「自撮り」は新たな〝自分探し〟?それとも、ただの〝かまってちゃん〟か!?

進化する「自撮り」はデジタル時代の新たな自己表現か

最近は自撮りの仰天パフォーマンスを可能にした「自撮り棒」の開発でTwitterやFacebookがなんと賑やかなことか。

最早ブームは世界的。自撮り作品にのめりこむ動機も様々。〝自分探し〟よりはどうも自己表現やPRのツールとして、刺激的な話題を提供しているようだ。

「のぞき」の真逆で「露出」傾向がとくに女性に目立っており、思考回路が理解できない自撮りも散見される。もちろん男性にとっては嬉しい作品も・・・

もともと英語で自撮り写真を意味する「selfie(セルフイー)」は、2002年から自画像写真を表す省略表現として使われ、2013年11月にはオックスフォード英語辞典の「今年の言葉」にも選ばれている。

展覧会まで開催される最近の自撮りブームのアレコレ

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ハリウッドの女優がこぞって自撮りのセクシ―ショットをネットにUPしたり、日本でも人気女優が入浴シーンや過激な写真を公開するなど、ワ―ルドワイドな展開。歌手のきゃりーぱみゅぱみゅは直近のツイッターで、タンクトップ姿と豊満な谷間をドーンと披露している。

ファンは「サイコー」「セクシー!」と祭り状態だが、中には「やばい」「どうしたの?」と心配の声も。きゃりーは「暑すぎてタンク。なんかちょっとエロサイト風」とコメントしているが、顔なしでの胸元アップは、それなりの配慮?

もちろん若い子も負けてはいない。「もうこんな顔、イヤ」「もっとかわいくなりたい」と自己否定のコメントをしながらも、自撮り画像を堂々と投稿。一見、自分に自信がないふりをして、その実、褒めて貰いたいのか。

ネット上ではそんな自撮りガールを〝腹黒いかまってちゃん〟と言うんだそうだ。ナルシズムのなせる技なのだろうか。なかなかしたたかではある・・・

自撮りブ―ムで女性ではなく「サル」が主役の著作権問題も

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稀有なケースだが、「自撮りサル」も登場、センセーショナルな話題を提供している。2011年に英国人写真家がインドネシアを旅行した際、サルにカメラを奪われた。いたずら好きのサルは自撮りを始め、良い写真が撮れたという。

その写真がWikipediaに掲載されたため、写真家は写真の削除をするように依頼、著作権は自分に帰属し著作料を支払うべきと主張。一方Wiki側は削除を拒否、3年後の昨年、著作権を巡る紛争へとエスカレートしている。メディアは両者の対立がどう決着するか注視している。

こうなるとたかがサルの自撮り―ではすまされない。ネット上に拡散した自撮りガールのあられもない画像を巡って、削除問題が多発することも懸念される。

メディア評論家は「ネット時代で自分自身を語る以上に、肉体をさらけだすことに無防備になっている。想定外のトラブルが発生しそう」と指摘している。

 

自撮りの素材やテクニックをメディアが熱視線!

Group Of Tourists Taking Selfie

投稿者の思惑や打算とは別にメディアが自撮りの手法や素材を使って、番組や出版化の動きを活発化させている。ゲーム開発会社も自撮りした動画を漫画風に加工できるアプリを開発。ここにきて自撮りを取り巻く環境が変化している。

メディアにとって自撮り活用は新な客層の開拓やマーケットの開発に繋がるか。

テレビではNHKBSプレミアムが昨年11月、「森山未來  自撮り365日 踊る阿呆」と題して、異色の自撮りスペシャル動画を放送した。

2013年10月から1年間、文化交流使としてイスラエルのダンスカンパニーなどを拠点に活動した森山は、「NHKにちっさいカメラを渡されて、なぜか自分で撮ることになった」という。30歳にして初撮り作品。放送当時話題になった。

放送記者が言う。

森山の視点で切り取られたイスラエルの風景や日常、踊りを通じて表現者・森山が活写されていた。NHKもカメラを託した時点で大きな冒険をしたことになり、自撮り記録映像の成功例ではないか。彼のキャラに拠るところも大きい。

自撮りファン参加形のコンテンツはイノベ―ションを起こすか

自撮り愛好家を新たな映像ビジネスに取り込むコンテンツも開発されている。

日経(4日付)によれば、大阪のゲーム開発会社が自撮り動画を漫画風に加工できるアプリを開発したという。同紙によれば「喜怒哀楽や感謝、謝罪などを伝えたい気持ちを選んで動画を撮ると、表情や背景を自動で加工する」というもの。

例えば「謝罪」を選択すると、アプリが目や鼻の位置を認識し涙目のアニメ画像と合成。「ごめんなさい」と文字を入れるという。なんともヒューマン!

こうなると自己PR型 の自撮りとは異なり、画像や動画の作成段階から視聴対対象者やテーマを設定しなければならず、対象者との関係性が重要なファクターになってくる。これまでの自撮りのプラスやマイナス要因を軸に、多用なアプリが開発される可能性が出てくる。自撮り対応型ビジネスとでも言おうか。 

自撮りの画像(内容)はアプリの開発で、ますます「劇場型」になりそうだ。「劇場型犯罪」「劇場型政治」に加えて「劇場型自撮り」の造語が誕生するかも・・・

「自撮り棒」は愛好者にとって〝鬼に金棒〟の強い味方?

硬軟両方の話題を提供しながら、自撮りを取り巻く環境が大きく変化している。

投稿画像はますます大胆になり、画像を取り込む新たなアプリ作りにクリエイターは智恵を出し、メーカーはより立体的な画像を可能にする開発に積極的だ。

最近では自撮りアーム「SelfieArm」が開発された。従来の棒状をアーム型のデザインにし、棒を持つ手が写る違和感を排し「手つなぎデート写真」が撮れるようになっている。よりリアル、立体感の訴求がトレンドになっているようだ。

まさに自撮りガールにとっては〝鬼に金棒〟の状態。「かゆいところに手が届く」仕上がりになっている。さらに「自分を一番魅力的に見せる」撮り方が微に入り細に入り紹介されている。「自撮りの心」も伝授して貰いたいものだ。

世界初の「自撮り写真」は1839年、米国フィラディルフイアの路上で科学者によって撮られたという。それから約170年余。当時は誰もブーム到来を想像しなかったことだろう。もちろんサルの自撮り騒ぎのことも・・・

ブームが拡散する中で自撮りの主役はあなた・・という声

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結局、自撮りは〝目立ちたがり屋〟や〝ナルシスト〟の女性が「もう一人の自分」をアピールするための手段ではないか。下世話な話題がネットを席巻しているが、自撮り現象のセッションも行われる等、実際は他人との関連性が希薄な「今」を背景に根は深い。この先ブームがどう拡散し、時代に寄り添うのか。

心理学者などは自撮りを「人間の重要な心理的要求」と論考している。鏡の前で自分と向き合うように、何らかの形で人は自撮りと無関係ではないーとも。

私はと言えば、個人技のスキルをアップした自撮りガールの「今後」が気になる。投稿画像は〝変身〟願望の表れ、プリクラの延長で自撮りは自己完結型なのかも知れない。ネット上のバッシングも「いいね」に聞こえるようだ。

おじいさん、おばあさんたちの自撮り写真大会でも開催したら、どんな写真が展示されるだろうか。その時、おじいさんたちが自撮りの背景にする風景は・・

[文]メディアコンテンツ神戸企画室 神戸陽三 [編集]サムライト編集部