーは大学生から50代後半の方までと幅広く、地方創生に関心のある人、ラフティングがやりたい人、美味しいモノを楽しむにしてきた人など参加理由は様々。募集開始から、わずか1日で定員に達したイベントに素早く申し込みをした人たちだけあり、アクティブで旅行好きな人が多い印象でした。
その後は、茨城県版地域おこし協力隊で、今回の旅のコディネーターである若松佑樹さんから、茨城県 県北に関するマルバツクイズが10問出題されました。茨城県の印象といえば納豆とU字工事ぐらいしかなかったのですが、水戸黄門とコンニャクが有名という情報も追加されました。そして今回行く場所は北茨城市ではなく、県北(ケンポク)と呼ばれる地域であることも理解しました。
地域貢献型シェアハウス「コクリエ」 三ツ堀裕太さん

まずはじめに訪れたのは、日立市のグッドデザイン賞を受賞した地域貢献型シェアハウス「コクリエ」。立ち上げたのは地元、茨城大学工学部発のITベンチャー「株式会社ユニキャスト」代表の三ツ堀裕太さん。

オフィスが手狭になってきて移転を考えていた三ツ堀さんは、どうせならば自社ビルを建てて、自身が非常勤講師を務める大学の地域貢献サークルの生徒や、地域の人たちが集えるシェアハウスにしようと考えて今年の4月に竣工。
シェアハウス単体として満室になっても利益的にはトントンぐらいで、このシェアハウス単体で利益を出すのは難しいそうですが、この施設が注目されることにより、採用で良い人が取れたり、新たなネットワークの拠点になるなどのメリットがあるとのこと。おととし5人だった従業員が現在は26名と急成長しています。地方で優秀な人材を確保してうまく事業を拡大していくための方法の1つとして非常に興味深い取り組みです。
日立おさかなセンターで昼食タイム
その後は日立おさかなセンターで昼食。すきなだけ具材を買ってどんぶりにする勝手丼をいただきました。欲望のままに購入したら、丼に具材が乗りきれませんでしたが、最高に贅沢な気分を味わうことができました!絶対にまた行きたいです。

那珂川でラフティング ストームフィールドガイド 山本滋さん

腹ごしらえをしたらバスで1時間ほど移動して、那珂川(なかがわ)でラフティングです。手付かずの自然から”東の四万十川”と称される関東随一の清流だそうです。流れも穏やかなため、アウトドア好きには”カヌーのメッカ”として知られています。
ガイドは山本滋さん。学生時代からカヌーに魅せられて早20年。元々は東京で会社勤めをしていたそうですが、「生き方は自由、自分でどんどんやればいい」と思い立って茨城に移住。自然豊かな那珂川でカヌーラフティングやネイチャーツアーを行う「ストームフィールドガイド」を設立されました。

山本さんいわく、地元の人たちに信頼してもらうためのポイントは、とにかくひたすら相手の話を聞くことだそうです。東京から移住してきて、地元になじみながら着実に自分のやりたいことを仕事にしていく山本さんの生き方は素敵です。大変なことも多そうですがとても楽しそう。好きなことをやって生きている人の顔をされていますね。
さあ、ヘルメットとライフガードをつけてラフティングのスタート地点へとバスで移動。特殊部隊になったようで、テンションが高まります。

4班に分かれてインストラクターの方の指示に従いながらラフティングスタート。掛け声をあわせてオールを漕いでいきます。

この時期の那珂川は鮭が遡上と聞いていたのですが、ガチで鮭がうじゃうじゃいます!ここはカナダかっ!というぐらい。TVで見る卵を産みに川に帰ってくる、あの鮭の映像が目の前に!茨城にこんな川があるなんて夢にも思いませんでした。衝撃&感動です。

産卵を終えて力尽きた鮭があちこちに。すごい光景!

ガイドの山本さんいわく、ここはダムがない「本物の川」で、こうした自然の生態系が残っている貴重な環境だそうです。“東の四万十川”の呼び名に偽りありません。パンフレットにはもちろん美しい川と書いてありましたが、実際に自分の目で見ないとこの素晴らしさは伝わりません。

大満足でラフティングを終えた一行は、もともと小学校だった研修施設に移動しました。

夕食はラフティングのガイドを務めてくれた山本さんたちが、地物の鮭で「鮭いくら丼」「チャンチャン焼き」をつくってくれました!

ありえないぐらい大量のイクラ!


地元の鮭を満喫したあとは、地元とお酒と食材による2次会のスタートです!近隣の地域おこし協力隊の人たちも加わり、地酒や地元の食材のPR合戦が!


お水が美味しい地域なので、地酒、お米、野菜、りんご、お豆腐やコンニャクなど、何を食べても美味い!

移住するなら水の美味しい地域にしようと心に決めました!こうして楽しい夜はあっという間に更けていきました。

2日目 里美地区
里美地区 森林インストラクターの岡崎靖さん

2日目は地元食材の美味しい朝食をいただき、里美地区を訪問。森林インストラクターの岡崎靖さんと秋の里山散策をする予定でしたが、あいにく雨だったため、地区内を案内していただくことになりました。

美しい田園風景が広がる地域で地区内を散歩するだけでも十分見応えがあり、とても気持ちがよかったです。この日はちょうど、カカシ祭りが行なわれており、地元の人たちが作成したユニークなカカシをたくさん見ることができました。
カカシの域を超えた力作から、話題の人物を模したカカシ、カカシの定義を無視した?作品まで様々なカカシが展示されていました。実はここ里美地区はお蕎麦が有名で、一日限定20食しか食べられない手打ち蕎麦を提供しているお店で、運良く食べることができました。

このお蕎麦が絶品で、今まで食べたお蕎麦の中でダントツ一番美味しかったのです。あまりに美味しいので、一緒に食べていた友人にも確認したところ、やはりいままで食べた中でナンバーワンの蕎麦だと断言していました。ちょうどこれから新蕎麦が食べれる時期なので、ぜひ里美地区の「常陸秋そば」をチェックしてみてください。
ちなみに、そのお店を食べログでチェックしたら書き込みが2件しかなく、3.0でした!やはり地方の美味しいお店の情報はまだまだネットに掲載されていません。お店の名前は秘密です。現地の人聞けばすぐにわかるのでいろいろとお話をしてみてください。
ヒタチオオタ芸術会議2015

昼食後は、『ヒタチオオタ芸術会議2015』のプログラムの一部である、作家のNARU(なる)さんと子どもたちによる大きな紙芝居と作品を見学。ヒタチオオタ芸術会議は「井戸端会議でアートをする」をテーマに常陸太田に暮らしながら芸術活動を行ってきたアーティストが、地域の人たちと共に表現の場をつくるイベントです。

発表していた子どもたちが物凄く楽しそうで、僕頑張ったよ!といった誇らしげな顔が印象的でした。これは他の地域でも実施できる取り組みだと思いますので、いろんな場所に広がっていくと面白いですね。
ポトラックフィールド里美 長島由佳さん
その後は古民家を改装したカフェで、里美地区の地域おこしに取り組む長島由佳さんのお話を伺いました。長島さんは里美地区の「地域おこし協力隊」一期生として3年間活動し、そのまま横浜から移住されました。
現在は地元のお母さんたちと一緒に地元の料理を提供する期間限定レストランを出したり、地元の美味しいお水を使った商品を販売したり、地元の酒蔵をリノベーションしていく「金波寒月プロジェクト」を立ちあげたりと、さまざまな事業や企画にチャレンジしています。

大手の旅行代理店に勤めて都内で華やかな暮らしをしていた時よりも、現在の方が人生の満足度は高く、小さなコミュニティにコミットすればするほど世界観は広がり、奥行きが生まれるといいます。これからは今やっている活動でしっかりと利益をだして、より地域に貢献していくことを目標にしているそうです。長島さんの「自分の魂が喜ぶ仕事をしていきたい」という言葉が非常に印象に残りました。
茨城県県北地域が好きになった
こうして2日間の人に会う旅が終了しました。今までほぼなんのイメージもなかった茨城ですが、実際にそこに住む人たちと交流して、素晴らしい自然や、美味しい地元の物を満喫したことで、すっかり茨城が好きになってしまいました。
個人で1日観光に行っただけでは、ここまで深く茨城を知ることはできなかったので、そこで生活している「人に会う旅」というシブヤ大学の考えたツアーのコンセプトは素晴らしいと思いました。
地方創生の話になると人口が何人という形で、規模や人数の大小で語られがちですが、そこに住む一人ひとりに物語があり、その人たちの日々の暮らしがあるという当たり前のことに気づかされた旅でもありました。
今回訪れた茨城県県北地域は都内からJRや常磐自動車道などで約2時間でアクセスできます。激混みの軽井沢にいくなら、県北地域に行った方が空いていて満足度は高いと思います。最高の穴場スポットなので、ぜひ一度訪れてみてください。
