フォローしてなきゃ損するぞ!キングコング・西野亮廣の頭のなか

何者にもならない「キングコング・西野亮廣」

かつては「はねるのトびら」などのテレビ番組を賑わせ、人気タレントの名を欲しいままにしていたキングコング・西野亮廣さん。しかし最近では絵本『えんとつ町のプペル』をクラウドファンディングとクラウドソーシングで完成させ、その個展を開くために日本史上クラウドファンディング史上最多の支援者数6,257人から資金を集めるなど、およそ「芸人」の枠にも「絵本作家」の枠にも収まっていない、次世代クリエイターとして活躍しています。

ここでは西野さんが特集された『Discover Japan vol.64』や西野さんのオフィシャルブログ「魔法のコンパス キングコング西野 オフィシャルダイアリー」をヒントに、彼の頭の中をのぞいてみたいと思います。

「共犯者」を作れ!これからのビジネスの作り方

西野さんはブログの中で、クラウドファンディングのプラットフォーム「キャンプファイア」で『えんとつ町のプペル』展を入場無料開催するための資金を集めた理由を2つ挙げています。一つは「予約販売サイト」として活用するため、そしてもう一つは「共犯者」を作るためです。

●クラウドファンディング=共犯者を作る場所

私たちがスーパーで野菜を買うとき、その野菜は生産農家の人たちが作っています。ここには生産者と消費者という厳然たる関係性があります。同じように西野さん以外の絵本作家の作品を買うときも、製作側(絵本作家)と消費者の関係は揺るぎません。

しかしクラウドファンディングはこの関係を一気につき崩す力を持っています。つまり支援者たちは西野さんの『えんとつ町』のプロジェクトに資金を提供した時点で、このプロジェクトに製作側として「一枚噛む」ことができるのです。

そうして作り上げられた作品は、支援者と西野さんら製作陣の共犯関係から成り立っています。この関係が支援者たちに「『俺たち』の作品をもっと色んな人に知って欲しい」という感覚を持たせ、さらなる販売部数につながっていくというわけです。

実際5,000部から1万部売れればヒットという絵本業界で、西野さんの『えんとつ町』は発売後2ヶ月で23万部発行という異例のヒットを記録しています。

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画像出典:キングコング西野 オフィシャルダイアリー

●「信用通帳」を作れ

また、西野さんはクラウドファンディングを「信用のリトマス紙」「信用を数値化するための装置」と表現し、これからは預金通帳と同じくらい「信用通帳」が重要になると言います。クラウドファンディングを成功させるためには確かに面白いアイディアや企画が必要です。しかし一番重要なのは「この人にならお金を渡してもいい」と思ってもらえる信用力です。

信用が重要になるのはクラウドファンディングだけではありません。玉石混交の情報が入り乱れる現代において「○○が言っているから信じる」といった、属人的なバイアスはどんどん存在感を増していくでしょう。その中で信用はお金と同等か、もしくはそれ以上の価値を持つものになっていきます。そのためには日頃から信用をどう貯蓄しておくかが、これからのビジネスには必要不可欠な視点になるのです。

『Dr.インクの星空キネマ』に見る「弱者」の戦い方

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画像出典:キングコング西野 オフィシャルダイアリー

西野さんが絵本作家を目指すきっかけになったのは、タモリさんの「絵を描いたら?」という言葉でした。西野さんは『笑っていいとも!』の番組中にフリップの裏に即興で絵を描いてタモリさんに見せたりしていたので、タモリさんは西野さんに確かな画力があることを知っていたのです。そう言われた西野さんは「やるからにはプロに勝つ」と考え、どうすれば勝てるかを考えていきます。

その結論は「圧倒的に時間をかける」でした。プロの絵本作家はその仕事で食べているので、一つの作品にあまり時間をかけられません。そんなことをしていては食べられなくなるからです。

しかし西野さんには芸人としての仕事もあるため、膨大な時間をかけられます。そして西野さんはデビュー作『Dr.インクの星空キネマ』を絵本業界でありえなかった144ページという大部の作品として、4年半かけて完成させたのです。

この西野さんの戦略はまさに「弱者」としてベストの選択だったと言えるでしょう。勝てないところで延々と努力して挫けるのではなく、勝てるところだけに全力を注ぐ。これはビジネスだけでなく、人生全体に通じる哲学と言えるでしょう。

1対1がつながるツール!西野流SNS活用術

『Discover Japan』vol.64の冒頭の鼎談(ていだん)「日本の未来は明るいし、僕らが明るくする。」の中で、西野さんは自分のSNSの考え方・使い方について語っています。

弘法大師空海が高野山に檀場伽藍を開くとき、その資金を集めるために支援者一人一人に手紙を出していたという話を聞いた西野さんは、それこそが今の時代のSNSの正しい向き合い方だと言うのです。

TwitterやFacebook、InstagramなどのSNSをうまく活用すれば瞬間的に世の中に拡散し、大きな影響を与えることができます。しかしすでにこのメディアに人々が慣れきってしまった今では、クラウドファンディングのプロジェクトを「拡散希望」としたところで、ほとんどの人がスルーしてしまいます。

そこで西野さんは初めてのクラウドファンディングの際に、Twitterのフォロワーに一人一人に直接コメントを送ったのです。するとほぼ10割の人がそのコメントをリツイートし、瞬く間に「キングコングの西野がクラウドファンディングをやってる」という話が広まります。結果2週間で集めた資金は530万円。驚異的なスピードです。

西野さんの言う「信用貯金」が重要性を持つ時代になれば、この西野流SNS活用術もより重要性を増すはずです。SNSが「1対1がつながるツール」になる日は、そう遠くないのかもしれません。

「海賊版」を全部受け入れるワケ

西野さんはAmazonで無断で販売されている『えんとつ町のプペル』の水筒やショートパンツ、靴下などを全てブログで紹介し、いじり倒しています。靴下に至っては自分で購入して履いてみて「ダサイぞ!」とコメントしたりしています。

一般的にはこうした「海賊版」というか無許可の製品に関しては、しかるべき措置をとるのが一般的でしょう。しかし西野さんは「『えんとつ町のプペル』はパチモンを応援します」とわざわざ宣言しているのです。(「続・海賊と呼ばれた男」)

ここには西野さんの哲学があります。それは「パロディや海賊版が出てこそ、一流だ」という考え方です。確かにパロディや海賊版を出しても、それに見合うほど儲かる見込みがなければ、わざわざ作りません。

名もないブランドのバッグの偽物は出回りませんが、ルイ・ヴィトンやシャネルのバッグの偽物となれば専用の工場まで建てて製造する人間がいるのと同じです。だからこそ西野さんは海賊版を受け入れ、「むしろもっと作ってくれ」と煽るのです。

本物の証は偽物があることである。この考え方もまた、西野さんが新進気鋭のクリエイターとして成功している秘密なのではないでしょうか。

アンディー・ウォーホールは「自分について何が書かれているかなんてどうでもいい。大事なのは、どのくらいのスペースが割かれているかだ」と言っていたそうですが、西野さんにも同様の思想が感じられます。

「夢がお金になる時代」を見せてくれる男

「夢だけでは食えない」古今東西言われてきたこのセリフを、西野亮廣という男は覆そうとしています。絵本作品の大ヒットだけでなく、「町を作りたい」と延々と言い続け、ついにはクラウドファンディングの資金を元手に「おとぎ町」という町づくりまで始めてしまいました。

「夢がお金になる」それはまさに夢のような話です。しかし西野さんはきっとそれを見せてくれる。その気になれば自分の夢もお金にできるかもしれません。そんな大きな可能性を持っている男・西野亮廣の今後を、ぜひフォローしておきましょう!

『えんとつ町のプペル』を全ページを無料公開中

参考文献
『Discover Japan vol.64』
魔法のコンパス キングコング西野 オフィシャルダイアリー
Career Supli
発言やアクションが毎回面白くて注目せずにはいられません。
[文]鈴木 直人 [編集]サムライト編集部