Contents
将来のこと、前向きに考えられてる?
少子高齢化や年金問題、日本経済の縮小化など、世の中にはつい将来をネガティブに考えてしまう話題ばかり。
そのため、自分の将来について、前向きに考えられていないという人も多いはずです。一方で、自分の人生を前向きに捉え、転職や独立を通じて未来を切り開いている人もいます。
彼らは一見、「やりたいこと」があって、それに向かって打ち込んでいるから前向きでいられるように思えます。しかしポジティブに生きるために「やりたいこと」を見つける必要は、実はありません。
そもそも、ほとんどの人にとって「やりたいこと」を見つけるのは難しいからです。
ではどうすれば、人生を前向きに生きていけるのでしょうか。この問いに対する答えのひとつが「応援すること」です。
以下では誰かを応援することをきっかけにして、自分の人生を前向きに変えていくための方法を紹介します。
凡人には「好きなこと・もの」なんて見つけられない
●自燃性の人、他燃性の人、不燃性の人
世の中には、自燃性、他燃性、不燃性という3種類の人間がいると言われます。
自燃性の人は自らやりたいことや好きなことを見つけて、自分の人生を燃やせる人。他燃性の人は自燃性の人から影響を受けて、自分も情熱を燃やすようになる人。不燃性の人は、人生をすっかりあきらめてしまって、何をやっても情熱を燃やせない人です。
『転職の思考法』を書いたコンサルタントの北野唯我さんは、著書の中で「どうしても譲れないくらい『やりたいこと』など、ほとんどの人間にはない(引用:p213)」と書いています。
つまり、3種類の人間のうち、自燃性の人というのは滅多にお目にかかれない希少種なのです。
大半の人は2番目の他燃性で、誰かの影響を受けてようやく何かに打ち込めるようになります。そのため自分の人生を情熱的に楽しむためには、他燃性であることを利用して、誰かに燃やしてもらう必要があるのです。
●他人の人生からの「引火」を利用しよう
では、どうすれば誰かに燃やしてもらえるのでしょうか。情熱を持って仕事に打ち込んでいる人が同じ職場にいるのであれば、その人のなるべく近くで仕事をするだけでも、「引火」する可能性は十分あります。
しかし、悲しいことですが、「尊敬する上司」や「憧れている先輩」に恵まれていない人も少なくないはず。そのような場合は、「応援すること」が誰かに燃やしてもらうための有効な手立てになります。
野球選手やサッカー選手を応援していて、選手が喜びの雄叫びをあげるのと同時に、自分も叫んでしまった経験はないでしょうか。あれは、勝利に向かって一生懸命になっている選手を応援しているうちに、選手の熱が自分に移っているのです。
こうした他人の人生からの「引火」をうまく利用すれば、やりたいことや好きなことなんて見つけなくても、ポジティブに毎日を過ごせるようになっていきます。
なぜ「応援すること」で自分の人生が燃えるのか?

●応援が持つ心理学的な効果
「他人を応援するだけで、自分の人生は変わらないだろ」と思う人もいるかもしれません。
しかし心理学が明らかにしている「同一視」という心の働きを理解すると、あながち応援による「引火」を間違っているとは言えなくなります。
心理学における同一視とは、尊敬する人などに対して強く感情移入することで、その人の身に起きる出来事を自分ごとのように感じたり、思考や言動を真似したりすることを指します。
応援しているうちに同一視が起きて気づいたら「引火」している状況になるんですね。
またメンタルトレーニング専門のドクターである辻秀一さんも、誰かを応援することと自分の人生の充実度の関係を指摘しています。
というのも辻さんは著書『「与える人」が成果を得る』の中で、他者を応援することでモチベーションや集中力、実行力などが高まり、パフォーマンスアップにつながると書いているのです。
●応援を通じて変わっていくオタクたち
他人を応援することで、自分の人生が変わっていったという例は枚挙にいとまがありません。
たとえば筆者の周りには何人かいわゆる「地下アイドルオタク」がいますが、彼らのなかには地下アイドルを応援するようになってから、明らかに人生をポジティブに生きるようになった人が何人もいます。
・ファンやほかのアイドル、運営サイドに細かい気配りができるアイドルを好きになった人は、以前はできなかったような気配りができるようになった。
・プロ意識の高いアイドルを好きになった人は、自分の仕事に対してもプロ意識を持つようになり、アイドルを応援する活動に負けず劣らず仕事にも打ち込むようになった。
・仕事であるアイドル活動を心底楽しんでいるアイドルを好きになった人は、自分の仕事と改めて向き合った結果、独立してフリーイラストレーターとして活動を開始した。
暗いイメージのあるオタクの世界ですが、オタクとしての活動=応援を通じて、自分の人生を前向きに変えている人もいるのです。
●自分の人生を燃やすための応援の作法
しかし、すべてのオタクが応援を通じて前向きに変わっていけるわけではないように、オタク以外の他燃性の人たちも「応援さえしていれば人生を燃やせる」というわけではありません。
自分の人生を燃やすための応援には、守るべき作法があるからです。すなわち「『自分ごと』として応援する」と「応援対象に自分の人生を捧げない」の2つです。
▼「自分ごと」として応援する
「同一視」が生じるためには、強い感情移入が必要不可欠です。そのためには、独りよがりな応援ではなく、相手を思いやって応援しなくてはいけません。
応援対象が何を見聞きしていて、何を考え、何を感じているのか、これらを熟慮したうえで、求められている応援をする……そうすることで同一視が生じ、自分の思考・言動に好影響が受けられるのです。
自分ごととして応援できるようになるための最大のコツは、「オタク」になることです。「ワールドカップの時だけラグビーファンになる」「ライブに行ったことはないけど、曲は好き」程度の応援では、「引火」はしません。
難しいことは考えず、まずはどっぷりハマってみることをおすすめします。
▼応援対象に自分の人生を捧げない
ただし、ハマりすぎるあまり「応援すること=自分の存在意義」のようになってしまってはいけません。
応援対象に自分の人生を捧げてしまった時点で、自分の人生が燃えることはありません。自分の人生を燃やすためには、あくまでも「あなたも頑張れ、自分も頑張る」という距離感を保つ必要があります。
適切な距離感を維持できてはじめて、応援対象の人生からの「引火」を利用して、自分の人生を燃やすことができるのです。
あなたが応援したいのはどんな人?

応援したい人というのは、自分の理想や目標に近い人の場合が多いものです。
たとえば筆者の応援したい人というのは、ファッションブランドのデザイナーや靴職人、手織り職人といった、真摯にものづくりへ向き合っている人たちです。
これは自分自身が、文章づくりをなりわいとする者として、彼らに憧れているからです。
あなたが応援したいのはどんな人でしょうか。パッと頭に思い浮かんだ人こそが、あなたが憧れている人であり、あなたの人生を燃やしてくれる人かもしれません。
「自分の人生なんて……」とあきらめムードになるのはもうやめて、誰かを応援することを通じて、人生を燃やしていきましょう。そうすれば、灰色の「なんとなく仕事をこなす毎日」にサヨナラできるはずです。
