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自分を好きになろう!
仕事でもプライベートでも楽しく、面白く過ごすためには「自信」が必要不可欠。しかしどこかで「どうせ自分なんて」と無価値感を抱いていきている人も多いのではないでしょうか。
そうした気持ちはあらゆることへのモチベーションを下げ、人生を灰色にしてしまいます。ここでは自信や不安に関する著書を数多く出版している心理学者の根元橘夫(ねもと・きつお)さんの『「自分には価値がない」の心理学』をヒントに、「自信がない」「自分が嫌い」の正体とそれらを克服する実践的な思考法を紹介します。
「自信がない」「自分が嫌い」の原因

自分には価値があるという感覚「自己価値感」には大きく「基底的自己価値感」と「状況的自己価値感」があります。前者が自己価値感の核を形成しており、その周りを後者が覆っているというイメージです。
基底的自己価値感は0歳から6歳未満の乳幼児期から形成され始め、9歳前後の児童期中頃には確立してしまうとされています。
この時期に親からの適切な愛情を注がれなかった人は、その後の人生でもどこかで無価値感を抱き続け、行動や感情を左右されることになります。
これに対して状況的自己価値感は6歳から12歳の児童期以降に形成され、人生を通じて変容していく自己価値観です。すでに大人になった私たちがどうにかできるのは、主にこの状況的自己価値感です。
状況的自己価値感を満たすためには他者との交流や他者からの評価、「自分は成長している」「自分は価値がある」という自覚を、繰り返し積み重ねていかなければなりません。しかし無価値感に悩む人はこの状況的自己価値感を満たそうとするあまり、他者との交流や他者からの評価に依存しぎる場合があります。
これを防ぐにはまず「自分は成長している」「自分は価値がある」という自覚にフォーカスを当てなければなりません。以下ではこの視点から無価値感を払拭するための方法を消化します。
「自分で決めて、やる」を積み重ねよう

無価値感の根底には「自分なんて何もできない」「自分はダメな人間だ」という固定観念があります。この観念に支配されて消極的になる人もいれば、逆に他者を攻撃することで自分の影響力を誇示しようとしてしまう人もいます。
これを払拭しなければ本当の自信を手に入れることはできません。そこで重要になるのが「自分で決めて、やる」の積み重ねです。
・誰にすすめられたわけでもないのにジムに通い始める。
・誰かに誘われるわけでもなく、登山を始める。
・「ためになる」「役に立つ」という視点を捨てて、「面白そう!」という直感に従って本を買って読む。
・自分が「行きたい!」と思う場所へ、一人で出かける。
・仕事帰りの直感で、行ったことのない雰囲気の良いバーに立ち寄る。
ポイントは「誰かに誘われるわけでもなく」「自分が『行きたい!』と思う場所へ」といった部分。無価値観を引き起こす固定観念は他者の評価や視線に、自分の行動や感情を依存させ過ぎているために生まれます。これを克服するためには他者の評価や視線から自由になり、そのうえで成功体験を脳に叩き込まなくてはなりません。
「自分でジムに通い始めたら、3ヶ月経ったあたりから成果が体感できた」「自分の直感に従って入ったバーが、大当たりだった」という体験が徐々に「自分はやればできるのだ」という実感につながっていくのです。
逆に言えばいくらジムに通い続けてマッチョになってもそれが他者からの評価を得るためでは、状況的自己価値感の充足にはつながりにくくなってしまいまうので注意が必要です。とにかく「自分で決めて、やる」ということに徹底的にこだわるようにしましょう。
「創造的無能」を使いこなす

「創造的無能」とは有能さを隠して無能を装い、自分に最も適した環境で働く姿勢を指します。これは1969年に南カリフォルニア大学のローレンス・J・ピーター教授によって提案されたワークスタイルです。
例えば外回り営業が非常に得意な人材がいたとします。彼がその有能さを示し続ければ、会社は彼を評価し、昇進させるでしょう。しかし営業力と管理能力は比例しません。彼はせっかくの営業力を発揮できず、自分の得意分野ではない管理の仕事に忙殺されていきます。
これは組織にとっても不利益ですが、何よりも有能なはずの本人が「管理職には向いていない。自分は会社の期待に応えられないダメな人間だ」と無価値感を抱いてしまうのです。
そこで「創造的無能」の出番です。「あいつは営業力はものすごいけど、管理能力は全くダメ。昇進させるわけにはいかん」と思ってもらえばしめたもの。自分に合った環境で自分の能力を発揮し、自信を持って働き続けることができます。
確かにこの働き方には「歩合制でなければ給料が上がらない(お金が手に入らない)」「社会的地位が手に入らない」などの問題があります。これらを重視する人にとっては、とても受け入れられる働き方ではないでしょう。
しかしこれは人生観の問題。創造的無能を取り入れず、給料や地位を重視して自己価値感が得られるのであればそれが一番です。しかしそれでは自己価値観が得られないというのであれば、創造的無能も選択肢の一つに入ってきます。
「道ゆく人を褒めまくる」で自分を好きになる
心理学における「自分」には「内面的自己」と「外面的自己」があります。内面的自己とは人格的な部分で、努力する・忍耐力がある・誠実・優しい・気配りができるなどを指します。一方で外面的自己は文字どおり自分の外面で、業績・評判・学歴・職業・収入・地位などを指します。
根本さんは無価値感を払拭するためには外面的自己に過度にこだわらず、内面的自己の充実に力を入れるべきだとします。とはいえ内面的自己の充実はそう簡単には手に入りません。しかし瞬間的に内面的自己を充実させ、心を前に向ける方法はあります。それが「道ゆく人を褒めまくる」という簡単なエクササイズです。
やり方は簡単です。通勤途中の駅ですれ違った人や自分を追い抜いて行った人、カフェで語り合っているカップルや学校帰りの高校生など、あらゆる人を頭の中で片っ端から褒めまくるのです。褒めるところは容姿でもファッションでも、歩き方や持ち物、声などどこでもかまいません。
大切なのはどんなに批判したり、毒づいたりしたくなる人に対しても褒めるべきところを探すことです。「そんなの見つからないよ」という人は、その人がこだわっていそうな部分を全力で探して褒めましょう。
頭の中で「そのこだわり、イイね!」と言うだけで、なぜか良いことをした気になっていきます。そしてこれを積み重ねていくと、いろんな人を褒められる自分を少し好きになっている自分に気づくはずです。少しでも前を向ければそれまでの「自分に価値なんてない」という思い込みの霧が晴れ、自分を冷静に評価できるようになっていきます。
「自分を取り戻す」ための3つのエクササイズ
他者との交流や他者からの評価に依存してしまうと、「自分」というものが失われてしまいます。他者によって価値を決められるのではなく、自分で決めるためには「自分を取り戻す」必要があります。
以下の3つは自分の感覚や感情を取り戻すための簡単なエクササイズとなっています。これを読んで「あ、思ったよりできていない」と思う人はぜひ実践してみてください。
●自分の「好き・嫌い」「快・不快」を書き出す
他者に依存していると自分の「好き・嫌い」「快・不快」などの感情自体が希薄化してしまいます。他者の「これっていいよね!」「ああいう人ってどうかと思うよね」という意見がそのまま自分の感情になってしまうのです。
この状態から抜け出すためには、自分の「好き・嫌い」「快・不快」を取り戻す必要があります。そこで定期的に時間を作って、自分の「好き・嫌い」「快・不快」をノートに書き出してみましょう。日付も書いておけば自分の感情の変化を後から見直すこともできます。
●頭の中で「主語」を強調して話す
日本人は文法的に主語を省略しがちですが、これは無意識レベルの自分という主体意識の希薄化につながっています。これを防ぐために「私は」「僕は」という主語を意識的に使うようにしてみましょう。「私はこれがいい」「僕はこれが嫌い」と自分を表明することに慣れてくればしめたものです。
しかし主語を省略するのが普通の日本語の中であまりに主語を使いすぎると「自己主張がやたら強い人」という悪印象を抱かれる可能性もあります。それが気になる場合は口に出す回数を加減して、頭の中で「主語」を強調するだけにとどめるようにしましょう。
●「感想ブログ」を始める
無価値感を抱えている人は自分の意見にも価値がないと思っているので、感想を持つことそのものが難しくなってしまいます。「好き・嫌い」「快・不快」を意識すること、の中で「主語」を強調して話すことに慣れてきたら、次はそれをさらに具体的に言葉にするために、感想ブログを始めてみましょう。
映画や展覧会、テレビ番組や講演会などトピックは何でもかまいません。大切なのは「自分の言葉をひっそりとアウトプットすること」です。もちろんノートなどに日記として書いてもかまいませんが、ブログにしてインターネットに投稿する方がより自信につながりやすくなります。
心もトレーニングで強くなる!
無価値感を抱いている人は周囲の人から「気持ちを切り替えて」「気の持ちようだよ」と言われた経験があるのではないでしょうか。しかし残念ながらその場しのぎで無価値感をごまかしたところで、何の解決にもなりません。
筋トレやジョギングなどの体のトレーニングで積み重ねが大切なのと同じように、心のトレーニングも積み重ねが重要なのです。ここで紹介した方法から「これならできそう」というものを選び、意識しなくてもできるレベルまで積み重ねていきましょう。それがきっと「自信がない」「自分が嫌い」を乗り越える大きな力になるはずです。