マッキンゼーの「生産性」を手にいれるための「人材」の考え方

Business people on a meeting at the office

「生産性」を正しく理解しているか?

「生産性を上げる」と言うと、とかく製造現場における作業効率ばかりを頭に思い浮かべるのが日本企業の悪しき体質です。マッキンゼーなどの外資系企業や、時代の先端を行くベンチャー企業では、生産性は企画・開発などのクリエイティビティな分野にも求められます。

そしてそれを高めるための評価制度や教育制度の開発・改善に余念がありません。ここではマッキンゼーでコンサルタントとして5年、採用マネージャーとして12年のキャリアを積んだ伊賀泰代さんの著書『生産性』から、マッキンゼー流の高い生産性を実現するための「人材」の考え方を紹介します。

生産性についての「正解」と「勘違い」

生産性は「得られた結果÷投入した資源」(=アウトプット÷インプット)で求めることができます。この計算式を見れば人材を増やして結果を増やしても、生産性が高まらないことがわかります。もちろん残業時間を増やして成果を増やしても同じです。むしろこの場合は残業代の上乗せ分や、疲労による仕事の精度の低下により、生産性が下がる可能性も大いにあるでしょう。

しかしだからといって「ノー残業デー」を作ったり、「会議の時間は1時間まで」というルールを作ったりしても、残念ながら効果は見込めません。「残業時間」「会議の時間」などはあくまで「量」に過ぎないからです。

生産性についての議論で大切なのは「仕事の質」「会議の質」といった「質」にフォーカスを当てること。これが生産性についての「正解」です。ところが生産性についての議論が製造現場を中心に展開されてきた日本では、どうしても「量」の議論に終始してしまいます。これが生産性についての「勘違い」です。

これを前提としたうえで、組織の生産性を高めるための「人材」の考え方についてみていきましょう。

組織の生産性を上げるためのキー人材

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人材活用において、組織の生産性のカギを握っているのは「トップパフォーマー」と「戦力外中高年」です。

●トップパフォーマーを育てよう

トップパフォーマーとは組織の中で群を抜いて高いパフォーマンスを示す人材を指します。組織はこのほかに比較的優秀な「ハイパフォーマー」、平均的な能力を持つ「アベレージパフォーマー」、比較的低い能力しか持たない「ローパフォーマー」、そして「トラブル社員」で構成されています。

人材能力別割合に関して一般的に言われるのはハイパフォーマーが2割、アベレージパフォーマーが6割、ローパフォーマーが2割という比率ですが、トップパフォーマーに関してはトップ数%か、小規模な組織なら「何年に一人の逸材」レベルの希少価値があります。

このような人材はたとえ組織の中で最も高い成果を上げていても、本人の潜在能力の一部しか発揮できておらず、実は生産性の低い人材となっている場合が少なくありません。しかも組織の中では優秀すぎるほどなので、本人も組織もそのことに気づけません。

さらにはトップパフォーマーが自分の能力よりも低い仕事をしている限り、本人の成長は見込めず、本来その仕事によって成長できるハイパフォーマー層の仕事が奪われ、彼らの成長機会まで逃してしまいます。この事態を防ぐためにも、トップパフォーマーには次の3つを意識した育成体制を整える必要があります。

1.ストレッチゴール(無理をしてようやく達成できるチャレンジングな目標)を与える。
2.「1年前の自分」「社内の他のトップパフォーマー」「社外の同世代のトップパフォーマー」など自分か自分よりできる対象と比較させる。
3.同世代の起業家やプロフェッショナルを社内講演に呼ぶなどして、「目指すべき地点」を見せてやる。

●戦力外中高年を諦めてはいけない

どの組織でも管理職の枠は決まっているため、社歴がいくら長くてもその枠から漏れた中高年社員が必ず存在します。「長く頑張ってきたのに報われなかった」という想いはモチベーションの低下につながり、やがて組織の中でお荷物になってしまう人も少なくありません。

多くの組織はこの「戦力外中高年」を諦めてしまい、腫れ物のように扱います。しかしこれでは本人だけでなく、組織全体に悪影響を及ぼしかねません。生産性向上のためには戦力外中高年を諦めず、いかに成長してもらうかが重要です。

この時ポイントとなるのが、戦力外中高年のモチベーション管理です。彼らがモチベーションを低下させている主な原因は「もう会社に期待されていない」と感じてしまっているからです。これを払拭するには「まだまだ成長してもらいたい」と組織側が示す必要があります。

中高年向けの研修や業務に対するフィードバック体制を整え、どのようになって欲しいかを組織が示すのです。こうした対応を「屈辱的だ」と捉える人もいるかもしれません。しかし腫れ物扱いして定年まで飼い殺しにすることこそ、本当の屈辱であり組織にとっての損失です。本人とっても、組織にとっても明るい未来を作るためには、時には厳しい対応も必要です。

管理職がチームの生産性向上のためにするべきこと

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伊賀さんは「管理職の仕事とは、『チームの生産性向上のためにリーダーシップを発揮すること』」(前掲書p132)だと言います。トップパフォーマーや戦力外中高年だけでなく、大半を占めるアベレージパフォーマーの生産性を向上させるためには、地道な部下の育成と業務の見直しが必要となります。ここでは伊賀さんが提案するアクションのうち、3つを紹介します。

1.キッチンタイマーで作業時間を可視化してもらう

マッキンゼーの新人コンサルタントの多くが最初にぶち当たる壁は「生産性が低すぎる」ということです。これを解決するためには仕事のやり方を大きく変える必要がありますが、その前に「自分がどんな作業にどれだけの時間をかけているか」を自分で理解してもらわなくてはなりません。

伊賀さんはそのために「キッチンタイマーによる作業時間の可視化」を提案していたそうです。どこに無駄な時間をかけているかがわかれば、その作業をいかに効率化するかを考えたり、上司に質問したりすることもできます。

2.定期的な業務仕分けで生産性を高める

生産性の低い業務をアルバイトや派遣社員などに任せてしまうと、いつのまにか正社員がその仕事の存在を忘れてしまい、どんなに価値のない業務でも温存されてしまいます。これは安直なIT化も同じです。

そもそも価値のない業務、非効率な業務プロセスをIT化したところで、その分のコストが無駄になるだけです。そのため管理職は定期的に不要な業務を洗い出し、非効率的な業務プロセスを見直す必要があります。

3.「長期休職者」をチャンスに変える

育児休暇や介護休暇などを取得する「長期休職者」を組織にとってピンチと捉えてはいけません。むしろ長期休職者の穴を埋めるという目的にもと、既存のメンバーの業務を見直し、生産性を向上させるチャンスと捉えるべきです。

一番やってはいけないのは長期休職者の仕事をそのまま既存メンバーに振り分けてしまうこと。これでは休暇を取る側も気持ちよく休めず、残って働く側も辛い思いをするだけです。あくまで生産性を向上させるチャンスとして有効活用しましょう。

真の「高い生産性」を目指して

「生産性を高める」といっても、リソースを削っているばかりではいずれジリ貧になってしまいます。大切なのは既存の人材が成長し、真の意味での生産性を高めることです。

そのためには生産性についての勘違いを改め、自分はもちろんチームや会社全体で生産性を意識していくほかありません。ここで紹介した内容を参考に、自分ができることやするべきことを考えてみましょう。

参考文献『生産性−マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの−
Career Supli
人生の生産性について考えたい場合はちきりんの『自分の時間を取り戻そう』がおすすめです。合わせてよむと良いでしょう。
[文]鈴木 直人 [編集]サムライト編集部

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